2011年 12月 24日

フリーサウンドノベルレビュー 『君と再会した日』

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今日の副題 「大人が泣ける感動ノベル」

※大吟醸
ジャンル:同窓会系感動ノベルゲーム(?)
プレイ時間:30分程度
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:2011/12/21
容量(圧縮時):7.10MB




道玄斎です、こんばんは。
ちょい間が空いてしまいましたが、ノベルゲームのレビューをお届け致します。何となく年末になると新作が出てくるような……そんな作者さんの最新作です。
というわけで、今回は「九州壇氏のノベル工房」さんの『君と再会した日』です。
良かった点

・30分の中に凝縮された物語。密度が濃いです。

・伏線の使い方が巧みで、ハイレベルな作り、構成になっていた。


気になった点

・若干、白々しい所がある。

・プレイヤーの年齢が高めの方が、楽しめるかもしれない。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
ひどく寒い冬の日。
僕は、生まれた街へ向かった。
彼女に会えることを願って。
  
社会人が主人公の同窓会系(?)ノベルです。
プレイ時間は30分ほどの予定です。

こんな感じ。



いつものように、少しストーリーを補足しながら、話を進めていきましょう。

主人公は、小学校の同窓会に出席する為、故郷に戻ります。
そして、自分に星座の事、星の神話の話をしてくれた宮田さんと会う事を期待しており……という流れで本作はスタートします。

九州壇氏さんの作品は何作もプレイしていますが、新作がリリースされる度に新しい切り口を見せてくれたり、内容的にも或いは文章の運び方もどんどんと巧みになっている印象がありますね。

本作はついに満を持しての大吟醸。
「地味だけど丁寧な作品」を目指して、との事でしたが、十分丁寧さが見て取れる、良い作品でした。地味というのは恐らく、「立ち絵、一枚絵が無い」くらいの意味でしょう。しかし、そうした意味の地味であっても、丁寧に作れば、それはプレイヤーに必ず伝わりますし、十分名作たり得るのです。

星という新しい世界を教えてくれた、自分と同じちょっと内気な少女、宮田さんと自分。いつのまにか自然消滅してしまった関係ですが、主人公はいつまでも彼女の事を覚えおり、心のどこかでいつも引っかかっていた事示されます。
こういう感情は、男性ならばピンと来ると思うのですが、女性には分かりにくいかもしれませんね。基本的に男性の方が、過去の記憶や思い出を大切にする傾向があるのに対し、女性はその瞬間瞬間を大切にするようです。

実際に、作中の同窓会で、変わってしまった彼女を見て、どうにもやるせなくなってしまう主人公が描かれますから。主人公だけが、彼女と確かに共有していた時間を後生大事に抱えており、相手の方はそんな事をすっかりと忘れた体でいる。
そこに、どうしても感じてしまう苛立ち。女性だったら「そんな昔の事を持ち出されても……」なんて思ってしまうんでしょうね。


さて、本作、実はクリティカルな部分は、冒頭5分くらいで分かっていました。
ついつい穿った見方をして、「これはきっと、○○になっているパターンだぞ」なんて考えてしまうんですよね。
けれども、本作の凄く巧みな点は、伏線の張り方でして、冒頭でちらりと示される新聞記事が後々シッカリ活きてきて、「あれ? このパターンじゃなかったのか?」とミスリーディングまでさせてしまう、という所です。

これは本当にやられましたね。
主人公も、そしてプレイヤーである私も少し落ち込んでしまうような場面。そこで、限りなく鮮やかに伏線が活きてきて、かなり吃驚しました。
けれども、そこは同時に、本来予想していた通りの結果が示されて、うなだれてしまう所、でもあります。

気になった点ですが、ラスト近くで、「何故そうなったのか?」「何でそういう噂が流れたのか?」という謎が出てくる所があります。
しかし、そこまでプレイすれば、プレイヤーはその「何故」が分かっているはずなんです。
にも関わらず、作中では、主人公、そして同級生の井上さんの会話が続き、謎を解いていく場面が描写され、少し白々しい感じがしましたね。焦れったいと云う方が適切かもしれません。
主人公はすぐにピンと来て欲しかった、という事の裏返しなのですが。

もう一つは、これを入れるのはどうかな、という気がしないでもないですが、多分、同窓会などを経験している少し年齢高めのノベルゲーマーの方が楽しめるのではないか、と思います。
同窓会に行くと、元気だったヤツが病気で死んだ、なんて話があったり、ワールドワイドで活躍しているヤツがいたり、悲喜交々の情報が入ってきます。
そういう雰囲気を体験していると、多分、より一層作品に親しみや、感情移入が出来ると思いますよ。

又、最後までプレイすれば、作品のタイトルもちょっと一ひねり加えてある事も気づくはずです。
なるほど、そういう事か、と思わせてくれるようなタイトルワークで、素直なタイトルに見せかけて実は奥が深いものになっていました。


これは蛇足かもしれませんが、感動を演出する、っていうのはノベルゲームに於いて大事なファクターで、それ故、色々な方法が試行錯誤されてきました。
最近まで良く目にした「ヒロイン殺し」なんていうのは、その最たるものです。感動を演出する為に「ヒロインの死」を利用する。
これも、原初的な段階では、「描きたいモノ」の延長線に、必然性をもった形で「死」が存在していたはずなのですが、次第にそうしたコンテクストが無視されて、短絡的に「感動→ヒロインの死」という図式が出来てしまったような感触があります。

又、これも以前書きましたが、感動を演出する為の方法として、「宇宙や自然などの“大きなモノ”」を使う、という方法があります。
本作も亦、「星」「星空」というやはり、大きなモノを利用しているのですが、そこには、「感動させる為に利用する」というあざとさがありません。
ストーリーの中の必然として、そして主人公とヒロインを繋ぐかすがいとして、「星」「星空」が存在しているわけで、そこにいやらしさを感じる事は多分無いでしょう。

こうした、ノベルゲームに於ける感動と、この作品、については、作者さんが後書きにて、お書きになっています。
それを読めば、最後に何で私が、感動の話を持ちだしたのか、が分かると思います。そして、同時に作者さんが如何に真摯に作品に向き合っているか、その中で必然としてこの物語が生まれてきた事、理解出来ると思いますよ。


確かに立ち絵はありませんし、尺も短めの「地味」な作品です。
しかし、その30分の中にあっと驚く仕掛けがあり、思わず悲しくなったりする場面や、ジワッと来てしまう場面、そして最後まで読み終えて得心がいくタイトルワーク、等の様々な要素がギッシリ詰まっています。

ちょっと、こうした地味だけれども、心に深く沈殿していくタイプの作品、最近ではお目にかかれなくなってきていますね。
なので、少し甘いかな? と思わないでもないのですが、今回は大吟醸で。
短い作品なので、是非、多くの方にプレイして頂きたいと思います。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2011-12-24 19:03 | サウンドノベル


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