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2015年 03月 22日

フリーサウンドノベルレビュー 『爆音の世代、沈黙の世界』

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今日の副題 「考える作品」

ジャンル:強気っ子大集合・バイオレンス・アドベンチャー
プレイ時間:合計で9時間半程度。
その他:選択肢アリ。全四章(オマケルートあり)の作りになっている。18禁。
システム:らのべえ

制作年:2013/4/15(フリー公開)
容量(圧縮時):978MB




道玄斎です、こんにちは。
ここんとこずっとプレイしていた作品のご紹介。ジャンルには「強気っ子大集合・バイオレンス・アドベンチャー」なんてありますが、物語のテーマ(の一つ)として、民族問題があったりと実はかなりの社会派作品でした。
というわけで、今回は「Cosmillica」さんの『爆音の世代、沈黙の世界』です。ダウンロードはこのページからどうぞ。
良かった点

・同人ならではの、強烈なテーマ設定。

・物語が進むにつれ、色々と考えさせられる部分あり。


気になった点

・後半に行けばいくほどテーマがブレてくるような。

・主人公がほぼ無力(但し、考えを改めた部分もある。後述)。

ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。

少しだけ味気ないので、補足しておきましょう。
民族問題で紛糾する社会、主人公とその仲間達の生活は危ういバランスによって、その平和が保たれていた。しかし、ある事件をきっかけにその平和は失われ、誰しもがこの国の抱える問題について無縁ではいられなくなる。その状況で果たして主人公、そしてヒロイン達はどのような選択をしていくのか……。

というような感じでしょうか。
一応、架空の国名や固有名詞を使って「現実社会とは関係がない」と主張しているのですが、明らかに本作の舞台設定は「日本」です。
そして、在日外国人の問題というのが大きくフィーチャーされてきます。何しろ、ヒロインの一人が在日外国人(というか、在日韓国人を模した在日外国人)なのですから、社会派というか、もの凄い攻めの姿勢を感じます。


まずは、概略的なところですが、本作は全部で四章の構成です。
選択肢もあるのですが、章とヒロインの女の子というのがセットになっています。
例えば、第一章ではジェシカのルート、第二章ではサクラのルート、というような感じです。恐らく、「一章から順番に見ていく」ような作りになっている為、バッドエンドは存在しても、選択肢の捌き方によって、いきなりサクラルート(第二章)から攻略していく、というのは出来ない……んじゃないかと思います。

当然、第一章でのエンドより、第二章、第二章より第三章のエンドの方が、物語全体のテーマ(これも、ちょっと作中でブレてるような気がするのですが)に近づいていく。そうした感触があります。


最初、私はプレイしながら、「ちょっと馴染めないな……」と思っていました。
というのは、前半部は割と古風なギャグテイストのテキストで、妙にテンポが悪くなってしまっている部分がある、ということ。そして、なにより、主人公の「みんな同じ人間なのに何故憎みあうんだ」的な、云ってしまえばお花畑思考に対して、軽くイライラしてしまったのです。

どちらの側にもそれなりの「正義」とか「大義」があるからこそ、対立が起こるし、それぞれがそれぞれに対して不平や不満を覚えるというのも、極々自然なことだと思うのです。
兎に角、対立というのは、それぞれの背景があって起こるわけですが、その背景にある問題というのが作品のテーマでありながら、割と軽く扱われており、しかも主人公は、ほぼ自動的に「在日外国人」の立場に拠って立っている、という状況なので「これはこれで一面的なものの見方なんじゃない?」と思ってしまった、ということです。


と、まぁ、そんな具合で、正直、あまり良い印象ではなかった作品だったのですが、読み進めていくうちに、少しづつ考えが変わってきました。
というのも、第一章や第二章をエンドというのは、「まだまだ問題が残っている」というのが前提となるエンドで、それに対しても自覚的だったからです。

作品タイトルの一部でもあり、作中で繰り返される「沈黙」という言葉ですが、「どうしようもない現実に対しての諦念」というような意味合いがあったはずです。
取り敢えずの表面的な問題は解決したように思えるけれども、実は根本的には解決されていない、あるいは解決が先送りになってしまっている……そうした状況が作中で幾度も描かれますが、そういう時に「沈黙」という言葉が出てくるのです。

だから、対になる「爆音」がまだ残っているんだな、と期待が持て、その「爆音」こそが最終章だったのです。
そうした意味では、実は結構凝った作りになっている、と云ってもいいと思いますし、章が進むにつれテーマが深くなっていく、というのは王道的でもあり、安心感が持てるものでした。


作品の中には、色々なテーマが入り込んでいるのですが、主人公を軸にして考えて、オーソドックスに「主人公の成長物語」と捉えていくことも勿論可能です。
最終章以前の主人公は、ラストに至っても「社会というシステムの中に呑み込まれていく個人」という枠の中に収まっているんですよね。

