2013年 05月 19日

フリーサウンドノベルレビュー 『無限夜行』

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今日の副題 「ノスタルジックな雰囲気がたまりません」

ジャンル:不思議な列車と子どもたちの物語
プレイ時間:~二時間
その他:選択肢無し、一本道ノベル。
システム:Live Maker

制作年:2010/8/13(var.1.00)
容量(圧縮時):77.7MB




道玄斎です、こんにちは。
今日は、名前だけは以前から知っていた作品のご紹介。本当はもう少し早くプレイしたかったのですが、色々なタイミングの問題で、延び延びになってしまっていました。
というわけで、今回は「くらやみ横町」さんの『無限夜行』です。
良かった点

・ちょっとノスタルジックな気分に浸れる、温かみのあるイラスト。

・雰囲気のある世界観。


気になった点

・幻想的で美しいが、ちょっと消化不良のラスト。

ストーリーは、サイトへのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。


以前から、独特の雰囲気を持った作品として、一部マニアには有名な作品なのですが、プレイするのが遅くなってしまいました。
スクリーンショットを見て頂ければ、その雰囲気の一端を知る事は容易でしょう。昨今の商業/フリーを問わず、流行している絵柄とは全く異なるもので、手書き感のある温かみのあるイラストで、作品内容に良く合ったものになっていました。

ストーリーとしては、主人公悠太が、兄と共に田舎の祖父母の家に行く為に、列車に乗り込むわけですが、乗ってしまった電車は、謎の列車「無限夜行」。更に、切符も無くし、記憶を失いかけながら無限夜行での旅を続けていく……というファンタジー色のあるものになっています。

この無限夜行という列車(鉄道)の雰囲気が、レトロ感たっぷりでいい感じなんですよ。
列車の雰囲気、そして列車から見える風景の雰囲気、更に、途中で立ち寄る事となる市場がある街の雰囲気。そうした作品を包み込む世界の雰囲気が、とっても素敵で、この作品の大きな特徴の一つとなっています。
個人的に好きだったのは、市場のある街(烏ノ街)ですね。雑多なアジアの街の様な趣で、賑やかで食べ物の香りが充満する表通りと、ドンドン細く入り組んでいく怪しげな裏通りが同居する、そんな街です。
丁度作品の中盤くらいに、この街が出てくるわけで、作品の良いアクセントにもなっていたと思います。それ以前は基本列車の中での話しでしたから、ここで、ちょっと世界が広がって見えてくる、という感じでしょうか。

文章は、割と凝った文体……だとは思うのですが、読みにくいという事はなく、すんなりと読んでいけます。
これは、文章表示の仕方が上手いからかな? という気がしています。
適当な所で、ブランク行を設けて、文章を書いていく、というスタイル。つまり、このブログみたいな感じの文章表示です。
画面ビッシリに文字が出てくる、なんて作品も世の中にはあるのですが、やっぱり、読みやすさ、という事を考えたら、そういう配慮がなされているといいですよね。所謂、全画面表示方式の文章表示は、適当な所でブランク行を設ける、というのが、個人的にはお勧めです。


肝心のストーリーですが、何か強烈な出来事があり、それを承けて次の展開が開けてくる、というタイプではなく、割とゆったりと、伏線や謎を残しながら進んでいくタイプ。途中で幼なじみの千夏という女の子も旅に加わり、少し賑やかになったりもしますが、基本的に性急さは無く、しっとりと内容が入ってくるようなテンポに仕上がっています。
この作品の個人的なツボは前述の通り、その雰囲気なわけですから、このくらいのテンポが作品に合っているなぁ、と感じます。

こうした雰囲気を楽しむ、味わうタイプの作品、貴重だと思います。
ちょっと脱線しますけれども、最近、立て続けに「雰囲気ゲー」とでも名付けたくなるような、ポエミーな作品をプレイしたのですが、誤字脱字は当たり前、日本語として意味が通らない文章も平然とまかり通っていて、「ちょっと、これはなぁ……」と思ったりしました。

ある作品が雰囲気を重視したものである時、その雰囲気を支えてくれるのは、テキストの内容や背景素材、或いは音楽素材は勿論ですが、そのテキストの体裁、というのも大きな要素ではないかと思うのです。
雰囲気を重視していながら、そこに誤字脱字だらけのテキストが載っていたら、台無しになっちゃいますよね。

そういう意味で、本作は作品の持つ雰囲気と、テキストが良い塩梅で混じり合って(「分かる」が「分る」となっている部分なんかはあったのですが)、且つテンポも性急でなく(ラスト付近ではちゃんと加速してくれます。このさじ加減がまた良い感じ)、雰囲気に浸りながら楽しむ事が出来ました。


一方、気になった点は、ラストがやや消化不良だった事でしょう。
ラスト自体は、とても幻想的で演出も凝っており、美しいシーンなのですが、妙にあっさりしすぎてたかな、と。確かに、「その後」を読者の想像に委ねる、という手法もあります。が、やっぱり、何かもうひとさじ、悠太の語り等があってもよかったかな……という気はしますね。
幻想的な本作は、現実に戻るまでを描きません。飽くまで、幻想の世界のままで幕を下ろし、それはそれで良いのですが、作品全体を総括するような、発話などがあった方が、個人的には好みでした。



大体、こんなところでしょうか?
人によっては、全然ラストが気にならない、なんて事も勿論あるわけですけれども、ま、ご参考までに、という事でw

やたら雰囲気の良さを強調した気がするのですが、勿論、雰囲気だけに留まらず、内容もしっかりとしたものになっています。ラスト付近ではテンポも気持ちよく上昇し、作品の抱えていた謎も綺麗にほどけるようになっています。逆に、内容がしっかりしていなくては折角の雰囲気も活きてこないのです。
色々云いたい事はあるのですが、「雰囲気ゲーを作るなら、先ず足下を固めよ」ということで、この作品が色んな人の参考になるんじゃないかな、と思っています。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2013-05-19 16:03 | サウンドノベル


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