久住女中本舗

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2008年 12月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『LIEBENDER』

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今日の副題 「メイドさんのギスギス具合が最高です」

※吟醸
ジャンル:吸血鬼型恋愛ADV(?)
プレイ時間:一ルート、2時間半くらい。
その他:選択肢アリ、バッドエンドを含め大量のルートが。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2007/10/10
容量(圧縮時):73.9MB



道玄斎です、こんばんは。
昨日、ちらりと予告しておいた通り、今日は久々のレビューを。これもご紹介頂いた作品ですね。メイドと女主人公とのギスギスした会話が最高、という事で、嫌が応にもプレイしてみたくなりました。実際、物凄くギスギスしていて、とっても私好みでしたよ?
というわけで、今回は「S STYLE」さん、そして「TYG ZONE」さん共作の『LIEBENDER』です。
良かった点

・物凄く手間暇が掛かったであろうと思われる作り込み。

・どれもちょっと陰を落とすようなエンドで、そういう作品が好みの人にはもってこい。


気になった点

・ちょっとドロドロっとした雰囲気があるので、長時間プレイは精神を消耗させますw

・兎に角コンプリートまで物凄い根気が要る。

大体、こんな所でしょうか?
難易度も結構高めで、攻略情報無しでプレイすると、コンプリートは相当に難しいと思われます。やり込み派にはたまらないかもしれませんね。

さて、ストーリーの方ですが、特設サイトの方を見て頂くのが一番手っ取り早いかな、というわけで、こちらをご参照下さいませ。


いやぁ、長かった……。
ご紹介頂いてから、随分と時間が経ってしまったのですけれども、今は物凄い達成感があります。メイドとのギスギスした会話、というそれだけで惹かれてプレイしてみたのですが、ちょっとダークな雰囲気、エンド中々好みでした。

そして、物凄く手間暇掛けて作られたなぁ、と率直に感じました。
というのは、オープニングのムービーからして凄い力が入ってるんですよね。作品の内容が吸血鬼の住む館に、生け贄として連れてこられたマリーが「リミット」までそこで生活をしていく、というようなものでありまして、イメージとしては中世ヨーロッパな訳です。その中にストックホルム症候群的な要素が入ったり、恋愛ストーリーが進行していったりします。うんっと手っ取り早く、枝葉末節を無視して纏めれば、吸血鬼との恋愛モノという見方も出来るでしょう。
で、それに合うように、オープニングのテーマ曲も、ちょっとゴシックな感じのするヴィジュアル系バンドの音楽みたいのが流れてきて、しかも何か凄い雰囲気が出ていて、とっても良かったですよ。

音楽と言えば、このオープニングなどの一部の音楽を除いては基本的にクラシックが流れます。吸血鬼の住む館、ですから当然のように『小フーガ』のピアノアレンジが出てきたりして……。こういう音楽のチョイスも良かったと思います。

恒例の脱線に入るのですが、なんて言うか、作品世界と音楽がちゃんと絡み合っていて「絵が見える音」になっていたな、と。んー、ちょっと言葉足らずかな、「ストーリーが見える音」っていう方が適切かも。この二つは分けた方が良さそうです。
で、最近、色々な音楽を聴いてちらほら思うのは、「ストーリーが見える音」と「絵が見える音」という二種類が存在しているのではないかと、いう事。クラシックでも民謡でも、或いはポピュラーミュージックでも、こういう分け方って出来そう。

例えば、何かやったらめったら豪華というか、豪奢な感じがするピアノ曲ってのがあるじゃない? あれは「絵が見える音」。「絵が見える音」っていうとちょっと分かりにくいかもしれないので、もうちょっと馴染みのある表現にすると、『新古今和歌集』的な音w
何か、ストーリーの中のオイシイ所を切り取ったような、そういう感触。
で、一方の「ストーリーが見える音」ってのは、もしかする『新古今』タイプと比べると、或る意味で素朴なものかもしれないけれども、もう少し大きなストーリーが見えてくるような。これは『万葉集』タイプと名付けましょうw ほら、音楽って第一楽章とかあるじゃない? 第三楽章で一つの曲になっているものってやっぱりこうストーリー性があるように思えます。当たり前の話ですけれどもね。

勿論、どっちが良いとか優劣ってのは付けられないし、個人の好みだと思うのですが、私は普通に『新古今和歌集』(文字通りの和歌集)が好きなので、音楽でも割と『新古今』タイプが好きなんですよね。
けれども、最近、ちょっと『万葉集』が気になっていて、そういう影響で『万葉』タイプの音楽もいいなぁ、なんて思ったりします。

勿論、ノベルゲームでは、その曲が使用される文脈によって『新古今』が『万葉』になったり、その逆もあったりと変化します。けれども、大事なのは作品世界と音楽の世界が重なり合うというか、その感覚ってやっぱり大事なんだなぁ、と改めて本作をプレイして感じました。
久々に、意味不明の脱線をして、個人的にちょっと心地よくなった所で、話を戻しましょう。


先に、オープニングや音楽の面であれこれ語ったわけですけれども、他の部分に関しても物凄く手が込んでいます。作品のシステムを物凄く分かりやすく説明すると『柵の淵』の洋風ヴァージョンという感じかしら? 一定期間の間、主人公(マリーかハインリッヒか選択出来る)が自由に館を探索して、謎を解いていく、みたいな。 例のクリッカブルマップがありますしね。

