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2012年 01月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 『EDELWEISS』

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今日の副題 「Small and white,Clean and bright」

ジャンル:戦争(反戦?)ノベルゲーム
プレイ時間:2時間ほど
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2011/?/?
容量(圧縮時):112MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は新年一発目のノベルゲームレビュー。にも関わらず、若干内容的に重たい作品をチョイスしてしまいました。
というわけで、今回は「幻創映画館」さんの『EDELWEISS』です。
良かった点

・画面の広さを有効に使い、映画を見ているような気分になる。

・ボイスの使い方が物凄く巧み。


気になった点

・前半部、トラウマになりかねない重たい描写が。

・全体的な雰囲気が暗く、重たい。

ストーリーはサイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。



さて、最初に、内容的に重たいと書きましたが、本作の舞台はドイツ(と思われる)を舞台にした戦争物です。
戦況が悪化し、主人公やその友人達は少年兵として徴集されるのですが、砲撃に遭い、散り散りに逃げる事に。その際、主人公は脚を撃たれて倒れてしまいます。

主人公ギュンター(名前もそうですが、本作の内容的にもギュンター・グラスを想起させますね)は、森の中、半分倒壊した家の中で目を覚ますわけですが、その家の庭には無数の簡素な十字架が刺さっており、そこに花を手向ける一人の少女がいて……という感じでストーリーが進んでいきます。

前作『明けない夜が来る前に』では、本作でも採用されているワイド画面があまり用を為している、とは云えなかったのですが、今回はそのワイドさを利用して、まるで映画を見ているような感触を与えてくれます。
サークル名も「幻創映画館」という事ですから、やはり「映画」を少し意識した作りになっているのでしょうね。
テキストも、映画の字幕のような形で示されており、スタイルを見ればまさに映画そのもの、です。

私が本作で面白いな、と思った点は「森」に対する主人公の意識の変化です。
前半部では、主人公(達)は森を薄気味の悪いもの、魔女が住んでいるもの、という捉え方をしているんですよね。
しかし、謎の少女との出会いから、主人公の森観が変化していきます。
自然を虫を、そして動物を分け隔て無く黙々と弔い続け、慈しむ彼女の姿から、主人公は、その生き方に感化されて「森の恵みを受け、自然と供に生きる」という考えを持つに至ります。

実は、森を薄気味の悪いもの、恐いものと見る見方は、非常にヨーロッパ的なんです。
グリム童話なんかを見ても、必ず、森には人ではないもの――悪魔や妖精など――が住んでおり、常識では考えられない事が起こる場所、として定位されていますよね。
悪魔や妖怪の類でなくとも、森はアウトロー(山賊とか)が住んでいる場所でもあります。例えば、シャーウッドの森には、ロビン・フッドというアウトローが住んで、体制側を苦しめます。

一方、森にある種神聖なものを感じ、そこから恵みを受け、共存していこう、というあり方は日本的ですね。
屋久島の原生林なんかは、もう畏敬の念すら出てくる訳です。そこまで極端でなくとも「鎮守の森」というのは、日本各地にあります。
なので、作中で、ヨーロッパ的な森観から、日本的な森観に移行した際、非常に納得がいくのです。慣れているのはそうした森観、ですからね。
ま、これは蛇足ですね。


そんな所に、私は微かな面白さを見て取ったのですが、気になる点としては、全体のムードが何と云っても暗い事です。前半部にはトラウマになりかねない事件も起こります。
まぁ、戦争、そして或る意味敗残兵の主人公を描いた作品ですから、或る程度は仕方ないにせよ、ヒロインの女の子(名前はありません)は一切発話を行いません。
常に「…………」で、動作も緩慢で、感情を顕わにしません。

同じようにヒロインの発話が「…………」となっていた作品には『あまやどり』がありました。
しかし、ヒロインの澪は、明確な意思表示をするので、そこに実際の言葉を伴った発話がなくとも、寂しさや物足りなさを感じる事はありませんでした。

なので、中盤くらいから、かなり暗いムードで且つ、ヒロインが一言も喋らないので少しダレる部分があるかもしれません。
ただ、これは良い点と表裏一体で、限界ギリギリまで抑えられたヒロインの発話、が最後の方で物凄く効果的に活きてくるのです。
一度、作品を読了し、もう一度最初から読んでみると、ボイスの使い方の巧さ、に驚くと思います。ボイスはほんの限られた場面でしか使用されないのですが、だからこそ、一つ一つの発話がズシンと響いてくる。かなり効果的なボイスの使い方でした。
又、声そのものも、清廉な少女を演じるに足る、とても良いものだった、と付言しておきます。


本作の大きな特徴は、強烈なメッセージ性がある、という点でしょう。
メッセージ性が強いと、そのメッセージに共感出来ない人は、ちょっと置いていかれてしまう部分がある反面、そのメッセージが響く人には強烈な印象を残します。

何となく、メッセージ性が無く当たり障りの無い作品、より、多少のクセが存在している作品の方がフリーのノベルゲームらしい、と感じるのですが、どうでしょうか?


大体、こんなところでしょうか。
サンドウィッチ型の作品で、ストーリーそのものは、あまり起伏がないものの、色々な意味でインパクトを感じさせる作品です。
少し重たいですが、プレイしてみる価値はあると思いますよ。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-01-02 19:57 | サウンドノベル | Comments(0)


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