久住女中本舗

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2010年 11月 23日

フリーサウンドノベルレビュー 『Over』

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今日の副題 「言えなかったあの一言を」

※吟醸
ジャンル:ほろ苦恋愛ノベルゲーム(?)
プレイ時間:小一時間ほど。
その他:選択肢無し、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2010/10/30
容量(圧縮時):37.2MB




道玄斎です、こんばんは。
またしてもちょっと間が開きましたが、ノベルゲームのレビューお届け致します。もういつのまにやら秋も終わり冬……なんですけれども、丁度今の季節にプレイするといい感じかも? なんて勝手に思っています。
というわけで、今回は「蓄電組」さん(でいいのかな?)の『Over』です。
良かった点

・美しい背景素材が作品にマッチしており、雰囲気たっぷりの作品になっていた。

・ちょっとほろ苦い恋愛ストーリー。こういう作品も久々ですねぇ……。


気になった点

・バックログが見にくいw

・過去と現在を行ったり来たりする、のだが、今が過去なのか現在なのか、分かりにくい部分が。

ストーリーは、ふりーむの紹介文から引用しておきましょう。
主人公の冬慈は一人、夜道を走りながら過去を振り返っていた。忘れられない記憶の中で輝きを放つ一人の女性の姿は今の彼をやさしく切り裂く…。

回想と現在を織り交ぜた、一本道サウンドノベルです。
プレイ時間は1~2時間ほどです。

こんな感じ。
ちょっと短めですけれどもね。


さて、一枚絵無し、立ち絵無し、ムービー無し、と、或る意味硬派な作品でした。
ただ、それが「地味」だとか、そういうマイナスな印象を感じさせる事がないんですよね。ちょっぴり映画風の画面のレイアウトで、それにピッタリと合うように、美しい背景素材が使用されており、作品を彩っていました。

寧ろ、こういう作品に、ちょっとアニメ調の立ち絵とかが入っちゃうと、逆に違和感を感じてしまう……というか、一気に俗っぽくなっちゃうような、そういう気がしますよ。
作品の内容も、このデザインに合っていましたし、ね。で、内容も私好み、と申しますか、かなり好きなタイプでしたので、今回は久々の吟醸です。

冬慈と香奈子という二人の関係や成長を、現在/過去をクロスさせながら見せていく……そういう作品でした。
プレイを開始すると、主人公冬慈にとってどうやら香奈子(とそれに関する出来事)は「過去」のものになっているらしい、という事が先ず明かされます。
一体、二人の出会いはどうだったのか? 何でそれが「過去」のものになってしまったのか? という辺りで、もう大分興味がそそられてしまいました。

決して派手さ、は無いんですけれども、どこか柔らかい手触りの背景素材が、ジワッと広がっていくストーリーに本当に良く合っていて、敢えて云うなら「渋い」という感じかもw
ともあれ、立ち絵や一枚絵、或いはムービーなんてものが無くても、ストーリーの良さと、そのストーリーに上手くハマる背景素材があれば良作が出来る、というお手本の一つになりそうです。


個人的に凄く本作で気に入った点は「リアリティのあるキャラクター」ですね。
主人公冬慈は、読書というか物語好きの少年で、内向的。一方、香奈子はちょっとボーイッシュな魅力があったりする女の子。

こうして見てみると、割とお決まりの登場人物、という気がしてきますが、キャラクターの性格や性質と云ったものが丁寧に描写されており、凄いリアリティがあったんですよね。
内向的で、ちょっぴり理屈っぽい所もある主人公が抱く、恋心だったり、ボーイッシュだったハズの香奈子が中学に入って、「女の子」になっていく姿に戸惑う所とか、物凄く共感出来る部分でした。

こういう云い方もアレなんですけれども、主人公も中々煮え切らないヤツでねぇw
思春期の男の子特有のグジュグジュっとした感じが、我が事のように思えてしまってw

そういえば脱線しますけれども、私も中学の時のクラスメイトが(幸いにして、私はその子に恋心なんて抱かずに済んだわけですけどw)、香奈子同様、バスケットの推薦で高校に行き、その道で大成して、確か女子の日本代表チームの選手になった……なんて事があったりします。
けど、昔を思い返すと、そんなにその子が「バスケット命!」みたいにしていた記憶って無いんですよねw 確かに「バスケ部だったよな」ってのは覚えているんですけれども、普通の女の子でした。身長、高かったけど! 

