久住女中本舗

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2014年 09月 21日

フリーサウンドノベル関係の雑記 箸休めvol.67

道玄斎です、こんにちは。
今日は凄く天気がよくて、掃除機を掛けたり、部屋の整理をしたりと有意義な時間を過ごしているんだよ。普段は掃除の時間が取れないから、こういう時にやらないとね。

それはそれとして、ちょっと前に、ノベルゲームにまつわるヘンテコ話を書いたんだけど、ちょくちょく、「別のエピソードが知りたい」とか、そういうメールを貰うんだ。
取り敢えず、ファンタジーもので関係のありそうな話を書いたわけなんだけど、今日の話も、ファンタジー……っぽいって云えるかな?



■ネタがなければ借りてくる!

ゲームを作る時、一番大変なのは、とにかくシナリオ制作だよね。
大変ではあるけれども、やりがいはあるし、調子よく執筆出来ている時は、凄い気持ちのいいものなんだよ。

キャラクター作りは、以前書いた通りで、割と楽しんで出来ちゃう事が多いんだ。
舞台設定なんかも、キャラ作りの延長、みたいなケースも多いよね。

でも、どういう事件が起こって、どういう変化が生じて、そうしたエピソードの連続を通して、最終的にどういう結末を迎えるか? っていう、物語の芯の部分を作るのは結構大変なんだよ。

けど、これも慣れだったり、資質の問題だったりするのかな?
「書きたいことはいっぱいある!」って人にとっては、シナリオ作りは、なんだかんだ云って楽しい作業だろうね。

そうは云っても、「シナリオは思い浮かばないんだけど、ノベルゲームを作りたいんだ!」って人が一定以上居るのも、また事実なんだよ。
そういう人は、「二次創作」のノベルゲームを作ったりする事もあるね。「二次創作」による効果を当て込んでいる部分も当然あるだろうけど、既に誰かが作った「キャラクター」(や、その性格)、「舞台」などを、そのまま使えるから(本家のエピソードを踏襲したりも出来る)、シナリオ執筆のハードルを下げる事が可能になるんだ。

これは、シナリオを「借りてくる」一つのパターンだけど、この「借りる」という行為は、真面目に考えてみると、意外と複雑なんだよ。



■例によって相談だ

今を去ること数年前、私はやっぱり、とあるゲーム制作志願者からアドバイスを求められたんだ。

これも以前書いた事なんだけど、「こういうのを作ろうと思ってるんだけど、足りない部分とかはあるかい?」とか、「このオチだと弱すぎる? もっと設定を練り込んだ方がいい?」みたいな、具体的な指摘やアドバイスは、実は求められていない事がほとんどなんだよ。

大体が、「俺の考えた話、ちょっと聴いてくれよ!」という形だったり、「こういうの作ります!」という決意表明に近い形だったりするんだ。

真面目にアドバイスをする事だって、勿論皆無ではないよ。わざわざ私なんかに助言を求めてきてくれるんだもの。出来る限りの事はしてあげたいもんね。
けど、そういう人達は、やっぱり自分が思いついたアイデアに自信があるから、こちらが何を云っても聞かないことがほとんどだよ。

竜頭蛇尾って言葉があるけど、まさにそんな感じで、最初は勢いがいいんだ。だけど、段々、自慢のシナリオに矛盾点が出てきたりして収拾が付かなくなると、シナリオを投げてしまうんだ。
或いは、シナリオに行き詰まったら、外堀から埋める! と、イラストレーターを探してきたり、音屋を誘致してきたり、色々やるんだよ。
けど、人を集めるだけ集めても、結局シナリオがないと作業出来ないものね。そして企画は自然消滅……。

これはやっぱり、「今までにない全く新しいノベルゲームを作る!」なんて意気込んでる場合に起きやすいよね。「今までにない」ものを求めて、あれこれ試行錯誤してみたものの、旨味が無かったり、結局、その人が忌避したい「今までにあったもの」が、実は理に適っている事に気付いてしまったり……とかね。

