2011年 07月 17日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『少女の刃先のゆくえ』

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道玄斎です、こんにちは。
今日もやたら暑いですね……。噂によれば、冷房を切るよりもテレビを切った方が節電になるとかならないとか……。まぁ、私達はちょっと恐いノベルゲームで涼を取るという最終手段がありますので。。
というわけで、今回は「第三ノベル工房」さんの『少女の刃先のゆくえ』です。



先日、『仮面のセカイ』という作品をプレイしましたが、同じ作者さんの作品ですね。
私がプレイして25分くらいでしたので、番外編かな、という事でそのように。

ノベルゲームにはベクトル、というものがあります。
まぁ、もうちょっと簡略に云えば「方向性」というか。うんと単純にするならば「恋愛系」か「ホラー系」か、はたまた「ミステリー」か、と云ったような方向性ですね。
で、そうした方向性が、そのジャンル特有の「文法」と云ったようなものを生みだし、「お約束」みたいなものが出来上がっていく……と私なんかはそういう理解をしています。

例えば、「恋愛」というジャンルだったら、「ちょっとワケアリの女の子」と「やさぐれている男の子」が出会い、時に傷つき合いながらも、お互い成長していく中で、それぞれの問題を解決し、恋人同士になる……みたいなね。

或る意味、凄くおなじみな感じだと思いますが、その「お馴染み感」が出来上がるまでに、多くの作品が生み出され、好まれたものが他を淘汰して、生き延びた……と解釈すれば、意外と悪いもんじゃないと思います。
まぁ、サウンドノベル/ノベルゲームを文学と一緒にする事の是非はさておいて、大体、文学なんかも大きな視点で見ると、似たような感じですよね。

今から凡そ1000年くらい前に、『源氏物語』なる物語(かその一部)が登場して、一気に物語ブームが起こります。並んで賞される作品……と云えば『狭衣物語』というのがあるんですが、個人的にラストに不満がありますw
平安時代以降も、こうした物語のブームは密かに続いて、割とコンパクト志向になっていくんですよね。長編志向の作品の「美味しい一場面」を抜き出して「一篇の作品」として作り替えてしまう技術が確立されるんですが、半ば公然と「パクリ」までやってしまうんです。

けど、まんまパクるんじゃなくて、微弱な差異、或いは決定的な差異があったりして、そんな所に注目してみると、結構面白いもんです。
同時代の作品をパクりつつ、過去の著名な作品の、しかも有名な場面とを合成させる、なんて事までやるんですから、手が込んでいると云わざるを得ません。

けど、こうした物語ブームも室町時代くらいになると段々下火になって、御伽草子と呼ばれるような、非常にコンパクトな「読み物」みたいになっていくんですな。
ノベルゲームに於いても、段々、近年(フリーのそれでは)コンパクト志向が増えてきているので……今後は、御伽草子みたいになっちゃうのかしら? なんて思っています。

や、勿論それが悪いってわけじゃなくてね。
良くも悪くも、ブームのスピードは速い業界ですから、そうした「御伽草子化」が起きた後に、どうなるのか、個人的には凄く楽しみだったりします。
んー、やっぱり原点回帰、じゃないけれども、長編の色んな意味で大きな物語、に戻っていくのかな? という予感はあるんですけれどもね。


少しド派手に脱線しましたが、ノベルゲームにはベクトルがあって、けれども、「これはどういうジャンルに入れたらいいんだ……?」と少々迷ってしまうような、ベクトルの一大転換、が行われる事も屡々あります。
今まで嫌われていたものが、ある瞬間を境にして、好まれるものへと変貌していってしまう……という事です。顕著な例は「ツンデレ」や「ヤンデレ」でしょう。

普通に考えれば、ツンツンしている女の子なんて厭に決まってますが、そこにプラスして過剰なまでに「デレ」を持ち込んだ事で、新境地を開いたわけです。
更には、「病んでる」なんてマイナスにしか取りようのない要素すら、プラスの価値観へ変貌させる、という離れ業には驚きを禁じ得ません。


本作も、ジャンル分けが非常に難しい……独特なベクトルを持った作品だったのではないかと思います。
いや、それは『仮面のセカイ』をプレイしていた時から薄々気づいていたのですけれどもw

一見すると縦書きのライトノベルみたいな文章、なんですが、そこに描き出される世界観は、ちょっと独特なものがありますw

主人公は、友人でキモメン(太ってる)の和田と夏祭りに行く事になっていたのですが、そのキモメンの和田は何とラブレターを貰っていたんですよねぇ……。
で、差出人は加奈、という子。お祭りの日にお会いしましょう、みたいな感じで和田はうきうきとして、主人公を巻き込んでお祭り会場に行くのだけれども……。

という感じでストーリーが進んでいきます。
で、気づけば、主人公がその加奈に馬乗りにされて、ナイフを突きつけられてるじゃありませんかw しかも、和田と和田姉が一緒に居る写真を見せてきて「浮気をしている……」とか何とかいい放ちます。

彼女の論理に随えば、彼女が和田を好きになった時点で相思相愛が決定しており、他の女と関わることは“浮気”となるんだそうな……。
ここにきて、「うわっ、ヤンデレか!」と吃驚しましたw なんか予想していない角度から予想外のダメージを負った、みたいなw

そして、加奈の中では「もう心中するしかない」と決定しており、主人公は(一応)友人の和田の為、一働きする事になるのだが……。


こうやって書いていても、結構各イベントが突発的に起こっているような気がするんですが、プレイしていると、そこまで唐突感が無いのが凄い。
合間合間に出てくる、クリッカブル用語解説も、なんか作品に不思議な味わいを付与していますしw

そういえば、割と横長の画面なんですが、目一杯テキストが表示されるわけでもないので、通常のサイズでもいいんじゃないかなぁ……なんてチラッと思いましたが、どうでしょうね?


終わり方も、中々面白いものでしたよ。
尺が短いですから、超感動する! とかではないのですが、少しだけヒヤリとするようなエンドで、こういうの好きな人、多いと思います。あと、ラストでちょっと笑える演出が入りますw ああいう音声素材、いいかもしれませんねw

にしても、女って恐いねぇ……。
だから、女は信用ならねぇんだ……。多分、私は作者さんが意図していなかったであろう所で、勝手に怖がっているわけですがw


短編のホラーというかヤンデレというか、何とも評しがたい不思議な魅力を持った作品です。
テレビの電力が大きいならパソコンでホラーをすればいいじゃない、というわけで、是非、気になった方は遊んでみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2011-07-17 16:27 | サウンドノベル | Comments(0)


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