嚢中の錐とは云いますけれども、意外と、突出した才能を持つ人間でも、学校なりクラスなりの社会の中にとけ込めば、普通なんですよね。勿論、変人として有名で、そのまま変人として大成しちゃうようなヤツも時にはいるんですがw
そういう事を考えていくと、これまたいつも云ってる事ですけれど「本当の意味でのリアルと、作品としてのリアルは別物」なんですよねぇ。

現実のリアルが、作中のリアルに重なる事はあっても(というか、そういう部分でさりげなくリアリティが盛り込まれると、とてもグーです)、作中のリアルがそのまま、現実のリアルに還元出来るかっていうと、そうでもなくて。
如何に、現実のリアルをベースにしながら、フィクションとして、作品としてのリアルを盛っていって、逆に不要な部分をそぎ落としていくか、ってのは、本当に難しそうですね……。


こういう現実のリアル、作品のリアルって意味で云えば、本作はかなり「現実のリアル」な手触りがあるんですが、それが悪い意味で「生々しくない」とか、やっぱり「現実そのまま」ってのとは違うんですよね。
そこらへんに、本作の「作品としての上手さ」が感じられる気がします。


さて、一方、気になった点なんですが、先ずは瑣末な点から。
吉里吉里/KAGを使用しており、セーブやロードは問題なく出来る……んですが、何故かバックログの表示が見にくかったです。バックログそのものは利用出来るんですが、一文一文の間が凄い空白があって。

まぁ、バックログに関しては、プレイするにはさしたる支障はないのですが、「今が、過去なのか現在なのか分かりにくいう」という問題の方が、気になるわけです。
確かに、過去と現在が交差する中で、冬慈や香奈子の関係なり成長なりを描く……という事なんですが、ともすれば「あれ? 今の過去の話だったの!?」みたいな、そういう事が起こりがちです。
そこが、本作で一番惜しいとこだったかな?

過去から現在に移るとき、或いは、現在から過去に移るとき、そういうタイミングで画面のフェードアウトとかフェードインとか上手く使って「今から、時間軸が移動しますよ」ってのを示せば、こういう混乱がもう少し軽減出来た、かもしれません。


ハッピーエンド……とも言い難くて、男の身としてはちょっと苦みがあるような、そういう作品だったのですが、レベルの高い良い作品だと思いますよ。どちらかと云えば、男性にお勧めしたいですねぇ。
イラスト一杯、ポップで楽しい! ってのとはちょっと違いますが、是非、じっくりプレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2010-11-23 20:31 | Comments(2)
Commented by 薫風 at 2010-12-05 01:52 x
道玄斎様

始めまして「Over」製作者の薫風(くんぷう)です。
ご挨拶が遅れて申し訳ありません(汗

この度は本作のレビューありがとうございました!
また、気に入ってもらえたようで製作者冥利に尽きます。
吟醸まで頂いてしまい恐縮するばかりです…

おっしゃる通り粗い部分もあり、万人受けするタイプのものではありませんがユーザーの皆様には長く愛される作品であって欲しいと思っております。

反省点もふまえ次作に活かしていこうと思いますので今後とも
よろしくお願い致します。

薫風

Commented by s-kuzumi at 2010-12-06 00:10
>>薫風さん

こんばんは、初めまして。
こちらこそ、素敵な作品を有り難うございました!

云いたい事はレビューにて書いてしまったのですが、(良い意味で)ズシッと重たい作品で、私の心に残りました。

わざわざ、コメントまで頂き恐縮です。
また、宜しければブログのほう時々覗いてやって下さいませ!

それでは、失礼致します。


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