久住女中本舗

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2009年 10月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 『さくっとパンダ』

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今日の副題 「それはまるでドミノ倒しのようで……」

※大吟醸
ジャンル:乙女妄想入りバイオレンス伝記ノベル(?)
プレイ時間:大凡、2時間+4時間+6時間+7時間くらい。
その他:選択肢無し一本道。尚、本レビューは、第一部~第四部まで読了した上で書いています。※なるべく15歳以上の方がプレイして下さい。
システム:NScripter

制作年:完結が2007/3/9(?)
容量(圧縮時):12.0MB+26.1MB+72.9MB+129MB




道玄斎です、こんばんは。
今日はここの所、ずっと掛かりっきりだった作品のご紹介。何と第一部~第四部まで、全部プレイして大凡20時間くらいの超長編。
というわけで、今回は「禁飼育」さんの『さくっとパンダ』です。ちなみに、今回が記念すべき400本目のレビューになります。

実は、前回レビューした『キナナキノ森』と作者様が連続する事、作品のテイストにやはり近いものがある、という事で、些か変則的ですが、今回は良かった点、気になった点は省きましょう。
ストーリーの方は第一部のものをサイトの方から引用しておきます。
クラスから「いじめ」を受け、復讐を決心する主人公
修行をし、ちょっとずつ強くなり仕返しする日を夢見るが・・・・
物語は意外な展開へ・・・・

こんな感じのストーリーになっています。


前回の『キナナキノ森』をプレイして、「こりゃ、本当に読まなきゃ駄目だな」と思い、本作をプレイさせて頂きました。
プレイ時間的なものもそうなんですが、非常にズッシリとした手応えのある作品でした。タイトルは、ちょっと明朗な感じですが、ストーリーの方はかなり重たい。『キナナキノ森』もそうでしたが、やっぱりちょっとグロテスクな描写や、暴力描写なんかもあって、万人向けとは言い難い面があるのですが、少しダークなテイストが好みな方なら、かなりハマれるんじゃないでしょうか? 
かく言う私も、シリアス系統のノベルゲームだと割とダークなものを好む傾向があったりするので、第一部をちょっとプレイしただけで、すぐに引き込まれてしまいました。でもって、連続の大吟醸。これは二年以上やってきて、初めてかもしれません。
合う/合わないってのが、割と顕著に分かれそうではあるけれども、自分の中ではこれはどうしても大吟醸だろう、と、そういう判断ですね。

ストーリーを補足しておくと、主人公の名前は「小倉こたつ」と云いますw
今までこの作者様のゲームを何本か過去にプレイしてきましたが、大凡主人公の女の子の名前が、個性的というか特徴的。「てあみ」に「かぼ」に今回は「こたつ」ですからw
名前に拘るってのは、ちょっぴり難しい側面もあって、例えば「綾小路 鷹敏」とかにしちゃうと、流石にちょっとくどい感じもします(敢えて狙っているのなら話は別ですが)。平々凡々なネーミングでもストーリーが良ければ全然良いんですが、やっぱりキャラクターってのは愛着があったりして、ちょっと自分のこだわりを入れたくなる部分でもあるわけですよね。
で、まぁ、本作の場合(というか、この作者様の場合?)は名字が「小倉」という、一般的なものですから、名前自体にはアクセントがありつつも、名字でバランスが取れている感触があったりします。逆に云えば、作風っていうのかな? そういった部分が確立されている感触があるわけです。

さて、学校でいじめに遭い、母親が斡旋してくれた「師匠」の元で修行を積むこたつ。
そして、修行をしている間、学校では事件が起き……。

なんて調子でストーリーが進んでいくのですが、のっけからいじめの描写が結構キツいw
「悪役をこれでもかってくらいに醜く描く」って云うのでしょうか、その徹底ぶりが凄いですよね。裏を返せば、「死ぬ程辛い試練を主人公に課す」って事でもあるんですが、大凡、第一部~第四部全てに渉り、主人公こたつは、かなり酷い目に遭います。
何しろ、第一部のサブタイトルが「苦痛」ですし、第二部は「妄想断末魔」なんてものに。第三部のキャッチコピー的なものは「ただもう、最悪」だったりするわけで……。

