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久住女中本舗

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2016年 02月 29日

フリーサウンドノベルレビュー 『路地裏の不思議な少女』

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今日の副題 「不思議ですごい物語世界」

ジャンル:ボーイミーツガール(らしい)
プレイ時間:二時間未満(私がプレイして1時間40分)
その他:選択肢なし、一本道
システム:YU-RIS

制作年:2016/2/23
容量(圧縮時):216MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、ちょっと不思議な感触の作品をプレイいたしましたので、ご紹介。
電脳詐欺」さんの『路地裏の不思議な少女』です。ダウンロードはこちらからどうぞ。
良かった点

・柔らかい水彩風のイラストが素敵

・不思議な魅力に満ちた作品世界

・どのキャラクターにも物語内での「存在感」がある


気になった点

・割と多めの誤字

・強烈な盛り上がりには欠ける(※後述)

ストーリーはふりーむの方から引用しておきましょう。
走るのは少年。

流れ落ちるのは汗。

過ぎていくのは時間。

聞こえるのはセミの声。

節目の日はとある夏の日。

路地裏で見つけたのは
       

  不思議な少女。

こんな感じ。


こうしたストーリーの発端部分を読むと、「あっ、行き倒れ少女を拾って同居するタイプだ!」と思ってしまうのですが、実はあまり目にすることのないタイプの作品だったのです。

確かに、「謎の少女を拾う→同居する」という流れ自体はあるのですが、主人公は「一人暮らし」ではありません。

シェアハウスの管理人をしているただの高校生なのです。
そして、シェアハウスの住人は主人公以外は女性ばかり。

この段階から既に、「ちょと違う」のが分かるのですが、さらにその「シェアハウス自体」が「能力者」たちの一つの拠点になっていることも判明します。

そう、本作は異能力ものの趣があり、秘密の組織や秘密の都市といったキーワードも登場するのです。
その意味ではどこかSF的な世界であり、また独特の水彩風のイラストによって、現代日本が舞台であるにも関わらず、ファンタジーの雰囲気すら漂っています。

プレイしていると、それが「現代日本」であることをどこか忘れてしまうような、何とも言えない不思議な作品世界。そしてそれはシェアハウス内部の背景イラストや、タイトルにもある「路地裏」の背景イラストでも確認できます。

普通の家の構造……とはちょっと違っていて、また路地裏も、それが道であることはわかるのですが、どこか現実感に乏しいような、一見すると奇妙な感じ。
それはもちろん、本作に於いて「マイナスポイント」というのではなく、「こういうのって今までなかったよね」と感じさせてくれるような、表現だったのではないかと思います。

一応ふりーむの作品一行説明を見てみると「とある夏のボーイ・ミーツ・ガール」」と書かれているのですが、ちょっとそれは単純すぎるかもしれません。しっくりくるジャンルがなかなか見つかりませんし、こういう作品の場合「ジャンル」を無理に当てはめないほうが自然ですよね。


さて、内容に関しては、登場人物がそれなりに多いのですが、どのキャラクターにもしっかりとした存在感があってよかったな、と思いました。

割と登場人物が多いノベルゲーム/サウンドノベルでは、一部のキャラクターにのみ「存在感」というか「存在理由」が偏ってしまい、その他のキャラはただの「にぎやかし要員」になったりもするのですが、本作の場合、そうしたこともなく、しっかりとどのキャラも個性が立っていて、そこはすごくいいポイントだと思います。

個人的には、ちょっとクセはありますが、個人的には「まゆ」、そして「佐藤」が好きかな。


さて、気になった点ですが、ちょっと誤字が多めかも。
たとえば、「夜中」に主人公ハジメが外出しているシーンから、物語は始まりますが、その際、「午後一時」なんて書かれてるんですよね。

これは夜中ですから、「午前一時」の誤りでしょう。あっ、これは誤字ではなく誤謬か。
ともあれ、ちらほらと、誤字が出てきていて、あれ? というようなことがありました。


