久住女中本舗

kuzumi.exblog.jp
ブログトップ
2012年 11月 17日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.59 ノベルゲーム制作入門其の5

道玄斎です、こんにちは。
今日は、ノベルゲーム制作入門の続きです。



■前回の補講

前回は、作品を貫く「軸」を作ろう、という話をしました。
その作品を端的に言い表せるかどうか、です。全部が全部じゃありませんけど、良い作品は大体、作品内容を一言で言い表せたりします。
こうした軸があれば、作品が展開していっても、内容はブレずに一本筋が通ったものになるはずです。

又、古式ゆかしい伝統に則って、「起承転結」スタイルをお勧め(?)しておきました。
大体テキスト分量100kbでプレイ時間が一時間と云われていますから、バランス良く起承転結にkbを割り振ってやればいい事になります。

起承転結なんて厭だ! って方は、「序破急」なんて考え方でもいいかもしれませんね。
起承転結が四段階なのに対して、序破急は三段階です。短い作品なんかの場合は、こちらが向いている事もあるでしょう。そこらへんは作品内容と相談して臨機応変にやってみて下さい。



■リアリティを出そう

課題作品として挙げておいた『Ghost Write』ですけれども、そこそこリアリティが出てきたのではないかと思います。

ゴーストライターとしての生活、下町の風情なんかですけれども、これは正に、作者の実体験が元になっている為に、リアリティが出ているんですよね。自分の経験、見聞はドンドン作品に取り込んじゃうのが良いと思います。勿論、作品の本筋そのものを邪魔しない程度に、ですがw

ただ、『Ghost Write』に対して、こういう感想があったらしいのです。曰く「ヒロイン由華が(年齢、学年に比して)幼すぎるのではないか?」と。これは中々考えさせられる指摘ですよ。

というのも、作者は、実際の中学生に取材して、由華というヒロインを創り上げているから、です。
複数の中学三年生に取材した上で、キャラクターを作ったのに、「幼いのではないか?」と云われてしまう。これは一体、どういう事なのか、と。

実は、これ、「実際のリアリティと“ノベルゲームとしてのリアリティ”」を混同してしまったから起きた悲劇です。
現実にあるものをそのまま描写すれば、確かにリアリティは出るでしょう。けれども、それが「ノベルゲームの中で活きるリアリティ」とイコールか、と云ったら多分、違います。
「ノベルゲームとしてのリアリティ」を出す為には、ある種の加工が必要になるわけですね。

実際の所、中学三年生っていったら、由華くらいの幼さなんです(勿論、個人差はありますけれどもw)。
けれども、例えば、ライトノベルで中学生が出てきたとして、あの幼さだったら違和感があるでしょう? そこにはデフォルメとか、キャラクターの個性付けが為されている事が殆どです。
よって、由華の年齢と、描写に関する疑問は、二つの問題を提起している事になります。
一つは、現実のリアリティとゲーム内でのリアリティとの齟齬。そして、キャラクター作りの重要性です。

確かに、由華は、具体的にイメージのしにくいキャラクターです。ヒロインなのに。立ち絵とかがあれば、まだイメージがし易いような気はしますが、それは又別のお話ですね。
由華の容姿や性格に関しては、前半から結構描写されているのですが、その印象は薄いんですよね。これは現実のリアリティを追求した結果、「キャラが薄く」なってしまったせいでしょうね。やはり、キャラクターというのは魅力を持っていないといけないわけで、そこには、ある種の「性格付け」というか「個性付け」が必要になるんじゃないかな、と思っています。

ある種の食べ物に異常なまでに執着を見せる……なんてのは、もう手垢にまみれた個性の付け方ですけれども、そうでなくても、もう少し、由華の場合、何とかならなかったのか、とw リアリティと共存出来る形での個性の付け方も多分、あったはずです。


