2009年 09月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『あそびめヱロゲに花束を』

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今日の副題 「エロゲはお好きですか?」

ジャンル:エロゲを作るゲーム(?)
プレイ時間:~9時間
その他:選択肢なし、一本道。ちょっと嬉しいフルボイス。
システム:YU-RIS

制作年:2009/9/?/
容量(圧縮時):373MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、昨日こっそりダウンロード、プレイしていた作品のご紹介。私が気に入っている作者様の新作です。
というわけで、今回は「花を吐く抄女」さんの『あそびめヱロゲに花束を』です。
良かった点

・(商業の)ゲームを作るゲームという、開発者とプレイヤーの位置が近いノベルゲームに於いて、面白い設定になっている。

・ゲーム制作が少し分かるようになるかも?


気になった点

・テキストが読みづらく、結構疲れる。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
物書きを目指してる主人公こと、天明睦月が、 ゲーム会社「ニーベルング」へ面接に行って無事合格した。
しかし、いざ会社に入って配属されたとこは、「ニーベルング」という親会社の経営費稼ぎに、
別会社でひっそりと運営しているヱロゲー部署「花を吐く遊女」だった。
そこで、ヱロゲ産業などをまったく知らない睦月が、 こてこて濃密な人たちに揉まれて悲喜こもごもなお話で御座います―――多分。
―――残念ながらヱロはありませんのでご愛敬

こんな感じです。
要するに、女の子である所の睦月が、ゲーム会社に就職をしたら、そこは女だらけのエロゲ開発室だった、とそんなストーリー。

ちなみに、「エロゲ」ではなく、本作では「ヱロゲ」と表記されます。ア行のエではなく、ワ行のヱですよ。これはどうでも良い話なのですが、「ゐ」とか「ゑ」とか、つまりカタカナにすると「ヰ」や「ヱ」ですね、これらの言葉は、ドンドン無くなっていく傾向にあったりします。
って、もう、こんな言葉を使っている人は稀少ですから(特殊な効果を狙った場合を除く。EX:ロリヰタ)、当たり前っちゃ当たり前なんですが、文科省の関係で、国語絡みの組織がありまして、こういうワ行の日本語を消し去ろうとしている訳ですよ。
うろ覚えで恐縮ですが、従来、認められていなかった「ウィ」とか「ウェ」なんて言葉の存在を認めてしまった為に、それまで、それに近い発音を担っていた「ヰ」や「ヱ」が消失しかけている、という状況だったんじゃないかしら。これは明らかに外来語の影響でしょうね。普通に、「ウェブ」なんて使いますしね。

それは兎も角、超弱小開発室の涙あり笑いありの、エロゲ制作ストーリー、というのが本作を端的に表した一文になりましょうか。
実は、「ゲーム(特にノベルゲーム)を作るノベルゲーム」という、という題材はメジャーなものでこそありませんが、前例があったりします。「あおぞら幼稚園」さんの(久々にお名前出しました)『ゲーム作ってます。』なんて作品がフリーのノベルゲームでは、先ず思い浮かびますし、もうすぐ完成しそうな気配が濃厚な、こんな企画も、やっぱり同様の題材を持っています。
或いは、拡大解釈すれば、『正しいゲームの作り方』なんてギャグ要素が強い作品も、それに近い感触があったり。

とはいえ、本作が、先行する、或いは制作中の作品と決定的に違うのは、「同人」の制作現場ではなく、「商業」の開発室を舞台にしている、という点にあります。
何故か悉くシナリオライターが逃げ出した開発室……(や、実際、結構あるらしいんですよ……)。
腕の良い原画やグラフィッカー、プログラマー、挙げ句の果てに、声優さん(兼業として広報や営業等も担当)まで抱えているのに、シナリオライター不在の為、一向に作業が進まない、とんでもない火の車状態の開発室が本作の舞台。

そんな、超弱小のメーカーに何の因果か就職してしまった、ライター希望の睦月。
開発室のメンバーが全員女性という(美人揃いである、という事も云うまでもない)、現実じゃ、まずあり得ないような環境な訳ですが、待望のライター加入で、何とか頑張って作品を創り上げていく、そんな過程が面白おかしく描かれます。

ちなみに、前任のライター(ネトゲ廃人になってクビ)が残していった、悪い意味ですさまじい企画だけは存在していて、時間や予算の問題で、何とかその路線を踏襲しつつ(ジャンル・方向性・キャラ設定のみ存在している)、ゲームを制作しなければなりません。
何しろ睦月加入前までは、シナリオ不在、されど開発は進む、という酷い有様……ってそれは開発が進んでいるのか?w
制作中の作品のタイトルは『ワルキューレの遊女』という、北欧神話風なのか、江戸時代風なのかちょっと俄に判別しづらい怪しげなゲームを作っています。

けれども、落ち着いて考えてみれば、ワルキューレ(ヴァルキリーでもいいですけれども)って、割と遊女というか、そういう性質も担っていたような気もしないでもないので、まぁ、ありかな? と思っていたら、ゲーム後半で「鎧と着物ばっかり描いてた」なんて台詞があって、ここで云う所の「遊女」は私達が普通にイメージする「遊女」だったようですw

登場人物も皆アクが強くて、けれども、それが不思議と作品にマッチしており、私は結構気に入ってしまいました。特に好きなのが、メイド服姿の声優(兼広報・営業)の七乃。年齢が大台に乗るギリギリで、声優としてやっていきたいけれども、それに専念出来ず、オーディションには落ちまくりで、けれども、実は会社の活動を目立たない所で支えるちょっと素敵なお姉さん。

