2009年 08月 25日

フリーサウンドノベルレビュー 『I Love America』

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今日の副題 「ハリウッド的ハードボイルドがお好きな方に」

ジャンル:ハードボイルドアクションアドベンチャーノベル(?)
プレイ時間:~4時間くらい
その他:選択肢アリ。バッドエンドも。ただしリトライ出来る。
システム:Yuuki! Novel

制作年:2004/7/17
容量(圧縮時):9.44MB



道玄斎です、こんばんは。
よくよく考えてみれば、ここ最近、割とお手軽に出来るゲームというか、1時間程度で読了出来る作品ばかり遊んでいた気がしたので、今回は少し長目のものを遊んでみました。それにホラーばかり連続して続いていたので、少し指向を変えて、ハードボイルな感じのものを。
というわけで、今回は「DREAM FACTORY」さんの『I Love America』です。こういう作品も意外とお目にかかれないので、貴重だと思いますよ。
良かった点

・割と珍しい“ハリウッドタイプ”のハードボイルド作品。それらしいシーンなんかも盛り沢山です。

・結構ゲーム性があったりして、楽しめます(一方で結構辛い部分でもあるのですけれども)。


気になった点

・Yuuki! Novelに起因する問題がいくつかあったりして……。

・文章表現で気になる部分が(後述)。

ストーリーは、ベクターの方から引用しておきましょう。
21世紀初頭、ニューヨーク。デジタル化社会の中、「人為的情報流出」と呼ばれる事件が頻繁に発生していた。この事件は、顧客情報の流出から国の極秘データや核ミサイルのID番号など大小様々。いくらデータに鍵をかけたとしても、内部関係者が裏切ればどうしようもない。最近急に増え続け、社会問題になっているこの事件を国の危機と察したCIAは、情報が流れ出てしまう前に国の裏切り者を暗殺するという方法をとることにした。「治安協力士」と呼ばれる暗殺組織に身を置く主人公が織り成すハードボイルドサウンドノベル。

こんな感じ。


三時間オーバーの作品は久々ですねぇ。
サイトの方にあるプレイ時間の目安を見ると5~7時間程度らしいのですが、歴戦のノベルゲーマーの方でしたらもっと早くプレイする事も可能。私がざっとプレイして4時間でした。途中で詰まって何度もやり直したりして、ですから、上手くいけば3時間ちょいくらいで読了も可能かな? と思います。

で、作品ですけれども……渋い! 渋めのノベルゲームですね。
何しろ主人公が結構いい歳。53歳ですからね。
彼は元グリーンベレーで、「ある罪」を犯した為、国家の情報流出者を暗殺する治安協力士として暗殺者となる事を余儀なくされます。そこで20年あまり汚い仕事をやり続けてきたけれども、治安協力士を束ねる組織であるCIAから、突如「治安協力士廃止」が告げられ、命を狙われる事に。
生き残りの元治安協力士達と協力し、アメリカを蝕む悪に立ち向かっていくアクション作品です。

適度に章立てがあって、治安協力士としてのミッションの場面だったりもしっかり描かれて、構成としてはとても良かったですよ。随所に出てくる写真素材もいかにも「アメリカ」な感じがして、雰囲気を後押ししてくれます。アメリカって言っても、基本はニューヨークなんですけれども。
ハリウッド的な要素のあるノベルゲームと云えば、『クロスフェードに堕ちた夢』なんかがありますが、こちらの方がより、リアルで渋めのアクションになっています。

で、実は起動するとデフォルトで「スクリーン」表示になっているんですよね。
個人的な好みなんですが、やはりウインドウ表示にして、好みに応じてスクリーンにする、という方が一般的かもしれません。中にはスクリーンでプレイする、という人もいるので一概には云えないのですけれども。
それは兎も角、実はYuuki! Novel製です……。これだけの長さがあるのにこれだけ容量が抑えられているというのはツールの影響もありそうですけれども、些かプレイしづらいのも事実。先ずバックログが効かないとか、セーブ/ロードがやりづらいとか、そういう面での不便さは感じますねぇ。
一本道だったり、尺が短い作品ならばそれでもOKなんですけれども、これだけの長さがあって、バッドエンド実装(実際はリトライというのが可能なのですが)の作品だと、Yuuki! Novelは結構キビしいですね。


面白かったのは、主人公デイブが、元治安協力士の生き残り、クリスと合流してからです。
デイブは前述の通り53歳。渋めのオッサン(というか初老の域に入ってる?)なんですが、クリスはまだ二十代。最初デイブに「坊や」なんて呼ばれていた彼ですが、若さのエネルギーというか、本当にハリウッド映画に出てきそうな「若くて無茶をするけれども、事件の中で成長していくキャラ」になっていました。
この二人のコンビは見ていて楽しいですね。カーチェイスやら、ちょっと小気味の良い粋な会話とか、プレイしていて気持ちが良いです。
この手の映画では、本作のクリス的なキャラは後半で死亡してしまう事が常ですけれども、ちゃんと最後まで彼は生き残るのでご安心あれ。

