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2010年 03月 07日

フリーサウンドノベルレビュー 『πとナブラの正しい料理法』

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今日の副題 「これぞ、理系型ノベルゲーム!」

※吟醸
ジャンル:理系型SFノベルゲーム(?)
プレイ時間:2時間~2時間半くらい。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2009?/?
容量(圧縮時):93.7MB




道玄斎です、こんばんは。
今日はNovelers' cafeの方にて話題になっていた作品のご紹介。大学のサークルで制作されたノベルゲームです。以前『茄子と秋刀魚の美味しい世界』という作品をレビューした事がありましたが、同じサークルさんの作品ですね。タイトルワークなんかはやっぱり共通するものがありますねぇ。
というわけで、今回は「早稲田大学公認サークル、経営情報学会(MIS.W)」さんの『πとナブラの正しい料理法』です。
良かった点

・“理系”が一つの軸になっていて、新鮮な印象が。

・魅力的な脇役。


気になった点

・脇役がヒロインを喰っていたような印象が……。

ストーリーは、ベクターの紹介文から引用しておきましょう。
美味しい数式の作り方

「『数』って何だろう?」
放課後の教室で彼女はそんなことを尋ねた。
二秒だけ、僕は目を瞑る。その瞬間に、この世界が生まれて死んでいくような。そんな加速度を、僕は感じた。
世界の仕組みに憧れる主人公と、
物理に没頭した、ちょっと変わった少女が送る
理系たちに捧げる、ロマンチストの青春物語。

こんな感じ。
ちょっとプレイしてみたくなる魅力、ありますよね? 理系ノベルゲームと勝手に名付けているわけですけれども、文系でも全く問題無く読めます。ただ、主人公の心中思惟に出てくる物理用語が分からなかったりするだけでw

さて、今日はのっけから脱線するとしましょう。
本作は「大学発」のゲーム、早稲田大学のサークルさんの作品です。
私も戸山女子大学(第一文学部を以てそう呼び習わすのです。理工学部は大久保工科大学と云ったりもします)の出身者ですから、何となく親しみを感じてしまいますね。

ところで、早稲田大学ってサークルの数が滅茶苦茶多いんですよね。恐らく日本の大学でナンバーワンのサークル数を誇っているはずです。4月になると、サークルの新歓呑み会があり、高田馬場駅でゲロ吐いて倒れる人が一つの風物詩になるくらいで……。

で、こうしたサークルはざっくりと二つに分ける事が可能なのです。
一つは「大学公認」のサークル、もう一つは「大学非公認」のサークルです。公認サークルとなるとちゃんと補助金が学校側から支払われますし、部室も与えられます。歴史や伝統のあるサークルも多いんですよ。政治家を輩出する雄弁会なんてのもありますし、80年以上の歴史を持つサークルなんかも結構ありますしね。

一方非公認のサークルだと、極端な話、適当に「ちょっとサークルでも作るか……」とつぶやいて活動を始めれば、もうそれはサークルが成立してしまうわけで、一種の草の根的な活動というかそういう感じ。
優劣の問題ではないですけれども、公認サークルっていうのは、それだけで結構凄い事なんですよ。サイトの方を見てみると1969年に設立されたサークルですから、ざっと40年ですか、そのくらいの由緒正しいサークルなのですよ。

要するにコンピュータの技術を学ぶ事を目的としたサークルだと思われるのですが、プログラミングは勿論、CGやMIDIなど活動は多岐に渉っているようで、サークルの力を結集すれば普通にゲームが作れてしまう、という、非常に強力な母体を持っているようです。多分、音楽もサークルにて作られたものを使用しているんじゃないかと思います。