で、その時、私にアドバイスを求めてきたのは、そういう「オリジナル志向」が強い人ではなかったんだ。
寧ろ、積極的にネタを「借りてこよう」と思ってる人だったってわけ。


「それで、一体どういう作品を作ろうとしてるの?」

「オリジナル作品はいづれ作ってみたいんですけど、まずはゲーム制作に慣れようと思ってます!」

「あっ、それは寧ろいいことなんじゃない? ゲーム制作に慣れていく中で、本当に描きたいものを熟成させる事だって出来るだろうし。まずは作りやすいもので、ゲーム制作を経験してみる、って大事だと思うな」

「そうですよね! なので、処女作はシンプルな作品にするつもりです」

「色んなやり方があろうだろし、向き/不向きもあるからねぇ。それにしても、結局やってみないと、向いてるかどうかすら分からないわけだから、シンプルな作品で全然いいと思うよ……って、君は俺に何を聞きたいんだっけ?」

「あっ、忘れてました。実は、その処女作なんですけど、ネタを借りてこようと思ってるんですよ。そういうのってアリなのかなーって」

「え? 二次創作?」

「違います! その……みんなが知ってる有名どころの……」

「ってーと、アレかい? 日本のどことも知れぬ高校に、内向性が強い自堕落な学生がいて、彼を取り巻く色とりどりのヒロインが、何故か無条件的にその学生に惚れていく中で事件が起きる、という……」

「そうじゃなくて……ええい、はっきり云いましょう! 『童話』を下敷きにするんです」


こんなブログを読んでいるくらいだから、知ってるだろうけど、童話を下敷きにした作品は、それなりにあるんだよね。そして、私は、童話とか説話とか、そういうのが好きだから、割とチェックしてるんだ。

そうそう、この場合、「童話」っていうのは、もう端的に『グリム童話』を指す、って云ってもいいんじゃないかな。例外はアンデルセンの「人魚姫」くらいかな。
とにかく、グリム童話も、アンデルセンの童話も、著作権的にも問題がない童話だし、誰もが聞いたことがある話も満載なんだ。


「なるほどね。まぁ、実際、既に『グリム童話』を下敷きにしたノベルゲームは結構出てるんだよ」

「ええ、知ってます。実はそれを見て触発されたというか……」

「まぁ、いづれにせよ、話の筋を使いながらオリジナリティを出す、って事なら、全然OKだと思うな。刊行されてる本の文章をパクったりしなければ、ね。」

「あぁ、良かった! そこが心配だったんですよね~」

「問題は、そのオリジナリティの部分だよ」

「……というと?」

「いや、だってさ、既にみんなが知ってる童話をベースにするわけでしょ? って事は、童話通りの話の流れで、童話通りの結末だったら、それは『翻案』なんじゃない?」

「そこなんですよ! あくまで童話を下敷きにしながら、自分の作品を作るのはどうしたらいいか、って事も聞きたいんです」

「パッと思いつくやり方としては、今云った『翻案」。そしてキャラクターなんかは童話のそれを使いながら、大胆に改編をして、全く別の話に作り替えちゃうようなやり方、もう一個は、元の童話との差異……というかズレを上手く見せるような、そういうやり方があるかなぁ」

「翻案はちょっと……。作り替えも、それをやるんだったら、童話を下敷きにする意味があんまりないですよね……。となると、差異とかズレを見せる方向がいいのかな」

「まぁ、そうだろうね」

「分かりました。ちょっと資料を集めて、ネタを練り込んでみます!」


こんな調子で、彼女は童話を調べたり、関連書籍を集め出したんだよ
云っておくけど、自分が書きたいと思ってるものに関係する書籍を集めたりするのは、いい事だと思うよ。調べた事は、必ず作品に反映されるし、そういうのがリアリティにも繋がってくる。

