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2015年 07月 30日

フリーサウンドノベルレビュー 『ココロ、そらいろ。』

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今日の副題 「子どもを描くからこそ描ける物語」

※吟醸
ジャンル:少年少女のハートウォーミングストーリー。
プレイ時間:40~45分程度。
その他:選択肢なし、
システム:NScripter

制作年:2015/4/9
容量(圧縮時):32.9MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、久々のノベルゲームレビュー。
思春期の少年少女に焦点をあてた作品を多く作られている作者さんの作品のご紹介。
というわけで、今回は「mint wings」さんの『ココロ、そらいろ。』です。
良かった点

・短いエピソードを重ねていく形式で読みやすく、それ故の効果も出ている。

・小学校高学年という年齢設定が絶妙。


気になった点

・主人公いつきの問題に関しては、ちょいあっさりかも。

・物語の締め方が個人的にちょっと気になった。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
"君島 樹(きみじま いつき)" は不登校の男の子。
ある日、担任の勧めから "保健室登校" を始め、新たな世界へ踏み出すことに…。

1番最初に出会ったのは "前川 柚子(まえかわ ゆず)" という女の子。
人に合わせるのが苦手で、友達から仲間外れにされてしまったらしい。

しばらくしてやってきた "藤堂 元成(とうどう もとなり)" はクールな男の子。
クラスに上手く馴染めず、ずっと1人だった。いつも無表情で笑わない子。


そんな彼らと過ごす日々は、様々に色を変えて積み重ねられていく…。
――そう、まるであの空の色のように。

このようなストーリーになっています。



mint wingsさん12作目の作品です。
この作者さんは、「思春期」の少年少女を描くのが本当に上手いですね。

その時期特有の不安定さや、脆さ、残酷さ、そして素直さや優しさ……そういったものを上手く折り込みながら、物語が進む作品が多いのですが、本作も例外ではありません。

今回は「思春期前期」とでもいいましょうか、小学校の高学年という年齢設定にまず惹かれました。

ノベルゲームの場合、だいたいが「高校生」を主人公としているわけで、ちょっと年齢をズラしてやるだけでも、まだまだ色々な物語の可能性があるわけです。
さらに、思春期の入り口、といった年齢ですから、そこに他の作品にはない「面白さ」や「深み」を感じることが出来ます。


物語は、短いエピソードを選択し、それらを順に読んでいく、という形で進行します。
それによって、一話一話が読みやすくなっていると共に、それ故の効果が出ていました。

どういう事かと申しますと、エピソード間にはそれなりの「空白の時間」が存在しているのです。
だいたい、数週間~一月程度のブランクが、各エピソードの間にあるんですね。

で、あるエピソードを読んだ後、次のエピソードにいくと、ちょっと人間関係が変化しているんです。
最初は、少しおっかなびっくりコミュニケーションをとっていた、主人公いつきと、やはり保健室登校のゆずが、大分うちとけた感じで会話していたり。

それはいつきとゆずだけでなく、もとなりに関してもそうでした。
エピソードの空白時間に、ちゃんとお互いの距離が縮まったり、あるいは、もやもやとしたものを感じたり……。そういう部分がキチンと次のエピソードで描写され作品に溶け込んでいる、というのがとても良かったです。

そういう意味で、とても丁寧に紡がれた作品、だということが出来ましょう。


思春期前期の子ども達を通して描かれる物語は、読者である私達にも改めて考えないといけない問題を提示してくれていたりもします。

ゆずの抱えていた問題、「自分の気持ちはそのままで、それでいて他者とうまくやっていく」、なんかはその最たるものでしょう。

気に入らないからケンカをふっかける。
あるいは、好きだから全てを肯定してしまう。

そういうことって、大人でもありますよね。
そうじゃなくて、「気に入らなくても、ケンカしない」、「ケンカにならない云い方をする」、「好きであっても、ダメだったらばちゃんと云う」。そういうことって、やっぱりとっても大切だけど、いざ実践するとなると、結構難しいところがあったりして……。


ですので、子ども達を描きつつも、「子供向け」で終わらない深みが物語にはあるんですよね。
もしかすると、それは「子供と大人の淡い」にある、思春期の子ども達を描くからこそ、出せるテーマなのかもしれませんね。


気になった点としては、主人公いつきの問題とその解決のパートが、ゆずやもとなりと比して、ややあっさり風味だったのかな、と。

ゆずやもとなりは、ハッキリとした理由・原因があって「保健室登校」をしているわけで、いつきはそこが「何となく」なんですよね。

ラスト付近で、いつきが自分の問題を自覚し、それに立ち向かう描写こそありますが、それも比較的あっさりしていたかなぁ、と。
多分……ゆずやもとなりが物凄くキャラが立っているので、そういう風に見えてしまう、というのもあるんじゃないかと思いますね。


もう一点は、ラストです。
ここは、本当に「個人的に」気になった、という感じなのですが、たとえば、「3人のその後」の一枚絵が出て終わるとかね、そういうのでも良かったんじゃないかな、なんて。

現行の終わり方も決して悪い、というわけではなく、そこに込められた意図や、その終わり方の良さも勿論、感じることが出来ます。
ただ、個人的には、3人が積み上げてきた友情をしっかりと描写した上で終わって欲しかったな、ということなんです。

ここは、単純に好みの箇所ですから、あまり気にしないで下さい。



さて、mint wingsさんは本作を以て、サークル活動を一時中止されるようです。
エイプリルフールなどのイベント時にはゲームを作る、ということですが、とにかく一度、活動は休止ということのようです。

私も、mint wingsさんの作品、何本もプレイしてきましたし、レビューでも何度となく取り上げさせていただきました。
12本、という作品数は本当に凄いと思いますし、フリーのノベルゲームの世界に残した影響は決して少なくなかった、と思います。

今まで、本当にお疲れ様でした。
また、活動が復活し、新しい素敵な作品を読める日を楽しみにしております。



それでは、また。



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by s-kuzumi | 2015-07-30 20:48 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by Low at 2015-07-30 22:54 x
わあ 久しぶりのレビューですね^^

興味深く読みました。おお そうかと おもうとこ多く 自分でない視点を読むのは楽しいです。

「か」と「爆」 読み始めましたが 途中で止まってしまいました^^; そのうち』勢いがついたら 続読いたします^^;ですので 感想はまだ書けません・・・^^;
Commented by s-kuzumi at 2015-08-12 18:54
>>Lowさん

こんばんは。

ちょっと忙しくて、ゲームから遠ざかっていました。
ちょくちょくっと、無料ゲーム.comさんのほうでコラムを連載したりもしていたのですが、気持ちを落ち着けてゲームをプレイする、というのがなかなか出来なくて。

「か」の方も「爆」のほうも、ボリュームがありますからねぇw
どうしても、プレイが途切れてしまう、ということもありますよ。
少しづつ、ご自身のペースで読めばいいと思いますよ!


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