2009年 01月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 『クロスフェードに堕ちた夢 -renewal-』

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今日の副題 「B級だからこその面白さ」

ジャンル:B級ハリウッドアクションノベル(?)
プレイ時間:1ルート2時間~3時間くらい
その他:選択肢アリ。2ルートに分岐。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2004/1/29
容量(圧縮時):23.5MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、久々にちょっと懐かしの作品のご紹介。今から五年前の作品ですね。
この世界で五年前っていうと、相当に昔ですから、色々遊びにくさやヴィジュアル的にも現代的な水準に合っていないなんて事があるわけですが、本作はそうした違和感が殆ど無く、新作としてプレイしても楽しめるのではないかと思います。
そもそも、本作自体がリニューアル版ですから、原型はもっと以前にリリースされていたわけで、時間が経っても劣化しない作品なんじゃないかなぁ、と。
というわけで、今回は「MME」さん(で、いいのかしら?)の『クロスフェードに堕ちた夢 -renewal-』です。
良かった点

・テンポ良く進む展開。2時間~3時間くらいがあっという間に。

・イラストが中々素敵。楓と沙耶は可愛い。個人的には新堂が好きw


気になった点

・もうちょっと、丁寧に描いて欲しい場面があったりする。テンポの良さの裏返し。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
1年前、突然記憶を失ってしまった青年「高瀬慶一」。
彼が傷を負った少女「如月楓」と出会った時から運命の歯車は回り出す。
硝煙と血煙の先に見え隠れする過去は幸福か絶望か。
その答えは夢の中に存在する……。

こんな感じ。


実は、結構私、好きな作品です。
もうかなり前にプレイしていたのですけれども、久々に思い出したのでプレイ。結構内容もしっかりと覚えていました。

本作を語る時に良く使われるのが「B級ハリウッド映画」という言葉。
ちょっと派手なアクション(銃とか出てきますし)や、ハリウッド映画でありがちなあからさまな「悪の組織」、そして失われた主人公の記憶とか、まぁちょっとありがちな設定が作品のキモになっています。勿論、可愛い女の子のヒロインもw

でも、B級ハリウッドなんていうと、ちょっとこう一種、褒めてるんだか貶してるんだか分からない感触があったりするのですけれども、私はそのB級ハリウッドという言葉をプラスの言葉として使いたいですねぇ。「人間とはなんぞや?」「生きる意味とはなんぞや?」というような、深淵な問題までは踏み込まないけれども、グイグイと進んでいくストーリーとスカッとするようなアクションはやっぱり心地よい。
毎年毎年、飽きもせずハリウッドはこの手の作品を作り続けている事からも、こういうジャンルの人気の高さが伺えます。こういう事を言うとちょっとアレかもしれないけれども、私はアメリカの持つ鼻持ちならない「無神経さ」がキライですw 情緒とか、侘び寂びとかそこらへんの感覚が私から見るとすっぽり抜けているように思えるんですよね。ひとへにそれはアメリカという国が非常に歴史の浅い、「伝統」を持っていない国だから、というあたりに帰着しそうなんですが。だからこそ、私は寧ろ英国の方に惹かれるんですよね。

で、貶しておいてナンですけれど、そういう国が突き詰めていって生み出したモノ、それがハリウッドの映画だったりするわけで、そこにはその粋というか結晶というか、見るべきモノはあるようにも思えたりします。だからB級ハリウッドっていうのは、或る意味で凄い褒め言葉なんじゃないかな、と。

これもいっつも言ってますが、B級ってのは、高級ではなくて、もう少し大衆よりというニュアンスですよね。けれども、今現在、高級になっている芸術が、最初っから高級指向だった事って殆どないんですわ。能や狂言とかだって、元々は庶民の娯楽で、言ってしまえば「お笑い」的なものでした。昔は(と言っても、何百年も前ですけど)野外で、ちょっとエロティックで猥雑な要素を散りばめたものが能のスタンダードだったりします。観客だって、大人しく見てるわけじゃなくて弁当を使ったり、ヤジを飛ばしたり一緒になってはしゃいだり……。
茶道だってそうですよね。今、表、裏、武者小路の大体三つの流派に別れていますが、元々はそんな精神性みたいなものを追求していたわけでもなくて、一つの道楽というか趣味というか、娯楽というか、そういうものでした。
そうね、和歌なんかもそうかもね。
『万葉集』を見れば分かるように、所謂庶民が詠んだ生活実感みたいな歌が一杯ありますけれども、『古今集』以降は貴族の社交道具になって、高級化してしまう。

そうしたB級のモノがスタンダードになって、総本部みたいのが出来て段々と権威化されていき、高級芸術へ至るわけで、敢えて誤解を恐れず言うならば、全ての芸術はB級から発祥する、と言ってしまっても良いのではないかと。

っと、新年一発目の脱線をしてしまいました……w
まぁ、ともあれ、本作に於けるB級感は、ノベルゲームというフォーマットに良く合っていると思いますし、とっても素敵なものだと思うのでした。


さて、中身の方に入っていきましょう。
主人公の慶一が、楓や沙耶、そして新堂というヒロイン格のキャラとの交流を通じて、守るべきものを見つけ、悪の組織を壊滅させる、というのがうんと簡単な流れ。
ただ、テンポが良すぎるくらいに良いんですよね。事件が起きて解決して、また事件が起きてとドンドン読者(=プレイヤー)を引っ張っていきます。その中に手に汗握るバトルシーンも。