あっ、ちなみに、本作はフルボイス。
声優さんは、商業でも活躍なさっている方を多く起用していて、ボイスのクオリティは保証付き。
又しても脱線ですが、本作は即売会にて販売したものを、音質画質を落としてフリーとして公開してくれている、というそういう性格の作品です。別に音質画質を落としたって云っても、全然気にならないレベルなんですけれどもね(そもそもそれで300MB越えだ)。


さてさて、ゲームを作るゲーム、という事で、ノベルゲームに留まらず「ゲームっぽさ」をフィーチャーした演出も中々楽しかったです。タイトル画面、或いはアイキャッチの場面などでは、懐かしの16色的な表現が敢えて採られていますし、BGMも古式ゆかしいマイコンゲームの音っていうか、ファミコンサウンドっていうか、そういう感じの曲です。

個人的な本作の見所、としては、新人ライター奮闘記みたいな所では実はなくって、寧ろ、この作者様お得意の会話の妙、でもなくて、開発の様子そのものだったりします。会話の面白さみたいな部分は、勿論本作でも踏襲されているのですが、それは気になった点の所で、述べるとしましょう。

自社の開発だけじゃ、会社が成り立たない為、外注の仕事を獲ってくる、広報・営業担当の七乃。
具体的には、他メーカーのボイスの音切りを、開発全員で一生懸命やる、というw
声優さんに演技して貰う時には、スタジオなんかで収録をする訳ですけれども、一個づつファイルとして収録していくのではなく、長い一個のファイルに様々なセリフを入れて、後で、セリフ一つ一つに切り分ける、という作業を行い、これを音切りと云うようです。
丸一日この作業に従事していると「ゼロクロスポイントでドラッグしてドロップ……」とうわごとの様に口にしてしまう、という、ちょっと末期な様子が結構楽しいw

Sound Forgeか何かを使っているんでしょうか?
一つ一つのセリフ、その終端部分で、波形の振り幅がゼロになる地点(つまり無音になる地点)、そこまでドラッグして、下にドロップしてやると、Sound Forgeなんかだとファイルを一個切り出せるようです。
何で、わざわざ「ゼロクロスポイント」にしないといけないかってーと、そうしないとノイズが載ってしまうんですよね。まだ音が鳴っているのに、そこで無理矢理波形を切ってしまうと、プチってなノイズが載ります。DTMでも同じですよね。
フェードアウトさせる、なんて荒技で対処出来なくもなさそうですが、ゼロクロスポイントで切れるんだったら、それが一番いいんでしょうね。

こういう、ノベルゲーム開発そのものに関わる部分が、収録やら、音声編集作業やらに従事した事の無い私としては、かなり面白くて、興味深い作品でしたね。
多分、作者のゲーム制作の体験を作品に還元していると思しい訳ですが、勉強になります。ピーク振り切ってる音声があった、なんて描写がありますけれども、こういう収録ってリミッターとか挟まないのかな? 

ともあれ、こうやって一個一個の台詞を切り出して、番号振って作品に組み込んでるんだなぁ、と感心する事頻り。多分、必要があればエフェクトを掛けたり、そういう加工も行うのでしょう。
例えば、電話越しの音声を作るんだったら、フィルターで電話の帯域0.3~3.4KHz以外をバッサリカットするとか。

そういえば、キャラクターで云えば、100鈞で下着を購入し、台所で台所洗剤で以てそれを洗濯する、女としてそれはどうか? と思わざるを得ない原画の樹莉も魅力的。また、こいつが呑兵衛なんだわw
昨日、夜中にプレイしていて、こちらもお酒が呑みたくなってしまったという……w ちょっとオッサン入ってるキャラなんですが、発言回数もかなり多い方で、何故か親しみが湧くキャラだったりします。


さて、気になった点ですが、文章が読みにくい、というのが一番の気になった点でしょう。
それは、「テキストそのものが読みにくい」という事ではなくて、テキストの表示方法に問題があるように思えます。具体的に云えば30字×7行が一気に表示されたりするんですけれども、結構読むと疲れてしまいます。
かなりワイドな画面ですし、30字というのは、左から右へ、目を移動させないと読めません。加えて、7行ですから、今度は上から下に目を移動させないといけないわけで、「パッと見てパッと理解出来る」というタイプのテキスト表示ではないんじゃないかな、と。

そんなわけで、この作者様の持ち味の、ちょい小粋なキャラクターの掛け合い、そのテンポやノリの良さが削がれてしまった様に感じるのでした。
毎回書いている「文章の理解しにくさ」みたいなものは、「現代」の「エロゲ制作現場」という事で、かなり緩和されて、文章自体は読みやすくなっているんですけれどもね。


一応、新人ライターの睦月が中心人物っぽい気配こそあれ、実は、こいつが主役、みたいなそういう作りじゃなかったように思います。全員のキャラがちゃんと立っていて、ちょっとアレな部分はあるけれども、キャラクターのバランスみたいなものは、取れてたんじゃないかなぁ。
ラストも、結構意表を突く形で終わりました。完全に「完!」というよりは、「まだまだこの物語は続いていきます」的な、余白を持たせた終わり方。
まぁ、何か強烈な結論を出すとか、主張を出すというよりも、零細ゲームメーカーの開発の中にある、「ゲーム開発のプロセス」、そこに本作の焦点や面白さが感じられるんじゃないかと思いますよ?

私のような一般のノベルゲーマーは勿論、実際にゲームを作っている方、これから一旗揚げようなんて方も参考になる部分、多いと思います。
あっ、そうそう。サイトの方でプレイ時間の目安が「~9時間」になってましたが、多分、読むのが早い人だったら3時間とか4時間くらいで読了可能です。ちなみに、えっちぃシーンは無いんですが、結構扇情的な音声が入っていたりしますw

それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-09-16 19:28 | サウンドノベル


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