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2013年 12月 15日

フリーサウンドノベルレビュー 『ヤサシイセカイ。-Rewrite The Scars-完全版』

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今日の副題 「優しい世界でありますように」

ジャンル:倒錯病的愛憎ビジュアルノベル
プレイ時間:4時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。15歳以上対象作品
システム:Live Maker

制作年:2013/10/27
容量(圧縮時):171MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、複数の方からお勧め頂いていた作品のご紹介。「好き/嫌いが分かれるかも……」と云われていたのですが、そんな「嫌い」になる要素は無かったような……。
というわけで、今回は「プラスマイナスゼロ」さんの『ヤサシイセカイ。-Rewrite The Scars-完全版』です。ダウンロードは、こちらからどうぞ。
良かった点

・賑やかで楽しい、“攻め型”ノベルゲーム

・主人公に妙に感情移入出来てしまう。

・綺麗に纏まるラスト。


気になった点

・後半、性急だった描写も。

・良く分からなかった部分が一箇所。

ストーリーは、ふりーむの方から引用しておきましょう。
【あらすじ】
世界はきっと優しくなんて無くて、等しく無慈悲で残酷で――。
それでも信じていたかった。この世界の、優しさを。

今なお急速な発展を遂げ続ける現代魔術科学社会。
世間はその過程で生まれた魔動人形の中の一体、「最高傑作」の誉れ高いメル=レーヴェレンツの話題に大いに沸いていた。
主人に謀反し殺人を犯した、前代未聞の事件に。

一方で家庭教師であるアルフォンスは、今日も教え子のリーゼロッテの放胆ぶりに手を焼いていた。
それでも献身的に彼女に尽くす様を、他人から「気持ちが悪い」と一蹴されながらも。

そんな彼をストーカーするのが趣味であるリーゼロッテを、今日も屋敷へ戻そうと帰路を引き返していたその時。

運命の悪戯か、それとも偶然のような必然なのか。彼と彼女は、邂逅を果たしてしまう。
そう。世間を大いに騒がせているメル=レーヴェレンツに――。

【ゲーム概要】
基本的に読み進めるだけの、選択肢のないビジュアルノベルゲームです。

本作は性的・暴力的表現を含む十五歳以上を対象とした作品です。
また、男性向け・女性向け要素が混在しております。ご注意ください。

こんな感じです。

本作、舞台は西洋ファンタジーのそれを踏襲するような、そうした雰囲気の世界観なのですが、魔法と科学が融合したような、独特な世界観を持っています。
西洋ファンタジー作品だと、地名・人名・用語名なんかが、あまり日本人に馴染みのないものが多いせいか(人名とか、長かったりしますしね)、どうにも、すぐに覚えられない、という事があって、本作もその例に漏れない……んですけれども、ちゃんと人物に略称が設定されていて、比較的スムーズに読んでいく事が出来ました。

登場人物のフルネームを述べよ! って云われたら、ちょっと詰まってしまうんですけれども、主人公はアル、ヒロインはリゼット、メイドさんはエル……と云った具合に、略称ではバッチリ覚えてます。

さて、プレイしてすぐに気付くのが、ギャグテイスト強めの、ノリの良い楽しい展開で引っ張っていくタイプの文章だという事。いきなりヒロインのパンチラからスタートする辺りに、そういった作品の一端を感じ取って貰えるのではないかと思いますw

これも、毎度述べていますけれども、私のスクリーンショットを撮る基準は、「基本的に、最初に出てきた一枚絵」です。けれども、最初の一枚絵が、作品内容を紹介するのにそぐわない場合、或いは、ギャグっぽいデフォルメキャラの一枚絵とかだったりした場合は、「二番目の一枚絵」を持ってきたり、はたまたタイトル画面をキャプチャーしちゃう事も。

で、今回の場合……最初の一枚絵がパンチラシーンで、作品内容を端的に表しているか、って云ったら、結構疑問なんですが、ヒロインは可愛いし、作品の前半~中盤くらいまでの、楽しい雰囲気を表しているような気がしたのでそのように。プレイしていけば、気合いの入ったOPムービーなんかも流れてきますし、作品の暗い所、シリアスな雰囲気は、そのムービーでちゃんと補完出来ますしね。


先ほどから述べているように、前半~中盤に掛けての楽しいやり取りが、本作の一つの魅力でしょう。
「病的なまでに誰に対しても優しい」(優しくあろうとする)アルと、そんなアルに真っ直ぐな好意を向けるリゼット、そして、そんなアルに気持ち悪さを覚える毒舌メイドさんとの掛け合いが、かなり楽しかったですね。
こうしたシーンを盛り上げるBGMなんかも凄い凝っていて、ターンテーブルのスクラッチ音が入ってたり、ちょっとラップ風のものが使われていたり、何というか、「攻め型」のチョイスだったと思います。

割と、ノベルゲームって、BGMは「激しく主張しない」ものが多くて、私自身も、そういう方向が主流って事でいいんだよな……と思っていたのですが、本作のように、クセのある音をガシガシ使っていく、っていうのも、結構面白いものですね。
勿論、テキストの楽しさや、攻める姿勢があってこそ、そのBGMのチョイスも活きてくるわけですが、そうした意味で、非常に楽しい作品になっていました。