『Nという名の男 Bという名の女』、『キナナキノ森』をプレイしていると、やはり本作に於いても通底するものを感じる事が出来ます。というか、本作がそうした要素の出発点って事でいいのかな?
ともあれ、大きな枠組みでみると、割と展開のパターンとしては近いものがあるんですよね。ただ、ここまで強烈なインパクトを残すと、マンネリ、というよりは個性や持ち味って云った方が適切かもしれません。

この持ち味について考えてみると、「ドミノ倒し」に準える事が出来るように、思います。
ドミノ倒し、あの木の札をずらぁっっと並べて、最後に壊す遊びです。

やっぱり、衝撃を味わって欲しいので、ネタバレを回避しながら書くので抽象的なんですけれども、丁寧に丁寧に木の札を並べていくんですよね。それで、それを一気に倒してしまう。だけれども、その「崩れたドミノ」をもう一度、丁寧に並べていこうとするような、そういう作品に思えるんですよ。

言わずもがなで、木の札を5枚並べて倒すよりも100枚並べて倒す方が、鮮やかですし、感動的です。
本作の場合も、本当に100枚、1000枚単位で、じっくりと丁寧に木の札を並べ、それを一気に倒してしまうわけです。で、これも勿論なんですが、倒した枚数が多ければ多い程、再度木の札を並べていくのは困難になります。
だけれども、時に挫折しそうになりながらも、主人公こたつは、その木の札を並べていく。その姿がとっても素敵ですし、やっぱりありきたりの言葉になってしまいますが、感動出来るんですね。
丁寧に何てこと無い日常を描き、それを一気に崩壊させる。そして再度そのかけがえの無い何てこと無い日々を探していく。

その展開の妙と云いますか、兎に角飽きないんですよねぇ。
本当にここぞ、というタイミングでストーリーを牽引していく仕掛けに、目が離せませんでした。ジャンル自体も、複合的で恋愛要素(乙女ゲーム的要素)や、ギャグ、伝奇っぽい部分、ミステリーっぽい所、色々ミックスされておりお腹いっぱいになります。
ストーリーの組み立てそのものも、そうですが、後はやっぱりキャラクターの魅力もありますよね。主人公こたつは云うに及ばず、師匠、三毛猫、花穂、真穂、ガオ、シャオ……。沢山のキャラクターが、ちゃんと物語の中で苦悩を抱えながらも生きている感触、それがあるのでした。


やっぱり読んでいて「痛い」「辛い」部分がある、という事はあるのですが(第三部はかなりキツいです……)、それは本作の良い所と裏返しだったりします。
そう云えば、蛇足かもしれませんが、微妙に回収されていない伏線があるような気もしますね。具体的に云えば、三毛猫が徒手で戦う時の、ちょっと特徴的な構え、あれは一体何だったのか? とか。あとは、何かしら決着を付けて欲しかったラヴィッツの存在、結局、何者なんだ? という疑問が拭いされない花暴虎さんとか。
ちなみに、私、花暴虎さんは、かなり好みのキャラですね。
今、お気に入りのキャラを一人挙げよ、って云われたら花穂かもしれません……。初登場の第二部では、ビジュアルがかなり男っぽいんですけれどもw
気になった点に関しては、大凡こんな所でしょうか? 「!」「?」の後は一字空ける、三点リーダ(“…”の事です)は二つ続けて使う、なんて一般的な規則はあるわけですけれども、それは絶対解じゃないですし(だけども、そうした方が読みやすいのは確か)、そうした些末な点を吹き飛ばす程に、インパクトやパワーのある作品だったんじゃないかと。


結構キツい展開がある事、合う/合わないが分かれそうだという事など、プレイヤーの「嗜好」に拠る部分があれど、個人的には凄い名作じゃないかと思っています。
少しでも興味を持たれた方は、かなり読了まで時間は掛かりますが、是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-10-03 21:50 | サウンドノベル


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