2015年 12月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『サクとマツリの赤道儀』

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今日の副題 「ちょっぴりモヤモヤ強烈な読後感」

※吟醸
ジャンル:星を撮りに行くフルボイスノベルゲーム
プレイ時間:1時間ほど
その他:選択肢なし一本道。フルボイス。
システム:Yu-ris

制作年:2014/1/?
容量(圧縮時):233MB




道玄斎です、こんばんは。
今日は、短めではあるのですが、プレイ後にうまく言葉に出来ないけれども、強烈な印象を残す作品をプレイしたのでご紹介。ここまで読了後に色んな感情が残る作品って、珍しいのではないでしょうか?

というわけで、今回は「Custom Games」さんの『サクとマツリの赤道儀』です。
ダウンロードは上記サイトからどうぞ……と言いたいのですが、現在ダウンロードが出来なくなっています。また、同時に公開されている「設定資料集」も同様です。

恐らく、また何かのタイミングでダウンロード可能になると思いますので、その時は是非ぜひ。
また、android端末をお持ちのかたは、ストアから「スマホ版」をダウンロードできるはずです。
良かった点

・読了後に、何ともいい難い感情が押し寄せてくる。

・非常に丁寧に作られており、音声にも大きなこだわりが。


気になった点

・同時配布されていた「設定資料」を読まないと、理解できない箇所がある?)。

ストーリーは、私が簡単にまとめておきましょう。
サクは写真が好きな小学五年生。
彼のクラスには「魔女」と呼ばれている女子マツリがおり、クラスメイト達から陰湿な嫌がらせを受けている。
しかしマツリはそうした嫌がらせに対し、何も反応を見せようともしない。

サクはマツリと一緒に、学校の課題である「写真撮影」を行うことになっているのだが……。

だいたい、こんな感じ。


いやぁ、凄くいい作品でした。

タイトルが気になっていて、あらかじめダウンロードしておいたのですが正解でしたね。

尺としては1時間程度の、比較的小粒なサイズではあるのですが、非常に密度の高い作品になっていました。

タイトルやストーリーの概略から、「ちょっと変わった女の子と星を撮影しにいく感動ノベル」みたいな雰囲気を感じ取る人もいると思いますが、「それ以上」のものを感じさせてくれる、と断言できます。

実は、単純に星を撮影しにいく、というわけではなく、そこに至るまでに色々なエピソード(父親がカメラをやめてしまった理由や、学校のハムスターの話)があるんですよね。
それを丁寧に追っていきながら、本作の山場「星の撮影」に移っていく作りは、非常に丁寧なものを感じさせます。

どのエピソードも単発でどこか「浮いている」というわけではなく、読了した時に、「作品のテーマにしっかりとつながっているんだな」と感じさせてくれる、そういうものなのです。

ただ、それは「これが○○だから、あの△△と□□の意味でつながっている」と理解していく、というよりは直感的に感じさせるものであった、というのも確かでしょう。
それが故に、本作を貫く少しヒリヒリとした雰囲気や、読了後のなんともいえない不思議な感触が味わえるんじゃないかと思います。


ちなみに、本作品はフルボイスです。
ものすごい名演だったと思います。本当に「小学生」っぽい雰囲気が出ていて、「リアルさを感じさせる」ボイスアクトでした。

また、その編集も非常に巧みで、声の音量やリバーブ感で「人物間の距離」を演出したり、パンを振り、右から左へボイスが流れていくことで「移動」を表現したりと、他のノベルゲーム作品ではあまり見られない、音声に対するこだわりをひしひしと感じることが出来ました。

こういう音声演出って、もしかしたら他の作品にもあるのかもしれませんが、本作のそれは「サラッとしている」感じがあるんですよ。「わざとらしさ」や「いやみ」がない、というか。
だからこそ、「リアルさ」を感じさせてくれるものになっているんじゃないかな、と感じましたね。


一方で、読了後に感じる「不思議な気持ち」はそれはそれとして、ややスッキリしない部分が残っています。スッキリしないからこそ、不思議な感情が湧いてくるってことなんですけど、ここについては、ちょっと考え込んでしまいます。

どうやら、「設定資料集」を読むことで、そのモヤモヤは解消されるらしいのですが、「設定資料集まで読んだ上でないと作品の真価が分からない」というものについて、ちょっとだけ考えないこともないのです。
しかも、その「設定資料集」は単なる「データ集」ではなく、「物語の理解」へ直結してるからなんですよね。

つまり、ここに於いて、この作品の「読了」には2種類あるということになります。

  ・普通に「ノベルゲーム」を読了した状態

  ・「ノベルゲーム」読了後、設定資料まで読んだ状態

です。
そして、今……必然的に前者を選択せざるを得ない状況にあるわけで、ちょっとだけフラストレーションはたまりますね……。


そうはいっても、この作品はなんだか心に染み込んできますし、冒頭でもお話ししました通り、強烈な印象を残します。

ただ、「設定資料集」が残っているということは、その作品を100%理解していないわけで、その辺りで微妙に考えたり、葛藤があったりするのですw

ゲームそれ自体でしか判断出来ない、というのも1つの真実だと思うけれども、「これも読んでね!」とか「これを読んで100%」ってものがあった場合、その作品の理解をどこに依拠したらいいんだ? って感じです。

ま、これはつまらない蛇足ですね。


単純な感動モノ、とは絶対に言えない、ヒリヒリとした感触、ほろ苦い部分、痛い部分。
色んなものを感じさせてくれる作品です。

是非ぜひ、お読みくださいませ(今だったらandroid版がおすすめ)。



それでは、また。
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by s-kuzumi | 2015-12-26 18:17 | サウンドノベル


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