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2009年 03月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 『Wizardly Butterfly』

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今日の副題 「『源氏物語』入ってます」

ジャンル:微『源氏物語』風、恋愛ノベル(?)
プレイ時間:1時間ちょい。
その他:選択肢なし、一本道。本レビューはVer.2.0にてプレイ。
システム:NScripter

制作年:2004/?/? (?)
容量(圧縮時):21.6MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、実に半年ぶりに髪の毛を切りました。後ろ髪が肩に掛かるくらいまで伸びていて、とんでもなくみっともない事になっていたのですが、これでスッキリ。
で、今晩から明日に掛けて、どうも東京は雪が降るようです。って、実際今降ってるんですよね。風邪に警戒しつつ、今日も今日とてゲームをします。
というわけで、今回は「HERMAX」さんの『Wizardly Butterfly』です。初っぱなから『源氏物語』が出てきて、ちょっと吃驚しましたw
良かった点

・『源氏物語』の原文が各章の頭に出てきます。もう、これだけで期待しちゃうよね。

・ちょっと不思議で、物悲しいながらも、なかなか良い余韻を残すラスト。


気になった点

・主人公の心の動きを、もうちょっと丁寧に追っても良かったかも。

というわけで、ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
主人公の雨宮礼は、なんの変化もない淡々とした高校生活を送ってきたことに、満たされない思いを感じて焦っているごく普通の少年です。

そんな彼のお気に入りの場所は、家と学校の間の、丘の上にある公園でした。ほとんど人通りがなく、夕暮れ時の街並みが広がって見え、疲れなど忘れてしまいそうなくらい安らげる場所。

ある日、彼がいつものように学校の帰りにその公園を通ると、今までに見たことのない山吹色に輝く蝶を目にします。夕陽を浴びて輝くその蝶の鱗粉は、不思議と現実から引き離されるような、そんな幻想的な光景でした。

次の日、学校の帰りに公園に立ち寄ると、昨日見たあの輝く蝶を探している、藤代葵という少女と出会います。その出会いが礼にとって、残り少ない高校生活最後の希望を掴むチャンスだと感じさせていくのですが……。

選択肢なしの気軽な読み物として、暇潰しにして頂ければ幸いです。

こんな風になっています。ちょっと長目になっちゃいましたね。



というわけで、ずっと「ダウンロード済みゲーム」フォルダの中に入っていた作品を、ようやくプレイしました。
何故長い事、放置していたのか? というと、何故だか私にも分かりませんw 何となくタイミングとかの問題で先延ばしにしていたら、結局2009年にプレイする事に。
ただ、なんかこう、少しやり遂げた感みたいのはあったりしますね。

ストーリーをお読み頂ければ、大体の作品の流れが分かるかと思います。
所謂、無気力少年タイプの主人公が、一人の女の子と出会って……という例のボーイミーツガール的な。
ただ、先にも書きましたが、各章の最初に『源氏物語』の原文が出てくるんですよね。「おや?」と思って、チェックしてみると、フォルダの中に「原文対訳.html」なるファイルが。
これは、作品の中に出てくる『源氏』の本文の対訳になっています。ちょっと慣れた人だと、大体どの巻の辺りか推測出来るのではないでしょうか? この『源氏』の設定は、本作の設定とも密接に絡み合っているので、是非、対訳が折角ついているのですから、それと併せて読んで欲しいですね。

で、初っぱなからの脱線ですが、「『源氏』の中でどの女が好き?」というのは国文科の学生の良くやる暇つぶしですw 何度も、この手の質問はされて、答えて、一つ自分の中で出た結論は、「葵の上」なんですよ。
光源氏の最初の奥さんですね。彼よりもちょっと年上の、眉目秀麗でツンとすました深窓の令嬢を地でいくタイプ。
光源氏の女漁りという悪癖などがあって、彼と葵の上はすれ違いを続けるのですが、子供(夕霧)が出来たのをきっかけに徐々に、夫婦らしくなっていくものの、彼女は死亡してしまうという、或る意味で不遇なキャラ。私としてみれば、彼女の不器用な感じとか、「これから」って所で死亡してしまう、滅びの美学じゃないですけれども、そういうものを感じていて、女性キャラの中ではダントツに好きですね。
私には理解出来ないのですが、女三宮が好き、なんて男性も結構いるんですよねぇ……。

