2009年 11月 15日

フリーサウンドノベルレビュー 『Abend Eden』

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今日の副題 「吸血鬼モノの新しい形」

ジャンル:吸血鬼+SF(?)
プレイ時間:2時間程度。
その他:選択肢無し、一本道。
システム:Windows/PSP対応 Hybrid Mini-novel(?)

制作年:2009/11/7
容量(圧縮時):48.9MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は久々にノベルゲームをプレイしました。毎度お馴染みというか、良くプレイするサークルさんの作品。内容も結構私の好みに近くて楽しめました。
というわけで、今回は「Team Eye Mask」さんの『Abend Eden』です。
良かった点

・SF的な素材が所謂“吸血鬼モノ”に新風を吹き込んだのではないかと。

・熟練さが垣間見える作り。


気になった点

・少し、内容を追っていくのが難しい部分があるかも。

大体、こんな所でしょうか?
ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
abend EDEN
宵闇の楽園。

ABnormalEND EDEN。
不意に終わる楽園。

少女は永遠を生きる。牢獄のような楽園で。だがその仮初の永遠が終わる時、一つの世界もまた終わろうとしていた…

現代を生きる吸血鬼の少女が次元の狭間を生きる魔女とであった時一つのパラダイムが終わりを告げる

というわけで、久々に、そしてそれなりに長さのあるノベルゲームをプレイ致しました。
実は、本作は、完全新作書き下ろしって訳じゃなくて、過去にC74にて頒布された作品のWindows版という事になります。
例によって、少し横長で特徴的な画面で、この画面を見ただけで「あそこの作品だ!」って分かるようなインパクトがありますねぇ。少なくとも、私の環境でこの画面サイズで見にくいとかプレイしにくいとか、そういう事は全然ありませんし、文字の表示のされかた、なんかも凄い凝ってるんですよ。

このTeam Eye Maskさんの作品を、取り敢えずフリーで公開されているものは全てプレイしてきているハズですが、どの作品も実は「SF」の香りがしていて、そういう所が私のお気に入りな所でもあります。
一作目の『楽園』なんて、そのままノスタルジック感のある近未来SFですしね。

本作に於いても、そうした「SF」的なスパイスがちゃんと利いていて思わずニヤニヤしながらプレイしてしましました。
と、云っても、舞台は近未来、若しくは遠い未来でもない現代。しかも吸血鬼なんて存在がひっそり存在していて、少しだけファンタジックな(って、云っても明るめの剣と魔法のファンタジーって意味じゃなくてね)部分があって、そこにSF的な要素が上手く絡まっていて、独自の味がしっかり出ていたんじゃないかと思います。SFって云っても「惑星が」とか、そういうコテコテのそれじゃなくて、スパイスとして使われている所が又良かったですねぇ。

メインの登場キャラは、所謂主人公の或路(あるじ)と、吸血鬼のマリス、そして彼女の従者ディヴァ、更に謎の人アンフィニの四人。あと一人、居るっちゃいるんですけれども、激しくネタバレなので、伏せておきますw

前述の通り、ファンタジックな部分もある作品ですが、その「そういうもの」として存在しているのが普通な吸血鬼なんてものに対して、ちゃんとした「存在の説明」をしているのが、興味深かったです。
曰く、伝承によって生まれる、という事なんですけれど、無からいきなり何かが出てくるっていう訳ではなく、人々が伝えてきた伝承が、何らかの力によって具現化している、というような、そういう感じなんです(よね?)。で、こういう設定は、作中の言葉に拠れば「人間の干渉力」という事になるはずです。

干渉力とは何か? みたいな問答が、後半で出てくるんですけれども、結構そういう普通だったら冗長に感じてしまうであろう説明が面白いんですよ。
一方で、こうした「世界の仕組み」みたいな話になると、割と哲学的な部分だったり、理論的な話に踏み込んだりして、中々意味を理解しつつ読んでいくのは難しいな……と感じる部分でもありました。


さて、順序がオカシイですが、ストーリーを若干補足しつつ、更に語っていく事にしましょう。
主人公、或路は「自分の生きている意味」みたいなものが分からず、ビルの屋上で「死」を感じようとしている訳ですが、そこに永き時を過ごしてきた吸血鬼マリスがやってきて或路に“ゲーム”を持ちかける……。というのが大まかなストーリーの流れ。

そこまで、盛り上がりや盛下がりみたいな、起伏は乏しくて、どちらかと云えば、或路とマリスの会話、或いは途中でマリスに用があってやってきたアンフィニという女性とのやり取りがメインとなる感じです。
そうしたやり取りに対して、随所随所で、マリスの過去の出来事が物語内物語みたいな感じで交差していく。
キャラクターの造型って事で云えば、割と、「それっぽい」感じではあるのですが、マリスの高貴な可愛さがありつつも、長い間生きていて生き倦んだようなそういう感じだったり、アンフィニの謎めいたキャラクターは魅力的。

そもそも吸血鬼モノって、ノベルゲームじゃなくて、色んな所に目を向けてみれば結構良くある素材です。
それだけ、人気があったりする一つのジャンルって事なんでしょうけれども、そこにSF風味を持ってくるのが本作の個人的に最も美味しい所だったりしました。
「特異点」とか、或いは「モノフィラメントワイヤ」とか、そういうのが好きな方にはお馴染みの単語が出てきます。モノフィラメントのワイヤーってのは、分かりやすい日本語にすれば単分子ワイヤーですね。単分子故に、物凄く切れ味が良いんだそうです。

こういう所謂「魔法の道具」みたいのが実用化されていたり、その途上だったりする今日この頃ですが、少しだけ寂しい気もしますね。趣味で割と西洋東洋問わず、刃物を弄ったり研いだりするんですけれども、やっぱり何だかんだで、その刃物の素材の違いや、製造目的とかを無視して云えば、日本の伝統的な刃物がやっぱり一番切れ味が良い、と私なんかは思っているので、SF好きな部分と、現実的な部分で妙に苦悩する事があったりしてw

ただ、本作はノベルゲームですから、こうしたSF的なスパイスってのは、凄く美味しく頂く事が出来ました。
ちなみに、SFではないんですけれども、本作に出てくる吸血鬼は携帯電話で国際通話もしますし、パソコンでメールを認めたりもしますw
こういう組み合わせ方で、それまであったような吸血鬼モノに新風を吹き込んでくれたような、そういう感触があって、プレイしていて面白かったです。

先に、起伏に乏しいと書きましたが、そういうのがゼロってわけでもありませんよ、勿論。
ラストの辺りはやっぱり盛り上げてくれますし、途中で「をを!」と驚くような部分もバッチリ搭載しています。ただ、それが、割と「盛り上げるぜ!」ってな感じでもなく、割と淡々としていてそこが味になっているっていう感じでしょうか?
ただ、個人的な好みを云えば、もうちょい、プレイしていて「没入」するような、そういう盛り上がりの部分があっても良かったかな、と。好みの問題ですけれども、少し「俯瞰」している、みたいな感触があるんですよね。

全体的なクオリティや、作り込み、或いはビジュアルといった面で不満は全然ありません。
相も変わらずのハイクオリティな作品だと思います。
iPhoneでプレイ出来る作品をお作りになったり、と、色々と新しい試みも積極的にやっておられて私も注目している作者様です。


吸血鬼モノがお好きな方、或いはSFチックなものが好きな方、或いは「生きる意味」を探したい方、なんかは是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2009-11-15 00:45 | サウンドノベル


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