2012年 03月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 番外編 『手紙』

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道玄斎です、こんにちは。
今日は、コメント欄にてお勧めして頂いた作品のご紹介。とはいえ、私も昔のYuuki! Novelのヴァージョンでプレイしていたりします。なので、NScripter版を使っての再プレイという事になりますね。
というわけで、今回は「P.o.l.c.」さんの『手紙』です。



この作品、初版がYuuki! Novel製で、2005年にリリースされています。
今から……7年前ですね。今回プレイしたNScripter版との違いは、まさにツールの違いだけであって、シナリオやグラフィック、といった面は変更がないようです。

それはともかく、この移り変わりの激しいノベルゲームの世界で、7年も作品を作り続ける(P.o.l.c.のわたるさんから、何やらシナリオを書いているとの事、最近伺いました)という事、中々出来る事ではありません。

本作も亦、ノベルゲームの世界に於いて、一つの古典とも云える作品なわけですけれども、2005年前後にも多くの名作があり、古典と化してきました。
けれども、単発でのリリースが多かったですね。良い作品が生み出される。けれども、そのまま作者さんはノベルゲームの世界からフェードアウトしていってしまう。

継続して作品を作り続ける。
そして、その一つ一つの作品に、力を込める。
これは本当に大変な事だ思います。その始発点とも云えるのが本作『手紙』です。


大分前置きが長くなってしまいましたね。
プレイ時間は凡そ、一ルート(選択肢はあれど、実質一本道)20分ちょい、といったところ。
かなり短い作品です。けれども、そこには凝縮された内容があるので、満足感が非常に高いのです。

昨今のノベルゲームを見渡してみれば、「長いのに薄味」、或いは「長く、且つ全体的にコッテリ」といった作品が多く見受けられるのですが、私なんかは、こうした「短くてもギュッと」というタイプの方が好みです。
勿論、長い作品には、長い作品なりの良さや仕掛け、があるものなんですけれどもね。

こういう作品はネタバレをしない方が良いので、所々ボカしながら書いていこうと思います。
主人公渡辺貴宏が、一枚の謎めいた、そして深みを感じさせる手紙を携え、帰郷する所から物語は始まります。

この作品のファンタジックな部分は、正直割とありがちなもので、且つ性急な印象があるのですが、そこは短編ということで、目をつむる、というのも一つの享受の仕方かなぁ、なんて思ったりもしますね。
まぁ、あまりに主人公がファンタジックな仕掛けを簡単に受け止めてしまえる辺りが、私には気になったりします。もう少し、尺が伸びてもいいから、主人公の戸惑いなんかを描いてやっても良かったかな、という事ですね。
ともあれ、帰郷とファンタジックな出来事、過去と現在が上手く繋がる形でストーリーが展開されていきます。

一応選択肢はあるのですが、どれを選んでも最終的には、一つの物語に収斂してしまうので、選択肢に対してナーバスになる必要はないでしょう。しかも、「これが本筋!」というのは、すぐに分かるはずなので。


本作の何より光っていた部分は、タイトルにある「手紙」の存在と、その使い方です。
冒頭部で示される、謎めいた手紙、本作は「この手紙の意味を探る物語」と云えるのかもしれません。
冒頭で示された手紙の存在は、中盤少し影を潜めてしまいます。が、後半になってまた、その手紙がグッと作中で活きてきて、「冒頭部での手紙はこういう事だったのか……」と納得させるものになっている。20分と少しの尺の中で、巧みにストーリーが構成されているからこそ、の演出でしょう。

ところで、今回スクリーンショットを撮る場所に、相当悩まされました。
悩んだ挙げ句、『手紙』だから手紙を撮ろう! と冒頭部の手紙を撮ってきました。他の部分を撮る、というのも一案なのですが、何しろ立ち絵も一枚絵もない作品なので、それだったらいっそ、タイトルに沿って……というわけです。


テーマ、そしてメッセージという意味では、実はこれも亦ありがちです。
家族、というものを再確認していく、と簡単に纏めてしまえますから。
が、先にも述べました様に、「手紙」という芯が一本入った事により、ストーリーに深みと奥行きが加わっています。


仕掛け、或いはテーマ、メッセージという意味でインパクトはさほどありません。
ですが、丁寧に作られている事がハッキリと分かる文章で、それだけで、作品はグンと質が良くなるのです。

凝った文体や言い回し、或いは選択肢分岐。
それらが上手く作品にハマれば、その効果は大きいと思います。
でも、地味ではあるけれども、分かりやすく丁寧に文章を綴る。たったそれだけで、地味な作品も光り輝いてくるのです。まぁ、本作の場合、ギャグっぽい選択肢もあるっちゃあるんですがw



云ってしまえば、地味な作品です。
ですが、その地味な雰囲気と作品全体を包み込む、しんみりとした情趣がマッチして、感動出来る良い作品になっていたと思います。

かなり有名な作品で、P.o.l.c.さんの「感動作品」の原点とも云えるものです。
まだプレイしていない、という方がいらしたら(ここを見ている人はプレイしてます、よね?)是非プレイしてみて下さい。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2012-03-20 12:56 | サウンドノベル | Comments(0)


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