けど、作品作りに活かす調査、ならば全然いいんだけど、結構脱線しちゃう事も多いんだよね……。



■蛙の王様

「やぁ、久しぶり。調査の方は順調?」

「ええ、書きたいネタも固まってきましたよ!」

「それは良かった。 で、どういうネタにするの?」

「まず、元の作品が有名じゃないと、どこが原作との違いなのか分からないですよね?」

「うん、そりゃそうだよ。あまり知られてない作品だったら、どこを変えたのか全然伝わらないと思うし」

「ですよね。なので、『シンデレラ』と『いばら姫』を使うことにしました! これなら女性はみんな知ってますから!」

「メジャーなお話だね。ただ、『シンデレラ』と『いばら姫』はメジャーすぎて、逆に差異を出すのが難しいかもなぁ……。もう既に色んな人がやってる、なんて事がありそうだよ」

「けど、大丈夫なんです! 私が加える差異は思想なんですから!」

「え? 思想? なんだいそりゃ?」

「『シンデレラ』も『いばら姫』も、女性抑圧の象徴なんですよ。今なお残る、家父長制度、男に抑圧される女性……その象徴が、『シンデレラ』であり『いばら姫』なんです。童話は、正直ですよ~。男性中心社会から不都合だとして、切り捨てられた真実の歴史を残しているんです!」

「ま、まぁ、そういう面も確かにあるんだろうけど……」

「むしろ、童話にこそ真実が宿る! 原作を掘り下げて、そういうところで差異を出していこうかな、って」

「つまり、童話を使って、女性啓蒙キャンペーンみたいなことをしようと?」

「その観点でやっていくつもりですよ。これなら差異も出せるし、新しい試みだから、話題になるかも……!」

「うーん、何を作るのも自由なんだけどもね、俺はやめておいた方がいいと思うなぁ」

「なんでですか? あっ、道玄斎さんは男だから、男性による女性蔑視が明らかになると、いい気持ちがしないんでしょう!?」

「心情的に、そういう部分があるのは否定しないけどもね。けど、もっと実際的な理由だよ」

「実際的?」

「うん、俺の持っているグリム童話は、角川文庫のヤツなんだけどもね。第一巻の一番最初のお話に、『蛙の王さま』ってのがあるんだ」

「『蛙の王さま』ですか……聞いたことないですね……」

「かいつまんで説明するとね、蛙に姿を変えられた王子様がいて、困っているお姫様を助けてあげるんだ。その代わりに、蛙の王子様は条件を提示するんだよ。条件っていっても、『仲良しでいてね』って事なんだけどもね」

「ふむふむ……」

「なんだけど、助けてもらったお姫様は、自分の悩みが解消するやいなや、蛙の王子様が疎ましく思えてきたんだ。当然、約束を全く守らなかったんだよ」

「それは……」

「で、約束を守ってくれよ、と訴える蛙を壁に叩きつけて、殺害を試みるんだ。うるさいからね」

「……最後はどうなるんですか?」

「ん? 殺害された瞬間、蛙に掛かっていた呪いが解けて、蛙は元の見目麗しい王子様に戻るんだ。そしたら、何故か『姫の仲良し』になって、結婚したらしいよ。その後も、ちょろっと話は続くんだけど、大体こういう話だね」

「……」

「つまり、男女の関係性を意識させるような物語っていうのも、グリム童話には多く入っていて、その中には、女性を抑圧していた名残、みたいのは確かにあるんだよ。けど、一方で、こういう女性の狡猾さが描かれるお話も結構あるのさ。あんまり、そういうのを気にしすぎるのもアレだけど、そういうとこで突っ込まれるかもしれないから、俺はお勧めしないのさ」

「童話も奥が深いですねえ……じゃあ、どうって差異を出したらいいんだろう……?」



■ネタの借用あれこれ

今となっては古典的、なのかもしれないけど、原作がぼんやりとしか記述していない部分を掘り下げてみる、っていうのは、有効な手かもしれないね。

つまり、何か超自然的な事象が起こって、一気に話が解決に向かう、って事が、童話や説話にはよくあるよね。特に文章中にはそれに関する説明はないんだけど、そういう所の理屈っていうか、説明を考えて、物語に深みを出す、って方法だよ。

