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2011年 01月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『Pain』

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道玄斎です、こんばんは。
新年一発目、ですけれども尺が短いので番外編に。本当ならば昨年のクリスマス辺りにプレイすればベスト、だったのかもしれませんが、結局正月三日になってしまいました。
というわけで、今回は「Lat」さんの『pain』です。


番外編にしている事からも分かるように、お話自体は10~15分程度で読了可能な、短編作品です。
凝った演出も、美麗な立ち絵や一枚絵も無し。或る意味で硬派な作品なのですが、流石「Lat」さん、というべきでしょうか? 前作『のべるのじかん』は、今までの作風と打って変わってギャグテイストな作品でしたが、今回は『こんな物語』を思い出させてくれるような、シンプルでありながらも強力な短編作品だったのではないかと思います。

本作は、所謂「サンドウィッチ型」ですよね。
多くの場合、現在の状況が簡潔に語られ、過去の出来事を回想していくような形でストーリーが紡がれていく。そしてまた現在の時間に戻り、作品全体が総括されていく……。
こうした、過去の時間が現在の時間にサンドウィッチされている作品を、個人的に「サンドウィッチ型」と呼び習わしていますw 詰まる所、入れ子構造って事なんですが、入れ子って書くよりも「サンドウィッチ」の方がいいかな、と思って。

今回は、麻衣という女の子の視点からストーリーが語られる事になるのですが、どうも彼女は辛い境遇にあったらしい、そして何故か今一人で居る……そういう情報が先ず最初に明かされます。
そして、そこに至るまでの経緯が、言わば「過去編」として語られる事になるわけです。

父親が死亡した事をきっかけにして、まだ中学生の麻衣は、昔に家を出て疎遠であった兄に引き取られる事に。だけれども、兄からは疎まれ、虐められ……いつしか麻衣自身も少し荒んできて……と、そんな生活になるんですよね。

この辺りの描写、結構読んでいて痛いです。
ゲームの中に限りませんけれども、単純に「嫌われる」とか「憎まれる」、そういうのは、何とか耐えていく事が出来ます。関わらないとか憎み返すとか、そういう方法もありますしw
何より、人間関係に於いて辛いのは「疎まれる」という事なんじゃないでしょうか? 所謂「無関心」とかも相当辛いような気もしますが、「存在を認めた上で、その存在そのものを煙たがる」っていうわけですから、「疎まれる」というのも、相当厳しいんじゃないか、と私なんかは思いますね。


ネタバレは避ける方向で書いていこうと思いますが、プレイしていると、ふとした描写に「おや?」と思う所がきっとあるはずです。
云ってしまえばギリギリ気づくレベルでの、か細い伏線が張られていて、それがラストでしっかりと活きてくる。そういうタイプの作品だったのではないかと思います。この手法、Latさんは本当に上手いですよね。
プレイしながら私が思ったのは、「本当にアレだったら、女衒よろしく売り飛ばすよなぁ……」とw あと、私も止めようと思って中々止められない「アレ」に関するエピソードなんかも、ちょっと気になるんじゃないかな? なんて思います。


これから麻衣がどうなるのか? どうやって生きていくのか? そういう事には一切触れずにエンディングを迎えるわけですけれども、その「敢えて語らない」事で生まれる余韻が、凄く良かったですね。この終わり方は多少、好みの問題もありそうですけれども。

願わくは、麻衣がこれから幸せになって欲しい。
そんな想いをプレイ後に抱くようになる、稀有な良作短編です。
少し、暗めだったり、痛い描写もあるのですが、是非、最後までプレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2011-01-03 17:25 | サウンドノベル


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