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久住女中本舗

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2009年 03月 30日

フリーサウンドノベルレビュー 『終末によせて』

フリーサウンドノベルレビュー 『終末によせて』_b0110969_21355450.jpg

今日の副題 「優しい世界の終わり方」

※大吟醸
ジャンル:終末ノベル
プレイ時間:30分~1時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:?(結構前だと思う)
容量(圧縮時):8.92MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、何とか新しい椅子が届いて机で作業する事が出来ました。
椅子に座れないと、パソコン使うどころじゃないですから……。
今日は、少し懐かしい作品のご紹介。私も気に入っている作品です。プレイしたのは大分前だったように記憶しているのですが、正確な制作年が分かりませんでした。
というわけで今回は「まつ」さんの『終末によせて』です。
良かった点

・終末の世界を優しく描き出す作品。

・ラストの余韻も素晴らしいものが。


気になった点

・もうちょい稔の自宅の画像など、もう一工夫あっても良かったかも。

ストーリーは、作者様サイト(?)から引用しておきましょう。
選択肢無しのサウンドノベル。

地味に淡々と世界の終末を描いた、やさしい物語。

という感じ。というか、これだけじゃちょっと身も蓋もない感じなので、例によって補足しつつ、筆を進めていきましょう。


実に久々にプレイしました。
多分……三年くらい前? いや、もっと前かもしれません。とにかく結構前にリリースされた作品です。
今回、改めてエンディングのスタッフロールなんかを見てみると2chのスレッド発祥なんでしょうか? でも、お一人で全て執筆なさっているのかな? ともあれ、クオリティの高い作品だったと思います。

タイトルから分かるように、本作は「終末」の世界を描いた短編ノベル。
終末って云っても、「伝説の悪の大王が!」とかそいうのではなくて、2ヶ月前に終末宣言が出され、「あと七日で世界が終わってしまう」そんな世界の物語。

勿論、SF作品宜しく、一人の天才科学者が命を掛けたプロジェクトで以て、人類を救う、といった趣でもなく、ただ終わりの日を待つ、そういう雰囲気の作品なのです。
それゆえ、全体的なトーンは暗めです。だけれども、ジワリジワリと染みこむようにして、入ってくるテキストはそこに暗さだけでなく、「優しさ」といったものも同時に描き出し、感じさせてくれます。

先ほど、「ただ、終わりの日を待つ」なんて書き方をしてしまいましたが、実は違うんですよね。
何人かの視点で以て、物語が進んでいきます。稔やさち、さちの兄や由紀といった人物がそれぞれに出会い、交差していく中で、穏やかに終末を迎えていく、というのが本当の説明。
あっけらかんとした明るいハッピーエンドよりも、ちょいと暗い感じのものが私は好きなので、以前にプレイしていたものの、今回もズズっと作品の中に入り込んでしまいました。

少しプレイしては、場面を咀嚼してみたり、何となく珈琲を飲んでみたり、とじっくりじっくり読みました。
本作の最大の特徴にして、その良さは、終末だけれども、いや終末だからこその人の優しさというか、人間への愛というか、そういうものを描いている所にあるのではないかと思います。
演出面も実は結構凝っていたのではないかと。例えば、作品のぴったりのピアノ曲が流れたりして、良い雰囲気を出したりするのですが、実は「無音」部分が多いんですよね。
無音部分があるからこそ、ピアノ曲であったり、或いはラスト付近の盛り上がりで流れる曲が胸を打つ。

正直、私自身は、本作に対して不満な所って実はあんまり無いんですよ。
だけれども、いつも「気になった点」を挙げておいて本作だけ挙げないわけにはいかないので、敢えて画像の所を挙げてみました。本作の主人公(の一人)である稔のアパートの画像ですね。
今となっては、と但し書きを付けるべきなのかもしれませんが、お馴染みの画像だったりします。例の背広が窓の所に引っかけてあるあの画像です。もうちょっと違う画像でも良かったかな、と思うのはリリースから大分経ってしまっているから、なんでしょうけれども、まぁ一応、という事で。

で、実は、本作には謎があります。
それは「何で終末になったのか?」というその原因や理由が一切明かされません。
良く分からないけれども、「終わりの日」は算出されていて、ゲーム開始時から見て、「七日後」になっています。SFなんかでありがちなのは、テクノロジーが未曾有の発展を遂げて、人間そのものが無気力になってしまったとか、どっかの国が軍事用に作った細菌兵器などによって、ジワリジワリと人類が死亡していっているとかです。