さてさて、肝心の中身の方に入っていきたいと思いますが、理系が一つのキーワードなので、結構SFしてたなぁ、と。主人公の小鳥遊(たかなし、と読むと思しい)は生粋の理系青年で、世界を数学や物理で把握していきたい、という、そういう或る意味で非常にロマンチストな人なんですよ。
この手のノベルゲームって、ちょっと影のある青年がハムレット宜しく「生きるべきか死ぬべきか」みたいな、ちょっと文系丸出しになっちゃう事があるわけですけれどw ガチガチの理系青年が主人公、という事で感触として「新しい」感じがしましたねぇ。
で、ある日、所謂「平行世界」に主人公が飛んでいってしまって、そこから元の世界に戻る為にあれこれする、というのがストーリーの大まかな流れ。

そうそう、主人公は「たかなし」と読むと思しいわけですが、ルビは振られてなかったんじゃなかったかな? ちょっと読みづらい名字なので、ルビがあっても良かったかもしれません。
ただ、珍しい名前っていうのも、いくつか押さえておくと結構役に立ったりしますよ。例えば……そうね……「興梠」とか。これは「こおろぎ」って名字ですけれど、この名字を持っている人は出身地まで分かってしまう(多分、高千穂町)、という訳でして、こういうのを採集して楽しむのが文系のやる事ですw

ともあれ、主人公のキャラも理系を軸にしてしっかり立ってましたし、謎の少女三條さんがとっても素敵でした。立ち絵を見てみるとちょっと髪の毛がバサバサっとしていて、ビジュアル的にも一番可愛いんじゃないかなぁ……と個人的に思います。
また、この三條さんも生粋の理系野郎っていうか、高校生なのに既にサイエンティストのような、そういう感じの人なんですよ。コケティッシュな魅力がたまらない女の子。ただ、悲しい哉、彼女はヒロインじゃなかったわけですけれども、存在感とかキャラクターとして非常に美味しい役所でした。

一方で、ヒロインと思しき七夏は、三條さんに若干喰われてたかも?
ただ、ここ、難しい所ですよね。脇役のキャラが立っていて存在感があると作品がグンと良くなりますけれども、逆にヒロインを喰ってしまうと、それはそれでマズイ。この辺りのバランスは凄く繊細で難しい所だと思います。
個人的にはもうちょっと七夏がグワッと表に出てくるような、そういう場面がもう一箇所くらいあると、良かったのではないかと思います。多分……プレイヤーは七夏ではなくて寧ろ三條さんの方に感情移入しちゃうと思うんだよなぁ……。そこが若干気になりましたね。


小難しい話だけじゃなくて、ちゃんと恋愛的な要素もあり、結構胸がきゅんきゅんしちゃうような描写も多くて、プレイしながら「ぁう……」とか声にならない叫びみたいのを上げてしまいましたw
きっちりとしたストーリーで、破綻無く纏まっていて今までに無い「理系」要素が美味しかったので、今回は吟醸です。オープニングのムービーなんかも凄い凝ってましたよね。カラフルでポップで。ノベルゲームのムービーではあまりお目にかからないタイプでした。

先に書きましたが、文系の私には、結構意味不明でさらっと読み飛ばしてしまった会話とかあるんですけれどもw 細かい数学だったり物理だったりの会話のやりとりは、あまり気にしなくてもOKだと思います。
逆に、その理系という軸が最後までブレなかった事で、一つのオリジナリティが出ていたわけですけれども、円周率について考えながら読んでいたらこっちの頭がどうにかなっちゃいますからw
理系の方は、そういう部分で思いっきり頭を使いながらプレイしていくと吉。

あっ、ただね、1を三等分すると1/3でしょ。で1/3+1/3+1/3をすると1になるじゃない? でも、1/3って0.333……だから、「1/3+1/3+1/3 = 0.333……+0.333……+0.333……」ですよね。
そうすると1=0.999……なのか? みたいな疑問は、考え方の枠組みの問題だってのは少し分かったような気がしないでも無かったので、得した気分になりましたw

ストーリーの流れやパターンは割とオーソドックス、ですけれど魅力的なキャラクターや主人公の世界の見方、みたいなものが新鮮でオリジナリティを確立している作品だと思います。
少しプレイ時間が長目ですけれども、文系理系問わずプレイして貰いたい作品です。


それでは、また。
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by s-kuzumi | 2010-03-07 21:14 | サウンドノベル


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