もう一点は、私はあえて気になった点に挙げてしまったのですが、「割とあっさり目のストーリー進行」だということです。

作品後半で大事件が起こり、グググッとお話しが盛り上がって、ラストに向けて収束していく。
というよりは、もう少し淡々とした感じ。

もちろん、ちゃんと物語には起承転結とでもいうべき、きっかけや事件は起きるんです。
そして、それらが絶妙に配置されていることによって、プレイしていてダレない、というのも事実です。
秘密の組織が明らかになって以降、話は急速に面白くなっていきますし、比較的最初のほうで張られた伏線が、最後にちゃんと回収されるなど、丁寧な作りでもあって、本当に面白いんです。

しかし、なんかそうした事件は比較的あっさりと描かれ(バトルシーンもあるのですが、そこにはすごい力が入っていたように思います!)、なんとなくの感触ですが「淡々」という印象があるんですよね。

でも……。
気になった点に挙げておいてなんですけど、本作の雰囲気そのものが「ファンタジックで、SF的な要素もあって、ちょっと不思議」なものですから、むしろこの「淡々」さはそこにマッチしている、と考える人もきっといるはずです。

実際私も、そういう風に思えなくもないのです。
ですので、意外と「気になった点」を挙げるのって難しいんですよね……。


おおよそ、こんなところでしょうか?
物語の最初の流れだけ取り出してみると、「お決まり」のパターンではあるものの、ふたをあけると、今までみたことのないような、なんとも不思議で魅力ある世界が広がっている。そんな作品でした。

これはちょっとプレイしてみる価値がありますよ!



というわけで、今日はこのへんで。
それでは、また。

by s-kuzumi | 2016-02-29 21:46 | サウンドノベル | Comments(3)
Commented by 西日本 at 2016-03-01 10:45 x
久しぶりのコメント投稿です。

2016年以降も従来と変わらぬ精力的なレビュー記事から、道玄斎氏の変わらぬフリゲへの姿勢を伺う事が出来ます。

数か月近くも氏へのコメントをする機会を失っていたにも関わらず、今回コメントをさせていただいた理由は、

サウンドノベルレビューサイトの代名詞であったnagisanetが、三月末に閉鎖する事実を目にしたからなのです。

投稿動画でのレビューや生演奏にも参加させていただき、氏のレビューとの比較を楽しみとしていた自分にとっては、

非常に残念かつ惜しいという複雑な心境を抱いている次第です。

故に、現在においても前向きかつ的確な考察をされている氏の存在が、益々貴重なものとなっていると思いますので、

今後も変わらぬレビュー記事を更新していただけると幸いです。

それでは
Commented by s-kuzumi at 2016-03-01 22:57
>>西日本さん

コメントありがとうございます。

ここ数年、すっかりレビューの更新も滞ってしまい、本当にのんびりのんびりやっています。

さて、Nagisa netの閉鎖の件ですが私も仄聞しております。このブログも随分とNagisa netを参考に(というかパクり)をして体裁を整えたりということをしてきました。

やはり寂しい気持ちはありますね……。
ただ、それがNaGISAさんのご決断である限り、それは仕方のないことだと思いますし、色々とご事情もあるのでしょう。

いや、もう私のほうは、本当にマイペース且つ「草の根」の活動をしていく、というのを当初から標榜していますし、今度私のほうもどうなるのか、それは現時点では分かりませんw ただ、今のとこはもうちょっと続けようかな? とは思っています。

私達が運営しているNovelers' Materialという素材サイトもアップデートの作業なんかもありますし、もう少し、この世界の片隅で活動するつもりではありますw

本当にペースは落ちていますが、やり続けている限りは、応援して下さればとても嬉しく思います。


それでは、このたびはコメント、本当にありがとうございました!!
Commented by Low at 2016-03-09 21:11 x
こんばんは~ 道玄斎さん^^

あっ ほんと ちょっと不思議な感触でしたね。

ここ読む前に書いた私の感想の題名も 『不思議な感触』でした^^;

あっちのほうでは あまり内容にかかわること書けないので書いてませんが こちらに書かれてたこと うんうんと読ませてもらいました。 
胸に落ちました。 ありがとうございました^^
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