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2011年 12月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 『機械仕掛けのアリス』

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今日の副題 「リアル大学生のSFノベル」

ジャンル:新感覚百合グルメアドベンチャー(全年齢対象)
プレイ時間:2時間ちょい。
その他:選択肢なし、一本道。但し、二周目がある。
システム:NScripter

制作年:?/?/?
容量(圧縮時):150MB




道玄斎です、こんばんは。
何か、最近連日ゲームをプレイしているわけですが、ここ三回ほど、昔懐かしの名作を持ってきました。けれども新作もプレイしたいですよね?
というわけで、今回は「MIS.W」さんの『機械仕掛けのアリス』です。『とのしい』のサークルさんですよね。
良かった点

・現実の地名、店名などを表記して、リアリティある学生生活を描いている。

・作中の授業内容が、シナリオの上でも重要な役割を果たしており、巧みな作り。

・殆ど全ての素材を自分たちで賄っている。凄い!


気になった点

・内輪しか分からないようなネタがある。

・凝った表記が多すぎて、却って読みづらくなっている。

・百合風味はやや乏しく、又、ラストが性急で少し分かりにくい。

今日は、珍しく、良かった点、気になった点、三つづつ挙げてみました。たまには、こういうのもいいかな。ちなみに、製作年は全て「?」にしてますが、最近の作品である事は間違いないと思います。

さて、ストーリーですが、ベクターを見てみると「恋とグルメのどきどきあどべんちゃ~」なんてやる気があるのか無いのか分からない説明だったので、私が纏めておきましょうw
坪内遥香は早稲田大学文学部の学生。幼なじみの村井早苗も文学部東洋哲学科に所属し、一緒にキャンパスライフを楽しんでいる。
彼女達の後輩、草原智佳や、天才少女にして客員准教授の有栖川鏡を巻き込みながら、青春を謳歌していたハズが、ちょっとした誤解が元で早苗が姿を消してしまう。早苗はどこに行ってしまったのか? 遥香が見る夢とは? 様々な謎を残しながら展開する、SFチック百合アドベンチャー。

と、何かいつにも増して、紹介文にも気合いが入っている気がするんですが、気のせいかな。
ま、大体大凡のストーリーは、こんな感じです。余談ですが、主人公、坪内遥香の名前は、恐らく、坪内逍遙から採っているんでしょうね。早苗は……高田早苗から、かなぁ……?


作品の出だしが「戸山カフェテリア」云々だったので、のけぞりました。
そう、何を隠そう、私の青春真っ盛りだった場所が、本作の舞台だったのです。ちなみに「戸山カフェテリア」なんてカッコつけた呼び方をする人は皆無で、実際には、文学部にあるカフェなので「文カフェ」と呼び習わしているハズです。

大学名もモロに出てますし、駅名、お店の名前などは、全て実名表記です。
それが、リアリティのあるキャンパスライフを演出していて中々いいな、と思いましたね。
プレイヤーには分からないかもしれない。けれども、「そういう場所がある」「そういうお店がある」という、画面越しでの世界にリアリティが確保されている点、評価すべきでしょう。

ただ、これは気になった点と表裏一体です。
これをプレイする人の中で一体何人が、文学部の横にある「メーヤウ」のカレーの辛さを知っているというのか?w その下にあるうどん屋の忍者うどんだってそう。

これは、作者さん(達)に向けて書きますけれども(見てくれるかな?)、「メーヤウ」のカレーは☆でランク付けされてますよね? 常人なら☆三つでも耐え難いハズです。食べてる時はまだいいんです。ラッシーなんかと一緒に食べれば少しは辛さも薄れるしね。けど、食べ終わった後、に本当の地獄が始まります。いつまでも舌を焼き続けるあの辛さ……。
けれども、☆五つでも耐える裏技があるんですよ。それは「ホールズ」。あのスーッとするキャンディーです。あれの一番強力なのを食後に舐める! そうすると、「メーヤウ」のカレーに耐えきる事が出来ます。是非おためしあれ。
これは、何を隠そう私が発明し、当時、文学部に於いて絶大な支持を得た「メーヤウ攻略法」ですw

