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2010年 11月 12日

フリーサウンドノベルレビュー 『こころのかけら』

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今日の副題 「秋の夜長にサウンドノベル」

ジャンル:4人の作者による短編集
プレイ時間:合計で40~50分程度。
その他:どの話も選択肢無し、一本道。
システム:Comic Maker3

制作年:2010/9/8
容量(圧縮時):32.5MB




道玄斎です、こんばんは。
二本続けてフルサイズのレビューを書くのも、なんだか随分久しぶりな気がします。フルサイズ……と今うっかり云ってしまいましたが、実は今回取り上げる作品は短編集です。一本一本は10~15分程度の短い小粒な作品、それが4編入って一本のパッケージになっている、という体裁です。
というわけで、今回は「TOY BOX」さんの『こころのかけら』です。
良かった点

・「文章を読ませる」というタイプの作品。このタイプが最近減っているような気がして寂しかったんですw

・一本一本が短いので、気軽にテンポ良く読める。


気になった点

・ノベルゲーム/サウンドノベルとしての「便利さ」がもう少しあっても良かったかも? ツールの問題とも不可分では無さそうですw

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
雨の日に「俺」は交通事故で死んだ姉と生き写しの女性を校門の前で見かける。紫陽花の幻想的な風景がおりなす『紫陽花迷路』。ほのぼのとした空気につつまれている『留守番~一人の夜』他二編を収録しました。文章にこだわりを持つ四人のシナリオライターが送る力のこもった短編集。

こんな感じ。
って、これじゃ、最初の二本しかストーリーが分からないんですが、それはしょうがないw


今回、「文章にこだわりを持つ四人」による短編集という部分に惹かれて、ダウンロードしプレイしてみました。
最近じゃ、中々お目にかかれなくなっている(?)「立ち絵無し」の割と硬派な作品ですね。
「文章にこだわり」がある、と書かれているように、ザックリとした印象を述べさせていただければ、「ノベルゲーム/サウンドノベル」というよりは、「小説」寄りの、所謂「読ませる」作品です。

一本10~15分程度の尺で、まさに「短編集」という趣の作品でした。
一個一個の作品を取り上げて……とも思ったんですが、それは止めにして、全体を語りながら要所要所で、個々の作品をクローズアップしていきましょう。

本作の感触を上手く伝える事は困難ですが、「文芸サークルが発行した同人誌を、ノベルゲーム仕立てにしてみました」というのが、一番分かりやすいんじゃないかな?
先にも述べましたように、一本の尺も短めですから、用意周到に伏線を張り巡らせクライマックスで一気にそれを解放し、プレイヤーにとんでもない衝撃を与える! というタイプ……ではなくて、「ちょっといい話」があったり、「何てことないけど、何となく微笑ましい」作品があったり、結末がゆかしい「ドキドキするような」作品があったりと、どのシナリオも、中々面白いから侮れませんw

「ちょっといい話」は「紫陽花迷路」と題された作品ですね。
割と目にする事があるストーリー……って云ってもいいのかな? だけれども、この短さの中に良くこれだけギュッと内容を詰め込んだなぁ、と感心する部分があったり、その詰め込み方もそこまで不自然じゃなかったり、侮りがたいですw ラストシーンもちょっといい感じで、私好みでした。

個人的に一番没頭して読めたのは「僕は今日もうつだった」という一篇です。
鬱病のミステリー作家(あまり売れてない)の日常を描きながら、その日常がいつの間にかリアルミステリーの舞台と化していく、という設定でした。
オチ……というかラストこそ弱かったものの、一番ドキドキしながら読むことが出来ました。BGMもドラムのループで緊張感を出したり、と手が込んでいたんじゃないかと。

そういえば、立ち絵が無く、且つBGMも割とあっさり風味……だったかな?
一枚絵が最後にうっすら表示されるシナリオがあったりするんですが、印象としてはどれも割と地味。昨今のゲームっていったらフリーのものでも「可愛い女の子の立ち絵」は当たり前で、OPムービーすら当たり前になりつつある、という状況で、豪華さに対して、プレイヤーも段々と麻痺してきちゃっている部分があったりするんじゃないかと思う一方で、「読ませる」という事を主眼においた作品が出てきた事、嬉しく思います。

ガワが地味でもいいじゃない? というのが私の主張の一つなんですが、ガワで人目を惹きつける事が出来ると順当にDL数が伸びていく、とか兎に角手に取って貰える……という問題も実際ありますから、難しい所です。。


さて、本作は一応サウンドノベルと銘打たれており、文章だけではない、という事なんですが、もう少しサウンドノベル/ノベルゲームとしての「得意分野」を上手く利用しても良かったかな? という部分がありますねぇ。
具体的に云えば、「幽霊譚」というミステリー作品(?)があるわけですが、読者(プレイヤー)への挑戦状として、「敢えて答えは書いてません、推測してみてね」というような文言がついてます。
で、芥川龍之介の『藪の中』に似ている……とも。

この作品、そういう訳で、イントロは凄く興味を惹きますし、「よし、じゃあいっちょチャレンジしてみっか!」と意欲をかき立てられるんですが、読了後も実は良く分からないw これは私の頭の悪さが如実に表れているのかもしれませんけどw
『藪の中』って作品も、確か「発言に次ぐ発言で、事件の真相そのものが“藪の中”に隠されていく……」みたいな論文、昔見たことがあるんですが、ミステリーって、「謎が最後に解ける/分かる」からミステリーなんじゃないかなぁ? と思わなくもないw

で、誰が何を発言しているのか? が実はちょっと追っていきにくいんですよね。
こういう時こそ「ビジュアル」が使えるノベルゲームの良さが活きてくるところです。簡単な立ち絵(影絵でもいいんですよね)なり、発話者によって発言を「色分け」したりする事で、「誰が何を発言しているのか」が非常に分かりやすくなったりします。
Comic Makerというツール上の制限はあると思うのですが、もうちょい使い勝手の良いツールとかもあると思うので、そこらへん工夫してみると、ワンランク上の表現が実現出来るかも、ですね。

いや、今私も色々、代表的なノベルゲーム用のツールを一渡り弄ってみたりして、色々模索中なんですw
で、色々選定してみると、やっぱりあの二つになっちゃうんですよねぇ……。プレイヤーとしても、最も馴染みの深いアレですw ま、その話はまた今度、ということで。


何にせよ、秋の夜長の「読書」の代わりになるような、「読ませる短編作品集」でした。
たまには、こういう硬派な作品もいいものですよ。
興味があれば、是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2010-11-12 00:33 | サウンドノベル | Comments(3)
Commented by 有沢 at 2012-12-23 11:28 x
好意的な評価ありがとうございます。
お礼として、こっそりネタバレを非公開コメントとして書いておきます(笑)
Commented at 2012-12-23 13:28 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by s-kuzumi at 2012-12-31 16:47
>>有沢さん

コメント有り難うございました。
そして、ネタバレも丁寧に書いて下さり、得心がいきました。

レビューでも書いたのですが、昨今、こうした云ってしまえば「地味」な作品に脚光が当たらなくなってきているので、興味深く拝読致しました。

硬派なノベルも、私は結構好きなクチなので、是非また次の作品、リリースして下さればと思います。

それでは、失礼致します~。


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