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2009年 03月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『星の王子さま』

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今日の副題 「幼かりし日の僕と君へ」

※大吟醸
ジャンル:翻訳ノベル
プレイ時間:1時間程度。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2008/8/16(本レビューはフリー版にてプレイ)
容量(圧縮時):59.0MB



道玄斎です、こんにちは。
今日は、たまにご紹介する「著作権切れ」のノベルゲーム化の作品です。とってもとっても良い作品だと思ったので、オリジナル作品ではないものの、大吟醸を。
というわけで、サン=テグジュペリ原作、「P.o.l.c」さんの『星の王子さま』です。
良かった点

・あれこれ語ってもしょうがないので、是非プレイして欲しい。


気になった点

・エピローグの前の第27章で痛恨の誤字が(後述)

今回は、ストーリー紹介もやめておきましょう。些か変則的ですけれどもね。


実は、私、『星の王子さま』を読むのは初めてです。
いつもでしたら、こういう作品を扱う際には、例によって私の知ったかが炸裂するわけですが、今回は、本当に予備知識も殆どないまま、生まれて初めて『星の王子さま』を読みました。

素直に、「ああ、こんな素晴らしい作品だったんだな……」と思いました。
『星の王子さま』は、世界的に著名な作品ですし、きっとこれをお読みになっている方の多くが、既にして翻訳などで読まれている事と思います。
この作品をもじった映画なんかもありますよね。エディ・マーフィか何かが主演の『星の王子さまニューヨークへ行く』とかね。半分、あれはギャグ映画なので(マクドナルドのニセモノ、マクダゥエルという店が出てくる。マクドナルドのハンバーガーにはゴマが載っているけれども、マクダゥエルにはゴマが載っていないという差異があるそうな)、比較の対象にはならないですし、日本では、カレーの銘柄になったりしています。
そういえば、手塚治虫の『火の鳥』のなに編かは忘れてしまったのですが、ラストで、宇宙飛行士の牧村さん(だったかな?)が『星の王子様』を途中まで読んで、それを手向けにして去っていってしまう、というシーンがあって、あれは凄く印象に残っていますね。

正直、なんか、作品に対して、どういう言葉で語ったらいいのか、私には良く分かりません。
ただ、いつもみたいに「ゲーム大好き!」ってなノリは違うんだろうな、と思いますね。

今回、翻訳を含め制作を指揮なさったのは、感動的な作品を多く生み出している「P.o.l.c」さんでした。
翻訳までやってしまったという事で、非常に驚いています。が、その訳に素人っぽさというか、「翻訳です」的な所もなく、こなれた良い日本語になっていたのではないでしょうか?
正直な所、『星の王子さま』そのものを、原文、訳文を含めて読んだ事がないので、それが「良い訳」であるとか、「正確な訳」であるとかの判断は出来ません。

しかし、同梱されている説明書によれば、フランス語を勉強した事もないそうで、本当に良く、ここまで訳せたなぁ、と感心してしまいます。
今回の私のプレイに関してのスタンスは「じっくり」でした。割とクリックをがちゃがちゃして、ちゃっちゃか読み進める傾向のある私が、じっくりと、読んでは戻り、戻っては読みを繰り返したわけです。それで大体1時間くらいです。恐らく、いつものペースで読んでいったとしたならば、40分くらいで読了していたのではないかと思います。

何が言いたいのか、というと、『星の王子さま』は、実は結構ボリュームのあるお話なんですよね。
所謂、童話や絵本のようなものは、文字数も少ないのが常ですが、『星の王子さま』に関しては、文章のボリュームも相当にあるのです。
それを、全て翻訳した、というのはきっと、想像以上に大変だったのではないのでしょうか? 英語すら且つ困難を究む、いはんや仏蘭西語をや、という感じです。
それにしても、翻訳に対する姿勢も、同梱された文章に書いてあり、納得のいくものでしたし、学術論文を含め、多くの資料に当たられていて、実は、相当にレベルの高い訳になっているのでは? と感じます。

きっと、大学の第二外国語でフランス語を履修していたにも関わらず、私は、『星の王子さま』を一行も読めないでしょう。何しろ、etreの活用すら覚束ないという体たらくなのですから。一応、フランス語辞書の定番となっている『プチロワイヤル』の編者の先生に教わったのですが……。

本作は、ちゃんとイラストもついています。
『星の王子さま』と聞くと、大体イメージするイラストがあると思うのですが、原作の方でもイラストが付いているのでしょうか? 本作のそれは、一般にイメージするものを壊さず、それでいて、優しいタッチでとても魅力的なものになっていたように感じます。このまま、訳文とイラストで、新しい訳として、一冊の本になっていても全然違和感のないレベルです。
勿論、本作がサウンドノベル/ノベルゲームの体裁を取っている以上、音楽も付いています。これも又、文章やイラストを邪魔する事なく、見事に作品に調和したものになっていました。


敢えて、本作で苦言を述べるとしたら、第27章目に痛恨の誤字があった点でしょう。
「満天の星」とあるべき場所が「満点の星」になっていました。とはいへ、それは本文ではなく、画面上部の良くタイトルが表示されるあの領域の所で、です。

周辺的な事情だけ語って、お終いにしちゃうのも少し心残りではあるので、若干、補足を。
我々が、今、この作品を見ると(読むと)、そこにあるメタファーというか、寓意というか、きっとそういうものの一端を見つける事が出来るはずです。
そして、『星の王子さま』に関連する、書籍や論文などを読めば、そうしたものの正体を述べているものも、きっと数多くあると思います。だけれども、敢えて云いますけれども、きっとそんなものを探らずに、難しい事を考えず、素直になって作品に向き合った方が、良いのではないか、そんな事を考えました。
大人特有の賢しい心で読むよりも、純粋だった子供の頃に返って読んだ方が、より多くのものを得る事が出来る、そんなお話が『星の王子さま』なのではないでしょうか?