多分、舞台は現代よりも未来と思しく、(非合法ながら)バイオ技術が発達していて、その意味では「近未来SF」的な要素も。ちょっとした小道具で、その「SF感」を出しているのが個人的に好印象でした。例えば、「セラミックのサバイバルナイフ」とか。
サバイバルナイフってのは、サバイバルする為のナイフですから、割とラフに使ってもぶっ壊れないというのが必須条件なんですね。だから、セラミックのサバイバルナイフってのは無いんじゃないかとw だけれども、戦闘用のナイフでセラミックのものは実在しています。切れ味が中々落ちないらしく、刃付けはダイヤモンド砥石で行います。
そういえば、スーパーマーケットの包丁コーナーなんかでも、セラミック包丁とか置いてありますよね。カボチャとかを切る時に、包丁自体が割れちゃいそうな気がして怖いけどw
冷静に考えれば、「道具としてのナイフ」としてセラミック製のものを使うのはアリかもしれませんが、ちゃんちゃんばらばらやるのにセラミックは不向きかもw けれども、ノベルゲームという虚構の世界でそういうアイテムが出てくると、やっぱり「SFっぽい!」って思ってしまう不思議。

あー、また脱線していいかしら?
ちゃんちゃんばらばらやるのに、セラミックのナイフは向かないと言いましたけれども、フィクションでそういうのありましたね。そう『風の谷のナウシカ』ですw あれは確かセラミック刀という武器があったハズ。それより上位の素材として王蟲の皮から削りだした刀が存在していた気が。
マンガ版のナウシカの冒頭部で、ナウシカが王蟲の抜け殻を見つけて、目の部分の皮を持って帰ろうとして、最初はセラミックで出来た大振りのナイフでガシガシやるんですけれども、刃が欠けてしまって、結局火薬でボカンっと。


さて、軌道修正して。。。
で、選択肢の選び方によって、新堂ルートと楓ルートの二種類のエンドがあります。
ただ、どちらを選んでも、そんなに全体は変わらないかな、というのが正直な所。選択肢の数自体は少ないですし、好みのキャラよりの行動を取っていけば自ずとルートに入ることが可能。
ラストも、どちらかとラブラブになるとか、そういう感じではなくて、割とあっさり、スッキリと終わってしまいます。それもハードボイルド感溢れる感じでもなくて、お約束のちょっとグッとくるようなラストでそこらへんは妙に日本的。

これから日本だけじゃなくて、アメリカで一旗揚げようなんて、人も居るかと思うんですけれども、文脈というか、翻訳というか、そこらへんのニュアンスを如何に表現出来るのか、とか、どの程度受け入れられるのか、とか結構重要な問題な気がします。
某著名RPGゲームでは、アメリカ版が作られた時に、ラスト付近の「さようなら……」的なシーンにアメリカ人スタッフから文句がついて「ここはI Love Youじゃないとおかしい!」と。で、結局そういうセリフになってしまったみたい。


今日は本当に脱線多めになってますねぇ……。
さて、それでは気になった点を。
これは、「SFっぽい」部分もあるから、挙げるのはどうかなぁ? と思ったんですけれども、一応。というのは、何となく怪我とかの描写にリアリティがないような……。
胸を銃で撃たれて「瀕死」と書かれているのにも関わらず、オートリジェネ機能が付いているから、割と直ぐに回復してしまうというw 
大体、人間って2リットルの血が無くなると体が動かなくなって死亡してしまいます。で、心臓に近い胸とかは、ちょっと斬ったりするだけで凄い血が出てくる部位なんですよね。居合とかその手の日本刀とかを使う武術で、怪我をした人はいますか? 結構腕とか切っちゃう事も多いんですけれども、胸とかもスッと軽く切られると、ドバッと血が出てきて一瞬、「ヤバイ……」と冷や汗をかいた経験あるんじゃないでしょうか?
それにいくらオートリジェネが効いていても、失血した分は取り戻せませんから、そんなに直ぐに立ち回りが出来るくらいに回復はしないだろう、とw

まぁ、これは本当に些末な点で、本当は、「テンポの良さ故に重要なシーンの描写が短くなっている」というのが、本作の気になった点の本命です。
具体的に言うと、主人公慶一と、楓、或いは沙耶のなんてことない日常シーンをもう少し時間を掛けて表現して欲しかったのです。
ラスト付近で、慶一は「守るべきものを見つけた」とか、楓や沙耶との生活を挙げるわけですけれども、なんか二日、三日くらいしか一緒に生活してないじゃん、とw
或いは、地書きにて「一月ほど三人の生活は続いた」とか、そういう時間の経過みたいなものを見せてくれても良かったのかも。

ラストの盛り上がりや感動、、行動の動機に直結する部分なので、もうちょっと時間を掛けて、一時の幸せな共同生活みたいなものを描いて欲しかったな、と。そうでないと、楓が沙耶を、沙耶が楓を、そして慶一が彼女達を大切に思う、という部分の説得力が薄くなってしまうわけで。


これ以上長く書いてしまうと、アレなので、大体言いたい事も言ったし、こんな所かな。
あれこれ書いてしまいましたが、私は本作、結構好きです。テンポが良くって(そこが仇になってる部分はあるけど)、本当に短めの映画を見ているような、そんな感触の作品です。
結構前の作品ですけれども、まだの方は是非、プレイしてみて下さい。

それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-01-02 21:40 | サウンドノベル


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