こうした予備知識を持った上で、本作をプレイしたわけですが、ヒロインたる藤代葵が出てきた瞬間に、厭な予感がしましたw 『源氏物語』の中の、葵の上が六条御息所の生き霊に苦しめられるシーンが原文で示されたりしているわけで……。
名前は、アナグラム的になっていますよね、多分。葵ってのはモロに「葵の上」を指すとして、葵の上の実家は藤原さんです。そうやって考えて「藤代葵」を分解して、再構成しすると「藤(原)葵(の)代(わり)」となるのではないかと愚案致します。
ちなみに、葵の上ってのは、本名じゃないですからね。あだ名です。以前にも書きましたが、『源氏』を始めとする王朝モノの古典では、主人公(ヒロイン)格の実名は出てきません。光源氏ってのも、あだ名ですし、夕霧だってそうです。ただ、光源氏の従者(というか乳母子)の惟光なんて、ちゃんと「惟光」なんて名前が出てきます。これは、飽くまで光源氏の従者という、下っ端だからこそなんですな(惟光の場合は、フルネームだと藤原惟光になるハズ)。

私の推測が当たらずとも遠からずなのは、その後のストーリーを追っていけば明らかです。
ヒロイン葵は、突然ぶっ倒れて、うわごとで人の恨み辛みを吐き出してしまいます。それを目の当たりにする主人公。何か日常に「物足りなさ」を求めていた主人公ですが、蝶を探す葵と出会ってからは、葵を使って、充足感を得ようとしていました。ところが葵の抱えている問題を知るや否や、「やっかいなのと関わっちまった」的に、彼女と距離を取るように。

で、本作で何となく引っかかったのは、この辺りの主人公の描写です。
割と早い段階で、「葵に惹かれている」という事が示されているのですが、何となく唐突な気がしないでもない。折角、葵の上のように人の恨みを引き受けてしまう体質、というちょっと変わった設定を持つヒロインがいるわけですから、彼女の病(?)ともっと向き合っていく中で、恋愛的な側面も描いたら良かったのではないかと思うのでした。
勿論、言葉は悪いですが、さっさと一度見切りを付けてしまったからこそ、その後のストーリーが活きてくる部分はあるのです。それでも、もうちょっと主人公の心の動きみたいなものも丁寧に追っていったら、より設定が活きてくる部分があったのではないかと。

そうは云っても、ラストは中々不思議な、ある種幻想的な感じがしますし、プレイ後に残る余韻もあります。
こういう独特の、ちょっと物悲しい余韻が残る作品、好きなんですよね。
一応、今回プレイしたヴァージョンはリメイクヴァージョンの様なのですが、更に磨いていけば、もっともっと良い作品になるのではないか、そんな風に思いましたよ。
そうそう、本作、一枚絵無し、立ち絵のみなんですが、ヒロインの葵ちゃんは、ちょっと吊り目っぽくて気が強そうな、「葵の上」っぽさが出ていて、中々好印象でした。


『源氏』を知っていると、結構推測出来てしまったり、オチの一部が分かってしまったり(想像していたのとは違いましたが、結果的には近い感じに)するのですが、その手の文学が好きな人にもお勧めです。
プレイ時間もそこまで長くないですし、最近ではあまりリリースされなくなってきているファンタジック恋愛風味の作品なので、「最近、そういうのねぇよなぁ」なんてお嘆きの方は是非プレイしてみて下さい。


それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-03-03 22:01 | サウンドノベル | Comments(0)


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