2010年 10月 05日

フリーサウンドノベルレビュー 『はるけきかなた』

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今日の副題 「小さいからこそ味わいが」

ジャンル:小市民的ラブストーリー(?)
プレイ時間:1ルート、1時間ちょい。全部で3時間ほどあれば読了可能。
その他:選択肢アリ。ヒロインの分岐、個別ヒロイン毎の分岐等ある。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2010/8/14
容量(圧縮時):161MB



道玄斎です、こんばんは。
ここんとこ、ずっとペースダウンしてますねぇ……。面白そうな作品、色々お勧めして頂いているのですが、色々とやることがあって、中々ゲームに集中出来ません。
今日は、先週末くらいからプレイしていた作品のご紹介。自ら以て「小市民的」と書かれておりますけれども、良い意味でその通りだな、と感じる優しい手触りの作品でした。
というわけで、今回は「bush clover」さんの『はるけきかなた』です。
良かった点

・馴染みのあるテーマでありながら、等身大の恋愛ストーリーをきっちり纏めている。

・ちょっぴり凝った文体で、「プレイする」というよりも「読む」という感じ。こういう文体もいいですよね(但し、気になった点とも関わる。後述)。


気になった点

・起動方法が分かりづらいというのは、ちょっとw システム絡みで若干不備がなきにしもあらず。

ストーリーは、ベクターの紹介文から引用しておきましょう。
僕―――野上秀秋は、彼女に別れを告げられた。太陽が容赦なく照りつける、夏の日の午後。歩きなれた街を行き、通いなれた書店を訪れる。
「秀ちゃん?」
そこには昔馴染みの千夏の顔があった。そして新しい恋を見つけたとき上手くいくように、と2人でデートの練習へ向かうことになる。夏の暑さは数日ではやまず、僕はまた例の書店に足を運んでいた。
「今日は騒がしい彼女さんを連れていないんですね」
柊伊織、と書かれたネームプレートをつけた女性店員とであった。

やがてめぐり来る季節・・・
僕はもう一度恋をするのだろうか。

こんな感じです。

さて、すっかり秋になりましたねぇ……。この季節は金木犀の香りがとってもいい感じ……と毎年毎年書いてますね……。けど、そんな何てこと無い日々の中にもドラマってあるはずで、「世界の運命を賭けた恋!」とか、そういう大層なテーマでなくても、十分素敵なストーリーが出来る、という好例だったのではないでしょうか?

小市民的というのは、言い換えれば「等身大」という事でもあると思います。或る意味で色んな所にありふれているのかもしれない。けれども、だからこそ感情を入れて読む事が出来る……そういう手触りを感じましたね。

一応、二人ヒロインが居まして、昔からの幼なじみで年下の千夏、ちょっとミステリアスな年上のお姉さん伊織がヒロインとなっております。
千夏が3ルートで、伊織は2ルートで合計5ルートかな? あるんですけれども、どちらも一つのエンドを見るのに大凡1時間ちょいくらいです。多分……1時間半掛かる事はないと思います。
で、一度何かしらのエンドを見れば、既読スキップが使えますから、他のルートを見る事も楽々。合計で3時間ってところでしょうか。

このブログをご覧の方は直ぐにピンときたと思います。
クールでミステリアスな魅力溢れる伊織が、かなりピンポイントで私の好みだという事ですねw
伊織の場合、ちょっと、こう爛れた感じのエンドもあるんですが、グッドエンドは素敵ですし、何だかんだで私の好み直球ですね……。

でも、今回、所謂「幼なじみ系」のヒロインである所の千夏も、かなりいいな、と思ったのは事実です。
原因はいくつかあると思うんですが、一つは「幼なじみと云っても年下である」という事、もう一つは「主人公も幼なじみも大学生になっている」という事が大きかったかな、と思っています。
幼なじみで同じ高校で、同じクラスで、家も隣で……なんてやっていくと、流石にありきたり感はありますからねぇ……。
高校って、嘘でも一時間目から六時間目くらいまでありますからねぇ……。スケジュールというか主人公とヒロインの活動時間帯っていうのも自ずから限られてくるところがあったりします。勿論、焦点の当て方次第、ではあると思うんですけれども。

それが大学とかになると、滅茶苦茶自由度が高くなりますよね。
一人暮らしが普通になっていたり(高校生でも、何故か両親が海外に居るってケース、凄く多いですけどw)、部活じゃなくてサークルがあったり、授業出ても出なくても良かったり……。
シナリオの中でキャラを動かしたい場合、高校生よりも大学生の方が自由度が高いような気は以前からずっとしているんですが、そんなに多くないんですよねぇ。
不思議っちゃ不思議だけれども、或る意味で、「学校」というスケジュールの制限があるからこそ、作りやすいってのもあるのかも。


で、千夏の場合、当然の事ながら「幼なじみ」の恋に付きものの話題になっていくんですが、時に閉塞感すら感じてしまうような、そんな袋小路に陥らないのが、本作の良い所。
一直線でグッドエンドだけ見る事も勿論可能ですが、他のエンドを見ることで初めて分かる話題があったりして、そういう作りもいいですよね。ちなみに、千夏は3ルートの内1本がバッドエンド風味でした。

一方で、伊織さんの場合、分岐点が一箇所しかないはず……なんですが、結構最初にバッドエンドに行ってしまう人も多いのでは?w 最初、私も「まさかこの選択肢で!?」とちょっと吃驚しましたw
ただ、バッドエンドもコケティッシュな伊織さんの一面が見えるので、それはそれで美味しいんですけれどもね。



さて、気になった点、なんですが、実は「起動」するのに苦労しましたw
普通に実行ファイルと思しき.exeを叩いてもエラーが出て起動しないのですw 実は、「harukekikanata.xp3」を「krkr.eXe」にドロップしてやる、と起動します。「ファイルぶっ壊れてるじゃねーか!」ってプレイしないのは勿体ないですよ! 是非、ドラッグ&ドロップを。

ただ、これ、もうちょっと何とかならなかったのかなぁ? と思えなくもない場所です。
実はシステムに関係する所で気になった点がいくつかあって、特定のルートではバックログが効くけれども、特定のルートではバックログが効かないとか、出てくるはずがないキャラがある瞬間立ち絵で出てるとか。後者はスクリプトのミスなんですが、起動方法を含め、もうちょいそういう所、しっかり組むと、全体も締まって、作品の印象も一段と良くなるんじゃないかなと思います。

もう一個の気になった点は、やや特殊な文体だという点ですね。
いや、サラリと読めてしまう作品が多い中で、小説調の「読ませる」文体で書いている事、物凄く評価出来ますし、それが効果的な場面も多々ありました。が、やや、それがtoo muchになっている部分もあったような……。
ノベルゲーム/サウンドノベルの文体って、考えてみれば難しいですよね。
ラノベ調だけ、っていうのは面白くないですし、一方で、時には軽く読み飛ばせるような作品だって恋しくなる。適度に読みやすく、適度に「読ませる」ような……そんな文体が個人的にはベストだと思います。
ちょっとこう色々書いちゃいましたけれども、ライトなものが多い中で、本作のそれは中々良いと思いましたよ?



大体、こんな所でしょうか?
偶然出会った幼なじみから「デートのチェックをしてあげる」なんて興味を惹くイントロから始まる、小市民的、だけれども優しく等身大の素敵な恋愛作品だったと思います(イントロについてはもっと先に述べるべきでしたねw)。
やたらスケールの大きな恋愛作品では味わえない、小さいからこそ味わいのある作品を是非堪能してみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2010-10-05 20:25 | サウンドノベル | Comments(0)


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