或いは、さっき話した「蛙の王さま」では、お姫様と蛙の王子様が結婚した後、突如、ハインリッヒという家来が出てくるんだ。しかも忠臣である、なんて説明をひっさげてね。
そういう、唐突に登場する人物や、唐突に起こる事件の背景を考えたり、って事なんだけど、それなら、原作も活かせるし、自分の想像力で補完した、原作とはズレた世界も見せる事が出来るってわけだよ。


「うーん、そりゃ云うのは簡単ですよ。けど、それを実践するのが難しいから困ってるんじゃないですか!」

「まあね。けど、アドバイスなんて云っても、せいぜいこんなもんだよ」

「けど、なんかヒントくださいよ! 参考になるゲームとか」

「ま、ゲームじゃないんだけどもね、本でならあるよ」

「え? ほんとですか? なんてタイトルの本です?」

「『今昔物語』だよ」

「また、古文を持ち出して!」

「いやいや、誤解しないで欲しいんだけど、俺の云ってるのは、現代の文で書かれた『今昔物語』なんだよ」

「現代語訳ってことですか?」

「いや、単純な現代語訳とは違うんだな。福永武彦っていう作家が書いてる『今昔物語』なんだけどもね、まさに、原文では省かれている部分を上手く説明……というか捉え直しをして、元々の怪奇的ホラーから、人間的なホラーへの転換を図ったりもしているんだよ」

「へぇ~、それは参考になりそうですねぇ!」

「うん、すっごい文章が上手い人で、そういう部分でも参考になると思うな。池澤夏樹って作家のお父さんなんだけどもね」

「あっ、池澤夏樹なら知ってますよ! 教科書に載ってました」

「そうなんだ? 俺は、断然、父親の福永武彦の方が好きなんだけどもなぁ」

「それにしても、道玄斎さん、よくそんな作家のこと知ってますねぇ……。意外とやりますねぇ」

「いや、俺としては、逆に貴女が福永武彦を知らなかったことに驚いているんだけどもね」

「へ? なんでです?」

「うん……大きな声じゃ云えないんだけど、福永武彦の『草の花』って小説は、元祖ボーイズラブってことで、腐女子の間では有名なんだよ……」

「……!」



■顛末

というわけで、長くなっちゃったけど、今日のお話はこれでおしまいだよ。
ん? 結局、今日の話に出てきた彼女は、ゲームを作ったのか? って?

もちろん、完成品を作って、今ではシェアゲームをメインに活動しているんだよ。
ただし……BLゲーム制作サークルとして、だけどもね!



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2014-09-21 16:10 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by 片倉(焼くとタイプ) at 2014-09-28 14:40 x
童話といえば、例の「語り部さんとおとぎ話」の第2作が公開されています。 ご存知かもしれませんが記入します。 ただ語り部さんのキャラデザインが変わっています。人によっては前の方がよかったという人がいるかもしれません。
Commented by s-kuzumi at 2014-10-07 08:46
>>片倉(焼くとタイプ)さん

おはようございます。
コメントありがとうございました!!

『語り部さんと~』の第二弾がリリースされた事は知っていたのですが、語り部さんのキャラデザが変わってしまった事は知りませんでした!

ううーん、こういうのは、どういうデザインになっても(それが良い意味でパワーアップしても)、絶対に「前の方が良かった」って人が出てくるですよねw
私も、やっぱり、以前のヴァージョンの語り部さんに思い入れがありますし……w

ま、それはさておき、あの作品は、「童話」の捉え直しをすると共に、「語り部さんが語る物語」というガワでくるんである、物語の二重構造なので、ただの童話の焼き直し、とは違って、ちょっと深みがありましたよねー。


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