もう一つ、特筆すべき点は、主人公アルの性質です。
かなり早い段階で、どうやら、「過去に」「何か」があって、「病的なまでに」「誰に対しても」(特にリゼットに対して、なんですが)「優しくあろうとする」人になってしまった、というのが明かされます。そして、アルの心中思惟の文章なんかを見ると、結構、そうした自分を性質を客観視しているわけで(本当に優しい人は、自分の優しさを客観視なんて出来ない)、決して本来的な意味で「優しい」わけじゃないんですよね。飽くまで「優しくあろう」「優しくしよう」としている、というか。

そうしたアルの葛藤を含んだ、心中の言葉や、彼の「優しさ」を揺さぶるような出来事が提示されていくのですが、何か、物凄いアルに対して親近感を覚えてしまうのですw
「女々しい男って、こういう時に、こういう事しちゃうよね!」とか、「こういう時は、こうするしかないよねぇ!」とか、妙な納得感があるというかw

本作を、うんと端的に、そして粗雑に纏めるならば、「心に傷を負ったアルが、ヒロインを通してその傷に向き合い、立ち直っていく」というような、非常に良くあるタイプの作品である事は確かなのですが、アルの内面に深く向き合っていく部分が、本作を大きな特徴であり、他の作品との差異でもあるのでしょう。
他の作品が、主人公の葛藤の内面に踏み込まない、というのではありません。その踏み込みの深さ、そしてその内的で、時にドロドロしている部分が作品のテーマに繋がっていくような作りが、やっぱりちょっと特殊だと思います。

今、「作品のテーマ」なんて云っちゃいましたけど、「ストーリー自体に、一貫した主張はない」と、後書きに書いてあるんですよね。『純白の街、灰雪の僕ら。』の時にも、似たような事を書きましたけれども、「作者」と「読者」の関係っていうのは、何か難しいものがあるなぁ、と。
お堅い、文学的な研究領域では、「作者の存在を考慮しない」(作者の、意図なんて考えない)っていうスタンスが普通なんですけれども、今回は、作者さんが、わざわざ後書きに「主張なんてないよ」って意図を暴露しているわけで、そこを考慮しないのも、何となく座りが悪いような、そんな気がする事もあるのです。

閑話休題。
ともあれ、私がプレイしてみて、(余計な事を考えずに)素直に感じたのは、「救いって何だろう?」っていうのが、作品のテーマの一つなのかもしれません。
それが偽善的なものであれ、アルの優しさに救われる人も確かにいる。それぞれの抱えた過去と、その救いを、それぞれがそれぞれのやり方で探していく……。そんな風にこの作品を纏める事も出来るかもしれませんね。

登場人物は、本当にそれぞれが好き勝手に動いている(ように見える)にも関わらず、ちゃんと話が一つの結末に収斂していく所なんかは、流石ですよね。
ラストも、期待を裏切らないものだったと思います。


一方、後半に掛けて、やや性急だったと思われる描写や、結末の付け方もありました。
一つは、この作品に於いて、物語を進行させていく役割を担っている、殺人魔動人形メルについてです。彼は、物語の核心とも云えるリゼット(やフォルカー)の過去について知っているらしい事、描写されるので、もっと中盤からグッと登場回数が増えたり、何か見せ場があるのかと思いきや、割と地味な形でフェードアウトしていってしまった、という印象が。

又、ラスト近くでの、フォルカーとメイドのエルとのエピソードも、やっぱり、ちょっと唐突かなぁ。「こうなって欲しい!」とは思ってたんですけれどもねw もしかしたら、私は、本作の中でエルが一番好きかも。なので、エルの結末そのものに関しては、手放しで祝福したいですw


アルとリゼットの物語に関しては、かなりストンと腑に落ちました。先にも触れましたが、アルの心中の描写はかなりリアルですよ。
「卑怯で臆病でずるい貴方が、好き」なんてグッとくるセリフがありましたが、要は、アルのそうした傾向は、リゼットによって見抜かれていて、それでもアルに好意を寄せてくれる。

過去に厭な経験(特に女性絡みで)をした男っていうのは、その辺りで臆病になっちゃうんですよw そこまで女の側から云ってくれていても、最後の最後で信じ切れないような部分があったりで、結果、いつもの曖昧な笑みと言葉で誤魔化して……。
そんなアルとリゼットの結末に関しては、語りません。是非プレイしてお確かめ下さいませ。


最後に、どうにも分からなかった箇所が一箇所あるので、そこに触れておきましょう。
アルの初恋の相手アリーシャについて、なんですが、或る疑惑がアルに掛けられていたんです。けれども、アルはそれを否定している。だとしたら、本当はアリーシャはどういう状態だったんだ? と。
ネタバレを回避しながら語ると、こんなもどかしい感じになってしましますw



今回は、「無印」にするか「吟醸」にするか、かなり悩みました。
時たま、「無印」を付けたけれども、個人的に凄く気に入ってしまった作品なんかがありますが、本作は正にそれですね。
女性がプレイしても勿論楽しめると思いますが、寧ろ、アルに共感出来ちゃうような男性にこそ、お勧めしたい作品です。楽しい前半分と、シリアスな後半部、是非お楽しみ下さい。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2013-12-15 18:42 | サウンドノベル


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