ですが、本作の場合、設定のキモである終末に関しての情報は、「2ヶ月前に終末宣言が出た」事、そして「あと七日で世界が終わる」という二点のみしか明らかになりません。もしかしたら、その点気になる人も居るかもしれません。
しかし、私は「だからこそ本作は良いんじゃないか?」と思ってしまうんですよ。それは先に述べた通り、本作の主眼は「終末」そのものにあるのではなくて、終末を迎えるに当たっての「人間の優しさ」とか或いは「儚さ」とかその辺りにあると思っているからです。ですので、そうした終末に対する説明が無い、というのは「無駄をそぎ落とした結果」なんじゃないかな、と。
ですから、本作は構造というか、そういう面で無駄が無く、或る意味で淡々としていながらも、実は中身が沢山詰まっている、そういう作品だと思っています。うんと軽薄な云い方になってしまうんですが、本作は紛れもない「感動もの」の作品です。

ゲームの中とはいえ、終末というもの、そして、自分の人生の終わりなんかを考えると、自分がすべきこと、或いは自分の生き方なんてものが、ほんの少しかもしれませんが、見えてくるかもしれません。

それでは、また。

by s-kuzumi | 2009-03-30 21:36 | サウンドノベル | Comments(8)
Commented at 2009-04-01 20:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2009-04-01 20:32 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by s-kuzumi at 2009-04-02 03:54
>>masuさん

こんばんは。
というか、そろそろお早う御座いますの時間ですが……。

で、エイプリルフールの情報、有り難う御座います。
不精者なので、あんまりそういうのチェックしないので(定期巡回はすれども、エイプリルフールだから、という理由で特に見回りを強化したりはしないんです)、凄く助かります。

ちょっと気になる作品も何作かあるので、是非チェックしてみようと思います。ベテランの方も作品をこの時期に合わせてリリースして下さっているので、暫くはプレイする作品に困らなくて嬉しいですねw
Commented at 2009-04-04 01:35 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by s-kuzumi at 2009-04-04 02:26
>>masuさん

こんばんは。
いえいえ、レビューがお役に立てているのならば、これほど嬉しい事はありませんので。。

で、90本もエイプリルフールに集めたんですか? というかやっぱり皆さん、企画でゲーム作っていらしたんだなぁ……。私自身は、せいぜい5~6本という所でしょうか? まだ「未プレイ」としてストックが溜まっているので、あんまり作品を集めすぎないようにしています。「未プレイフォルダ」の中に60本とか作品が入っていたら、流石に意欲が……w

90本もゲームがあれば、一日1作品としても三ヶ月は持つ計算に……。勿論、本当に短い作品とかもあると思いますけれども、かなり遊びでがありそうですよね。勢いでガンガンプレイしたり、ちょこっとインターバルを置いてプレイしたり、作品に合わせてプレイするのもオツなものですよ。


(つづきます)
Commented by s-kuzumi at 2009-04-04 02:30
(つづき)

で、ウェブ内で見せるゲームですが、実際の所、「セーブ/ロード」の問題が一番気になる所ですね。セーブ/ロードが普通のゲームと同様に出来るならば、一考の余地はありそうなのですが、現状では、やはりダウンロードして遊ぶタイプの方が、様々な面で「遊びやすい」かな、と。
ウェブ上で、というメリットを生かして、敢えて選択肢分岐が少なめ(かゼロ)、且つ尺も短いとか、条件を整えればアリかもしれません。

うんと単純なノベルゲームなら、きっとHTMLでも出来るハズですが、やっぱり、遊びやすさとか、或いは「やりたい事が出来る環境」を求めると、現状はNScripterなり吉里吉里/KAGとかかなぁ、と思っています。それ以外にもLive Makerとかもね、結構手軽に作品が作れるみたいなので、チェックしてみても良いかもしれませんよ? 使い勝手もNScripterにひけをとらないくらいにはなってきていますしね。
Commented by 黒うさぎ at 2011-09-22 02:38 x
数年ぶりに思い出して

探していたけど見つからなかった作品が久しぶりにできました

本当に心から感謝しています

ありがとうございました
Commented by s-kuzumi at 2011-09-22 20:28
>>黒うさぎさん

お役に立てたみたいで良かったです!
『終末によせて』はやっぱり良い作品ですよね。
私も時々、思い出したようにプレイしていたりします。

どうぞ、またお気軽にコメント等して下されば幸いです。それでは、失礼致します。
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