で……なんで、こんなリアリティの話をしているのか、と云えば、「最後の最後に大嘘を吐く」為です。
社会人(?)と中学生の女の子の恋愛が成立する、なんて大嘘でしょう? けど、一応……『Ghost Write』は(由華の個性が乏しいとはいへ)、オーソドックスな恋愛ノベルゲームの体を成してはいます。
それは、その他の部分、ゴーストライト業や、下町のリアリティが成立していたお陰です。下町のリアリティの方は、由華と比べて、割とデフォルメされていて、分かりやすい形になっていますが。

以前、ある作品をプレイした時の事なんですが、こういう事があったんです。
それは、「或る場所に行く為に、経由する場所がデタラメ」だという事。私は、その場所の土地勘というかそういうのがあるので分かったのですが、「絶対に、そういう順番じゃ到達しない仕方」で、目的地に到達しちゃうんですよ。
その作品は、なんか、割とそういう所が杜撰で、かなりの部分が想像で書かれているのが分かってしまったんです。そして、最後の最後の盛り上がりで「大嘘」を吐くわけですけれども、それ以前に嘘(=非リアリティ)が多すぎて、何か興ざめしてしまったわけです。

最後の最後で、「これは現実にはあり得ないだろう!」という様なウルトラCを決める為に、それ以前のリアリティがシッカリしている必要があるわけですね。そうでないと、何だかガタガタな作品になってしまいますから。
どうでしょう? 例えば……学園恋愛モノがあったとして、学校生活そのものにリアリティが無かったら、肝心の恋愛の部分で感情移入なり感動なり出来ないんじゃないでしょうか?

どういう作品であれ、最後の方で、大きな盛り上がりがありますよね。
そこを指して「大嘘」と云っているわけですけど、そこをバシッと決める為、作品の土台を強固なものにしておく。

故に、リアリティが大事だと思うのですよ。
そして、剥きだしのリアリティではなく、ゲームらしいリアリティに加工してやる必要を感じるのです。加工の仕方としては、デフォルメして分かりやすい形で提示するとか、個性を付けてやるとか色々ありましょう。そこらへんは色々試行錯誤してみて下さい。
ただ、キャラクターに関しては、本当にリアルな人間を描くと味気なくなっちゃうんじゃないかな? という気はしますね。リアルさに加えて個性を付けてやる、抵抗があるかもしれませんが「ああ、こういうタイプの子ね」と分かるような、そのくらいの分かりやすさがあっても場合によっては良いんじゃないかと思います。




今日は、長くなったので、ここらへんにしておきましょうか。
ここに書いた事が絶対解ではないので、頭の片隅にでも置いておいてもらって、色々試してみて下さい。何度も云ってますけれども、経験値を上げる最良の方法は、「兎にも角にも、一本ゲームを作る」事ですから。



それでは、また。
[PR]

by s-kuzumi | 2012-11-17 15:39 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by まっどべあ at 2012-11-20 00:15 x
昨今の創作にリアリティがない原因って
90年代頃を境に作品から季節感が消え失せたことだと思います。
365日、1年を通して何時やっても不満がないように季節感のない作品が増えましたが、
それに引っ張られるように時事ネタを使った作品も消えていきました。

なのでリアリティを出したいなら
季節を意識する事で無意識にリアリティも意識するんじゃないかなと思います。
Commented by 白玉 at 2012-11-20 23:41 x
> 「ヒロイン由華が(年齢、学年に比して)幼すぎるのではないか?」

なんとなく覚えがあって確認してみたら、自分が書いてました。
(「ghost write 幼く」で検索すると先頭に出てくる恥ずかしさ。作者様が見たのがこれかどうかは分かりませんが……)

このくらいの年齢って子供扱いされるのを嫌がるので、感情や態度から幼く感じられても言動から伝わってくることは少ないかなあ、って思ったんですよね。
でも本作のように、いろんな大人に囲まれて子供であることを認められて育ったなら、自己表現も素直になれるのかもしれません。


<< フリーサウンドノベルレビュー ...      なんてことない日々之雑記vol... >>