……と、私もかなり内輪向けの話をしてしまいましたが……確かに実在の地名や店名を出す事で、良い具合にリアリティが出てきます。が、それがどんどん局所的なネタになってくると、事情を知らないプレイヤーは置いてけぼりを食らってしまいます。
ここら辺のバランスは難しい所ではあるのですが、もうちょい、一般プレイヤーが分かりやすく、サラリと流せるレベルでのネタの方がベターでしょうね。


実は、本作ループ物でした。
一周目プレイした時は何がなんだか良く分かりません。早苗はどこに行ってしまったのか? 智佳が伝えようとしていたメッセージは何だったのか? といったクリティカルな部分は伏せられています。
そして、二周目以降、謎が解き明かされていくわけですが、これは、ループ物としてはオーソドックスな作りでしょう。

でも、作品がその謎だけに焦点化される事なく、遥香の日常の授業風景や、レポート提出といった「大学生らしさ」も併せて描写されます。
謎と日常が、上手に共存していきながらも、ストーリーは謎の解明に向かっていく。細かい所かもしれませんが、ここも中々良い所ですよね。
ともすれば、急ぎ足で謎だけにスポットが当たってしまい、その作品を支えるべき日常がおざなりになってしまう事がありますから。


又、二周目以降、謎の核心に迫る所で、遥香が受講している准教授有栖川の授業内容や、雑談が活きてくる、というのも巧みでした。
量子の話や、並行世界、つまりパラレルワールドにまつわる話、或いは黄泉戸喫(よもつへぐい。アッチの世界のものを食べたら、コッチの世界に戻れない、ってヤツです)に関する講義ですね。一周目は何だか難解な話になったなぁ……と思うのですが、後々ちゃんとストーリーに上手に関わってくるのでご安心を。

こうした並行世界を描いた作品で、古典的なものを挙げれば、ディックの『高い城の男』でしょうかね。
これは、第二次世界大戦で、ドイツと日本が勝利した世界が舞台。ですが、一方で夢の世界のようなものがあり、そこでは、連合国が勝利する世界という、もう一つの世界のあり方がチラチラ提示されていきます。
本作も亦、遥香の夢によって、もう一つの並行世界をうっすら知覚する、というわけで、ちょっと近い部分があるかな? と思いました。

ちなみに、先ほどから名前を出している有栖川は、18歳で客員准教授、という地位にあるわけで、仲間内では「アリス」と呼ばれています。タイトルと併せて考えてみれば、かなり重要なポジションに居る事は分かるのですが、最後まで見てみると、何となく薄味だったのかな……。

そこはラストがやや分かりにくい、という所とも関係していそうです。
二周目、大凡ストーリー上の謎は解けるのですが、釈然としない部分も残っています。何故、早苗はソッチの世界に行く事が出来たのか? 又、何故、その後、遥香のみがソッチの世界に行く事が可能で、有栖川には不可能だったのか? 或いは何故、智佳はその謎を解き、解決方法まで提示することが出来たのか? と云った部分です。そこは、やっぱり気になりましたね。

もう一点、挙げるのならば、凝った文章故、漢字表記が多い為、読みづらい部分、又誤字が多々ある、という事。
「しかし」という言葉も「然し」になってしまいますし、「しかも」は「而も」に、「いたずらに」は「徒に」と、表記されます。が、やっぱりこういう所は、漢字を開いた方がいいですよね(まぁ、私もこのブログで変な字使うんですけれどもね……)。



大体……こんな所かな。
今日はちょっと辛口になってしまいましたが、イラストは綺麗なものですし(可愛いのもある)、殆ど全ての素材を自前で調達している点、やっぱり凄いと思います(BGMも自作だ)。
並行世界、というSF的な要素も入っていますし、『とのしい』シリーズに近い手触りをやっぱり感じます。
『とのしい』を楽しめた方なら十分楽しめる力作だと思いますよ。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2011-12-04 19:51 | サウンドノベル | Comments(0)


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