小気味よい会話、と書きましたけれども、実は会話部分や叙述で些か気になった点が多かったのも事実。
それは、「画面の前でプレイしている私達」に作中キャラが語りかけてくるような場面があるんですよね。それを含めて「一個の作品」となっているようなタイプであればいいのですけれども、そうじゃないわけで、賛否両論あるかと思いますが、私は結構気になりました。
その他にも、これは同じ作者様の『黄昏の白い靴』をプレイした時にも書いたのですが、「日本人でしか理解出来ないような表現」が多いんです。
タイトルが示す通り、舞台はアメリカ。登場人物もアメリカ人。だけれども、彼らの会話の中には妙に日本的な要素が入り込んでいるのです。

例えば「地獄で仏だ。いや、キリスト教徒だからイエスと言うべきだろうか」なんてセリフがあるのですけども、これは日本人だからこそ(少なくとも東洋人)出てくるセリフですよね? 英語で「地獄に仏」的な慣用句があったとして、それは翻訳すれば「地獄に仏」となるけれども、恐らく普通に向こうの宗教体系に即した言葉になっているハズです。そういう「日本人だから分かる」要素が意外に多いんです。

こうした「世界観」みたいなものを支えるべき、キャラクターの言動が「こっち寄り」ってのは、何だか気になりますねぇ。文章的な部分で云えば、誤字が割と多めだったり、「グルカナイフ」とあるべきところが「グルガナイフ」になっていたり、或いは「MP9」がアサルトライフルと表記されていたり(多分、サブマシンガンの間違い、ですよね?)する部分はあれど、私には「世界観」的な部分の文章の構成の方が気になりました。


結構本作、ゲーム的な要素も入ってます。カーチェイスの場面だったり、あるいは山場である爆弾処理の場面とか。間違えるとバッドエンド。
ぱっと表示される数値を記憶するとか、かなりゲーム的な要素があるわけです。カーチェイスのそれでしたら、全然問題ないんですけれども、結構手間取ったのは「爆弾処理」の場面。
何度も何度もやり直すはめに……。オマケに「爆弾処理の最中はセーブをするとセーブデータが消えるようにプログラムされているから、セーブするなよ!」的なメッセージがw この爆弾処理ではちょっとした推理だったり、或いは記憶力を試すテストのようなものが行われたりします。そのくらいなら全然大丈夫なんですが、「モニターの解像度」を変化させないと見破れないものがあったり、はたまた最後の選択肢は全然答えが分からず、しらみつぶし戦法を採ることに。。。結構面白いんだけれどもね~。
この選択肢も賛否が分かれる所かも。

そういや、「気になった点」では書きませんでしたが、一つだけ、本作で「これは良くない!」と思われるものがあります。基本的に私のレビューは甘口なんですけれども、何て云うか健康に害を与えるようなトラップ(?)があって、そこだけはどうしてもいただけない。
先ほどからつらつら書いている爆弾処理の頭のあたりです。「ボリュームを上げろ」みたいな指示がキャラクターを通じて、プレイヤーに指示されるんですけれども、それはやっちゃ駄目。特にヘッドフォンとか付けてプレイしている人は、耳にダメージを与えてしまうおそれがあるので、さっくりスルーして下さい。注意しましたよ? ホントにそこだけは気をつけて下さい。


そんなこんなで、様々な困難を乗り越え、CIAの支部に乗り込むデイブとクリス。
クライマックスですね。緊張感ある銃撃戦が展開されたり、と本当にハリウッド映画さながらの演出ですが、ベタでありつつも、ノベルゲームというフォーマットでプレイするとまたちょっと新鮮で面白い。
ラストも、ほんの少し苦みが残るようなもので、何かこうジワッと来ますね。色々気になった点もあったのですが、ラストを見てしまうと全体として「をを、結構良かったなぁ」と感じてしまう不思議。
最後、ちょっと本編で活躍著しい(?)ジョゼの待遇に気になったりしましたがw


少し珍しい、ハードボイルドアドベンチャーでした。
サイトの方には、イメージイラストが付いているのですが、本作は写真素材のみ。
イメージイラスト、かなり良い味出してるので、是非イラストなんかも見つつのんびりプレイして欲しいと思います。ハリウッドタイプのアクション映画が好きな人は是非プレイしてみて下さい。

それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-08-25 21:26 | サウンドノベル


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