単純に、時間軸の設定だけでも相当に綿密に作られたんだなぁ、という事が良く分かります。主人公がある場所にいくとすると、その時間、他のキャラクターは別の場所にいたり、主人公が選択した場所にいたりと、凄く緻密に作り込まれている印象。
こういうある時間に誰がどこに居るのか? というのは、視点を変えてプレイする時に生きてくる演出ですね。又、エンドによってもキャラの動きが色々変化するので、そういう部分も楽しみながら。

で、問題のメイドですが、いやぁ、凄く良かったです。
ギスギスした慇懃無礼な感じのメイドさんのロザーリエ。とっても好みでしたw
これは私がメイドさんが好きという事にも関連していると思しいのですが、結構本作ってこのロザーリエを中心に見ていくのが一番面白いんじゃないか、って。
多分、マリー視点では、ハインリッヒのエンドを、そしてハインリッヒのエンドではマリーのエンドを見ていくのが一般的な意味での「トゥルーエンド」という事になるのでしょうけれども、私はマリーの視点でロザーリエのルートを、そしてハインリッヒの視点でロザーリエを見ていくのが一番の楽しみでした。

本当にプレイし終わると、もしかしたらロザーリエのルートこそが本作の一番オイシイ所なんじゃないかな、なんて思うようになってしまうから不思議。
結構、ドラマ性があって、無表情慇懃メイドたるロザーリエには、実はちゃんと「女の顔」ってのがあるわけでして、その辺りのストーリーは最高です。
一点、ロザーリエに関して苦言を言うとすれば、それがメイド服ですw ワインレッドの衣装なんですよねぇ。ここはやはり、ヴィクトリアスタイルのメイド服が欲しかったと声を大にして言おうと思いますw
取り敢えず、彼女の名台詞を紹介しておきましょう。

「わたしはナタは、食料のニワトリをさばく際に使うだけです」

というw
何か、凄い好きなセリフです……w 


さて、前述の通り、マリー視点で、「ハインリッヒルート」「ロザーリエルート」「ディートリントルート」「エトヴァルトルート」と四種類のルートがあり、それぞれ複数のエンドが存在しています。
同様にハインリッヒルートでも「マリールート」「ロザーリエルート」「ディートリントルート」の三つのルートがあり、それぞれに対してエンドが。

大体、一つのルートに対して四つくらいエンドが用意されているわけで、全体で見ると、凄まじいまでのエンド数が有るわけです。
で、どのルートのどのエンドに言っても「ハッピーエンド」っていうのはないんですよねぇ。それなりに幸せになれるルートは存在していても、ちょっと暗い陰を落とすようなエンドで、私はこういうちょっと暗めのエンド好きなんです。「LIEBENDERマリー編」「LIEBENDERハインリッヒ編」というのが所謂、「トゥルーエンド」なんですけれども、明るい感じ、若しくはスッキリとしたものではないというw

愛するが故に殺す、みたいな割と重めのテーマも入ってきて、そういう所に妙に共感してしまうわけですけれども、私が男だからなのでしょうか? やっぱりハインリッヒ視点の方が、思考とかそういう面で共感度が高い気がしますね。



さて、気になった点です。
総じて暗め(最も暗いなぁ、と思ったのはエトヴァルトルートの「草原の二人」というエンド)ですし、エンド数も大量にあるので、相当な長時間プレイを余儀なくされます。
暗めエンドが好きな私でも、連続で色んなルートを見て回っていたら流石に少し、気分が悪くなってしまいましたw 
適度に、休憩を入れつつプレイする事を推奨しておきます。

で、最強の問題は「コンプリートまで死ぬ程根気がいる」という所。
多分、普通に何の手がかりも無いままプレイしていると、全てのルートを見る事は不可能なんじゃないかと思ってしまいます。どの時間帯にどこに行き、何を発見して、何をするのか、そういうかなりシビアな判定によってエンドが分岐するわけで、選択肢総当たりのブルートフォースを使っても、なかなか……。
先ずは、前半部分を無事に過ごすのが最初の課題でしょうか? 結構これも難しいんですよねw

けれども、ご安心召されよ。タイトル画面の「EXTRA」から「Conquest」を選択する事で、攻略サイトに飛ぶことが出来るようになっています。
そこでは、攻略の示唆だけでなく、実際の攻略例まで載っているので、最終手段としてそこに載っている手順でプレイしていけば全てのエンドを回収する事が可能に。私も途中から攻略例を参照しちゃいました。

この「コンプリートまで死ぬ程根気がいる」という点に関してですが、単純にエンド数が多いという問題だけでもなくて、「視点を変えて同じ物語を見ないといけない」という点にもあったりします。
勿論、それだからこそ話の裏側を別の視点から捉える事が出来、物語を重層的に読むことが可能になるのですが、ちょっとダルくなっちゃう部分が存在していた事も確か。結局、視点を変えただけで、ストーリーの内容そのものに変化があるわけではないので。

もう少し、どちらかの視点に比重を置くなりして、視点変更の際には、片一方の視点からは到達出来ないような、そんな二度手間感を阻止するような試みがあっても良かったのかも?
そうした部分がちょっと気になったというか、プレイするのが大変な要因の一つだったと思います。


大体、こんな所でしょうか?
総じてレベルは高いですし、ロザーリエは最高だし、何だかんだでかなり楽しめました。
イラストもね、あまり見られないタイプのものですが、結構表情なんかもよく見ると、くるくると変わって手が込んだものになっていたと思います。

コンプリートまでの道のりは険しいですけれども、プレイする価値のある作品だと思いますよ。やり込み指向のマルチエンド作品がお好きな方には特にお勧め出来ます。


それでは、また。
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by s-kuzumi | 2008-12-20 20:00 | サウンドノベル


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