それでは、また。


/* 以下、蛇足

というわけで、恒例の脱線コーナーw
一応、コメントアウトしてあるから、本文とは切り離して読んで下さいw

最初に、子供の頃、象を飲み込んだヘビの絵を描いたけれども、大人は分かってくれなかった、というような下りが出てきますよね。私も似たような経験があります。
あれは、忘れもしない小学一年生の時、最初の図画工作の時間でした。各自、手鏡を持って登校し、自分の顔を見ながら、それを書いてみる、という課題。

そりゃ、私も子供らしい無邪気さと、真剣さでもってその課題に向かいました。
で、よーく自分の顔を眺めると、そこは単純な肌色一色ではない事に気がついたのです。皮膚の下には血管が通っていて、それによって、赤みを増している部分、或いは青みを帯びている部分があるわけですよね。そんな写実性に拘って、課題に取り組んだのですが、何分、6歳とかの子供ですから、技術的な面はメタメタで、顔の所々に青いクレヨンで上塗りしてしまったような、そんな絵になったわけです。
けれども、自分では「これは良い絵になった」と悦に浸っていたのも事実。

しかし、当時の担任がねぇ、「人間の顔に青は存在しない」と私の絵を糾弾したんですよねぇ。
今はどうか分かりませんが、昔は何でもかんでも「金賞」とか「銀賞」とか、賞を付けてランキング化するのが学校教育の常でしたから、私の書いた絵は勿論最下位です。きっと金賞を貰った子の絵は、顔を肌色一色で塗っていたんでしょう。
挙げ句、懇談会だか家庭訪問だかの際に、その担任は、母に「おたくの息子さんは、人間の肌に青を塗ったりしています。どっかおかしいんじゃないですか?」とか宣ったそうなw 或る意味慧眼w


そういえば、『星の王子さま』絡みでもう一個エピソードがありました。
それは、十年くらい前かな? 法事があってお寺に行ったんですね。そのお寺の入り口には、ガラス戸付きの立て看板みたいのが置いてあって「今月の住職の一言」みたいなメッセージが書かれていました。
曰く、「大切なものは目に見えない。愛とか空気とか」とw
この「大切なものは目にみえない」という著名な言葉が『星の王子さま』由来である事は、何故か知っていたのですが、本作をプレイして初めて「キツネ」が最初に語るセリフだという事が判明しました。

それにしても、「愛とか空気とか」って……w
きっと、それはその通りなんでしょうけれども、あっ、いや「愛」は分かります。けれどもそこに「空気」を出すのは何となくバランスが悪いかなぁ? と今でも思いますねw

兎に角、色々(結局)書いちゃいましたが、とっても良い作品でした。なんか「良い」って書くと浅薄な印象が出てしまうのだけれども。先にも書きましたように、本当に一冊の本としてリリースされてもおかしくない出来映えだと思います。出版関係の方がいらしたら、音楽CDと共に出版する事を会議に掛けてみてはどうでしょう?w

是非、プレイして貰いたい作品です。そして、取り敢えず私は訳本でも買ってみて、いづれはフランス語版で『星の王子さま』を読んでみたいな、と思ったのでした。

以上、蛇足 */
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by s-kuzumi | 2009-03-08 16:17 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by ひろひら at 2009-03-14 22:46 x
こんばんわ。

「星の王子様」。
本屋さん等ではなかなか敷居が高くて、
名前は知っていても内容は知らない物語でした。
私も本作で初めて星の王子様に触れてみたのですが、
イラストと音楽でどっぷりとはまりました。

ノベルゲームだからだこそ出来る優しく切ない雰囲気。
アニメーションにしても駄目ですね。
幕間の状況を想像する事を奪ってしまいますので。
(特に庭園のバラのシーンでは王子様の表情を想像するだけで涙があふれた)

このゲームは「P.o.l.c」さん力量が遺憾無く発揮されていると感じます。
きっとプレイした人は百人百種の感想を持つと想いますが、
難しい解釈無しにしてこれほど感動できる物は少ないはず。

大げさかもしれませんが、人生に一石を投じた作品だと思います。
これは是非とも大人が読む物語です。
特にプロフェッショナルな人たちにプレイしてほしい。
今一度、子供の感性を思い出すような気持ちになってもらいたいと思いました。
Commented by s-kuzumi at 2009-03-16 16:44
>>ひろひらさん

こんばんは。

私も今回が初めての『星の王子さま』体験だったのですが、物凄く感動してしまいました。
仰る通りで、アニメにしちゃうと台無しになっちゃいますよね。絵本、或いはノベルゲームといった静的なフォーマットがやはり一番合っているような気がします。

本当に「P.o.l.c」さんの真骨頂のような作品でしたね。今までの感動的な作品のリリースは、本作の布石なんじゃないか、と思うくらいの出来映えで。

今、だからこそ、こうした子供向けなのかもしれないけれども、力強い作品に惹かれるのかもしれませんね。滅茶苦茶良い作品でした。


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