「大人になる」って色んな考え方、捉え方があるわけですけど、皮肉な見方をすれば「物わかりが良くなる」というか、「割り切りが出来るようになる」とか、そういう部分ってありますよね。
先に述べた「諦念」とも一脈通じてるわけで、そこで、「俺は俺のやりたいようにやる」とか、「自分が今感じている気持ちに素直でいたい」とか、少年漫画の主人公宜しく頑張っちゃうと、「青臭い」とか「子供っぽい」とか、はたまた「現実が見えてない」とか云われちゃう。

で、そういう「気持ち」だけでは何も解決しない、というのもまた事実なんです。自分の出来る事/出来ない事に境界線を設けないと、自分がボロボロになっちゃいます。
けど、ゲームの中でも「物わかりの良い大人」になってしまうっていうのも、またつまらない部分ってきっとあります(逆の方向性で、そういうのに主人公が呑み込まれていく作品っていうのも、また面白そうな気もするんですが)。

最終章の最後の最後では、主人公も頑張ってくれるんです。
物語の主人公らしくなる、と言い換えてもいいのですが、それ以前は、「ヒロイン」こそが主役に相応しい描かれ方をしているんですよね。
結局主人公には、何の力もなく、女の子達の闘いにただ巻き込まれていく感じ。結局、この物語世界を動かしているのは、メインとなる女の子達だけなのだ、と思わず云いたくなってしまうような……。

そんな主人公ですが、最後の最後で主人公らしくなる。
それを「成長」と捉えていいのかどうか、という問題もありますが、少なくとも「ノベルゲームの主人公らしく」なる、というのは間違いないでしょう。


それはさておき、この無力な主人公に対しても、私は「なんか主人公っぽくないなぁ」なんて思っていました。
実際に行動を起こし、世界を変えていこうとするのはヒロインであり、謂わば、主人公は「優しさはあれど、無力な市井の一人」だったわけで、だったからです。

よくあるタイプのノベルゲームでは、主人公はバカだけども、気持ちだけは熱い。
で、ヒロインの女の子は、何かをその心の中に抱え込んでいるけど、行動を起こすのを躊躇っている。そこに主人公が持ち前の熱さで彼女を感化させ、二人は幸せに……みたいなのってありますよね。

この男女を逆にしたパターンが、本作の主人公とヒロインに近いのかな、と考えたら、それはそれで「アリ」なんじゃないかな、逆にその主人公の「普通さ」が、ヒロインの癒しになって、間接的に手助けしているんじゃないかな、なんて考えるようになりました。

ですので、「主人公があまりにヘタレ」という批判は、本作に対してあると思うのですが、私は段々その部分は気にならなくなっていったのでした。


ただし、物語が進むにつれて、テーマがブレて分かりにくくなっていったというのは恐らく多くの方が感じると思います。
物語の冒頭部、前半部ではやはり「民族問題」が押し出されていき、「共存」の方法を探るというか、そういうテーマを持って進んでいたはずが、途中で『ガンスリンガーガール』的な話と混ざっていき……焦点がボケてしまったような部分があります。

特に、ストーリーのターニングポイントとなる事件の真相で、「え?」と思わず口にしてしまいましたw
これは、好意的に考えるならば、「現実の複雑さを描こうとした」のかもしれません。現実はストーリーの思惑を越えて、意外な所から意外なことが起こるんだ、というメッセージを感じ取ることも出来るわけですよね。

ただ、段々と複雑になっていくストーリーで、拠って立つ足場のようなものが、現実と同じような不安定感を持っていると、読みづらさを感じてしまうし、逆にストーリーの焦点が分かりにくくなってしまうこともあります。
そうしたものを、分かりやすく納得のいく形で描ける人がいたら、その人は物凄い上手な描き手なんだろうな、とも。


長々と私自身も纏まりのないまま書いてきましたが、向き合い甲斐のある作品だと思います。
今も私は「こっちとこっちが和解して共存の道を歩むのはいいのだけど、その為に共通の敵、別のターゲットを策定しなきゃいけないっていうのは、なんかなぁ」なんて、グジュグジュ考えていますw

本作の主張に賛同する人もいるだろうし、逆に「ただの理想論じゃねーか!」と寧ろ、怒ってしまう人だって多いと思うのです。
それでも、この作品が、現代社会を考えるにあたって、一つの機会を提供してくれる、というのも亦間違いない事実であって、本作が同人ゲームたる所以なのでしょう。

社会派で、重めのテーマを持った作品です。
合う/合わないは物凄く別れるとおもいますが、無心に向き合ってみる価値はある、そんな作品だと思いますよ。



それでは、また。


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by s-kuzumi | 2015-03-22 16:05 | サウンドノベル | Comments(0)


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