久住女中本舗

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2009年 08月 01日

フリーサウンドノベルレビュー 『孤毒の庭』

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今日の副題 「古本と伝奇好きのあなたに」

ジャンル:現代伝奇(?)
プレイ時間:30分程度。
その他:選択肢無し、一本道。残酷な描写アリ。ニガテな人注意。
システム:NScripter

制作年:2009/5/11
容量(圧縮時):42.3MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は朝からゲームをプレイして、買い物に出かけて、何となくまたゲームをプレイしたくなったので、お勧め頂いていた作品をやってみました。舞台とか設定とか、中々私好みのものがあったので、さっくりと。久々の一日二本レビューですね。
というわけで、今回は「ZIP-ON」さんの『孤毒の庭』です。
良かった点

・物語の導入の部分が本マニアの心をくすぐる。


気になった点

・もうちょっと結論的なものがあっても良かったかも。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
寂れた古本屋で働く鏑木祐は、一冊の日記を手にする。
曰く在りげなその日記帳には所有者だった女性の恐怖と悲しみが・・・。
やがて訪れる男『矢木』の真意とは?

こんなストーリーになっています。


古本屋なんて私が大好きなものが、舞台の一つになっています。
主人公祐(女性ですよ)は、古本屋さんで働いていて、しかもその古本屋は割と「曰くありげ」な本を扱っている気配。そんなお店の店主が仕入れてきたものの中に、酷い死に方をした資産家の一家、その奥さんの書いていた日記があった、というわけです。

古本屋さんが、本をどこから仕入れるのか? 
特にどういう方向であれ「専門性」の高い本を扱う古本屋の場合、実は故人の蔵書を引き取る事が多かったりします。
大学の先生とかが亡くなった時に研究室やら、自宅やらにため込んだ専門書、そうしたものは古本屋が買い取る事が多いように思います。所謂、新古書店のようなものだと、「読む→売る、売る→読む」みたいなサイクルはあるわけですけれども、昔ながらの神保町とかにありそうな、専門的な本屋さんが、ドバッとものを仕入れる時、誰かが死んでいる事が多いんじゃないでしょうか。

そんなわけで、そもそも古本ってのは、その存在自体が或る意味でどれも「曰くありげ」だったりします。
私も大分古本屋で買った本、持ってますけれども、蔵書印の変遷とか見ていると、たった一冊の本だけれども、そこに色々なドラマが透けて見えたりする事も屡々。
ただ、本作に出てくるような「出版物」でない本、つまり個人の書いた日記、なんてものは古本屋さんでもお目に掛かった事はありませんねぇ。きっと、一山いくらで仕入れて、その後、店頭に並べる前の段階で、処分してしまうんじゃないかな。

で、本作ではそうやって流れてきた「古本=日記」が本当に「曰く付き」のものだった、という所から物語が始まります。そもそも、日記という肉筆のものは、やっぱり薄気味悪い気はしますね。
日記じゃないですけれども、私も肉筆の古本(?)、持っています。どのくらい古いかっていうと、今から800年くらい前に書かれたモノですw そこまで来ると、それは古本というジャンルじゃないみたいですけれども。

又、日記というジャンルそのものも、やはり独特な怖さがあります。
一般的に、現代、我々が書く=記録する日記なるものは、基本的に「人に見せる事を想定していない」わけです。けれども、そこにはどこか「他者の目」を意識する部分があったりなかったりと、割と複雑な事になっているような気もします。
一方で、古代日本の所謂、日記作品みたいなもの、ありますよね? 「○○日記」みたいなヤツです。あれって、個人的な記録、というよりは、どちらかというと「人に見せる事を前提」としているような、そういう感触、ありません? DiaryではなくてMemoireみたいな。


っと、今日は脱線しまくりですな……。
まぁ、兎に角、「古本屋」「古本」「日記」なんてキーワードは、かなり私の心の琴線に触れるというか、そういう設定が出てくるだけで、妙に興奮してしまうという訳ですw

で、どうやら、その「曰く付き」の本は、その本そのもの、というわけではなくて、寧ろそこに挟まっている「栞」にヤバいものが詰まっているという。死亡したハズの資産家こと、矢木は、自分の奥さんを「材料」にして、反魂の法みたいな事をやっちまって、その日記を読んだ祐の元に化けて出てきます。
んー、本作のタイトルである「孤毒」というのは「孤独」と「蟲毒」のダブルミーニングなのかな?

一方で、祐はそういう「霊関係」のもめ事処理に、長けていて、妖怪化してしまった矢木を滅ぼす、と、そういう流れです。
大体、30分で読了出来てしまうわけですが、何となく後半からラストに掛けて、落ち着きが悪いというか、もうちょっとはっきりとしたオチの部分、みたいのがあっても良かったかな、と。
実は、本作って、「妖怪バスター祐」みたいなシリーズがあったとして、その中の一話、というそういう趣なんですよね。

個人的にも、折角「曰くありげな本を(本も?)扱う古本屋」という美味しい舞台設定があるわけですから、もうちょっと他のお話とセットにして読んでみたい、という気がします。
そういう古本から始まる妖怪退治、みたいなモノを軸にしつつ、何か一本の大きなストーリーが見えてくる、なんてものだったら、個人的にはベストかな、っと。
本作には、結局、祐って何者なのよ? とか、この古本屋ってどういう存在なのさ? と云った疑問点というか、語られていないノリシロ部分がまだまだ残っていますから、そういう部分も小出しにしたりしても良かったかな、っと。

本作が処女作と思しい訳で、是非、本作のシリーズみたいな形で次回作を展開して欲しいなぁ、なんて思いつつ筆を擱く事に致します。

それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-08-01 14:49 | サウンドノベル | Comments(4)
Commented by グルカの残党 通称佐々木 at 2009-09-04 22:08 x
孤毒の庭を制作したZIP-ONのグルカの残党 通称佐々木と申します。
レビューをして頂き有り難うございました。
指摘されていた点を見つめ直し、次作へ活かしていきたいと思います。
Commented by 高乃純也 at 2009-09-04 23:04 x
はじめましてー
ZIP-ON、今作のシナリオを書かせて頂いた高乃純也です
こぞって二人来るなんて、お祭り気分だなーなんて思いつつも・・・
レビュー有難う御座います!
細部までのレビューで、感無量としか言えません・・・
稚拙な文章だったとは思います、が読み切って頂けたのだけは本当に幸いです・・・w
「孤独」と「蟲毒」は大正解です
作品のテーマを相方に提出した時にも、一発で見破られて少しだけ「アレ、安直?」なんて思いましたがw
何はともあれ、今回は反省点が多すぎました
次作へ生かす、というならソレはきっと最良の肥料に成り得ると思いますが・・・

長々と、失礼しました
今作、プレーして頂いて有難う御座います!w
Commented by s-kuzumi at 2009-09-08 03:10
>>グルカの残党 通称佐々木  さん

こんばんは。
わざわざ、ご丁寧に有り難う御座います。あんまり役に立つような事は書いていないのですが、どこかでお役に立てた部分があれば幸いで御座います。
Commented by s-kuzumi at 2009-09-08 03:12
>>高乃純也  さん

こんばんは。
「孤独」と「蟲毒」の推測が当たっていた、という事実だけで、もう大満足ですw

多分、私のたわごとは兎も角、反省点を潰していけば、二作目、三作目はきっとご自身も吃驚なさるような変化があるんじゃないかと思いますよ。
是非、今後も頑張って活動を続けて下さい。


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