2007年 07月 24日

フリーサウンドノベルレビュー 『カレイドスコープ』

b0110969_17343634.jpg

今日の副題「基本こそ王道」

※大吟醸
ジャンル:女の子の成長(?)
プレイ時間:3時間くらい。



道玄斎です、こんにちは。

今日は、ずっと、とある理由からプレイしなかった作品のレビューです。

というのも、この作品は、私がフリーサウンドノベルの世界に足を踏み入れた当初からお世話になり、又絶大な影響力を持ってきたレビューを大量に書かれている方の作品なのです。
故に、なんかプレイしちゃいけないような気がしていて、ずっと躊躇していたのです。
憧れの人に、逢いたい反面、逢いたくないような……。観たいけど、観ちゃいけない気がする……。

そんな自分にとっての特別な作品なのです。
しかし、今回、思い切ってプレイしてみたのは、

・レビューを自分でも書くようになって、原点に戻るという意味で、自分のフリーサウンドノベル人生に最も影響を与えた人の作品を、レビューしてみたくなった。

というのが一番大きな理由です。
正直、自分の偏向を入れた評価を下してしまうのか、それともそう思われないように敢えて低い評価を付けてしまうのか……。自分でも悩んだのですが頑張って評価をつけました。



さて、本作NaGISAさんの『カレイドスコープ』のレビューです。
正直、圧巻です。
勿論、私が作者のNaGISAさんに心酔している、という偏向もあるのですが、これは凄いと思いました。


良かった点

・基本に忠実。
・音楽が自作で、他のサウンドノベルでも良くお目に掛かる楽曲。
・病院関係にお勤めされている、という作者のバックグラウンドが良く活かされている。
・きらりと光る脇役達。



気になった点

・背景画像が、全て「キャンバス地」的な加工がなされていて、観にくい。長時間観ていると背景で疲れてしまう。
・改行ごとの一字下げ。俺は何故かこれが気になってしまう。気にならない人には全く問題ない所。
・微細な点だが、梓の年齢が19歳なのか18歳なのか、分からなかった。時々によって違ったような……。


大体、こんな所ですかね。

流石にあのレビューをお書きになっている方です。
とにかく、丁寧で基本に忠実なゲーム作りです。
ただの受け狙い的なギャグを省いたり、余計な描写やエピソードを省くだけで、これだけすっきりと一個の作品として纏まるのか、と思わされました。

非常に興味深かったのは、入院の様子が中盤あたりからメインとなるのですが、そのナースステーションの様子や、病室の描写など病院内での描写が、凄くいいです。
病院関係で働いておられるバックグラウンドが遺憾なく発揮されています。

私も入院に関してはちょっとしたマニアでして、というのも物心付く前から、しょちゅう入院しているからなんです。昨年は肺炎で三週間くらいですかね、入院しました。
そういう関係で、サウンドノベルであっても病院の描写にはちょっとうるさいのですが、本作では、ナースステーションが戦場になる時間の描写など、凄くリアルで良かったと思います。
自身のバックグラウンドをゲームに活かしていく、というのは良いですね。
そうする事で文章や物語に説得力が生まれますから。

あとこれは特筆すべき事なのですが、脇役が抜群に良いです。
寧ろ、主人公達じゃなくて脇役こそが物語を支えている、という氏の主張を裏付けるような、素晴らしい脇役の活躍ぶり。場面によっては脇役が主人公になってしまうようなシーンもありました。
特に片桐先生。脇役にもかかわらずちゃんとキャラの味付けがなされていて、仏頂面で冷たい医者に見えるけれども、実は何よりも患者の事を考えている優しい先生です。
この片桐先生が、いなければ本作は駄作になったかもしれない、といえるくらいの重要キャラです。一種の医者の理想像ですよね。


欠点に関しては、最初に列挙した通りで、背景が良くないです。
普通の加工していない写真じゃまずかったのでしょうか?流石にあのキャンバス地的な質感の背景しかないと、疲れてしまいます。そういう加工をする事によって、色味も悪くなってしまっている所もありました。

次に改行の一字下げです。
俺はどうしても気になってしまうのですよね。
例えば、今書いているように、改行の際に一字下げを行わない、というのは、ノベルゲーム型式にした際、見にくいなどの欠点があるのでしょうか?
サウンドノベルは、基本的にテキストを目で追うゲームですから、目線が、一字下げの分移動するのが続くと、妙に疲れてしまうのです。



大体、良い点・悪い点は以上です。

しかし、別段「新しい」と感じさせるものはないのに、ここまで完成度の高いノベルが作れるんだな、と素直に関心しました。
人物の設定を丁寧に作り込む事。素直で読みやすいテキストを書く事。やはりサウンドノベルの王道はそういう所にあるのだと思います。
正直、このゲームは二日乃至三日くらい掛けて少しづつ、読む予定だったのですが、もう目が離せなくなって、一気に朝方までプレイしてしまいました。

めぐみが、一生下半身不随となってしまう、など重たいテーマではあるのですが、それを支える梓、明、和美、看護婦さんや片桐先生などの描写がしっかりしている為に、非常に前向きな作品となっています。
しかし、「みんなの支えで退院出来ました。ありがとう」で終わってしまわずに、障害を持ってしまった為に生じる社会生活で不利な面も、描写されています。これは一種のタブーなのですが、安直なハッピーエンドよりも全然説得力があるのです。
それでも、本作は尚前向きな作品で、けっしてプレイ中にどろどろしたものに引きづり込まれる事はないのです。

ご都合主義的な所はあるのですが、それは嫌味な在り方じゃなくて、必然的なものです。
これは現代のおとぎ話みたいな、そういう強くて大きい力を持つ作品だと思います。
ヒロインのめぐみが、最終的に梓を選ぶ理由も、丁寧な描写は過去の回想などを通して生まれた必然です。一方で、めぐみがアホ男に騙されるのも、現代のオンナノコらしさが出ていますよね。
あのアホ男が梓に殴り飛ばされた時は、俺は一人で喝采をあげましたよ?

テーマに向かっていく因果関係をしっかりと描写出来るかどうか。
そこがサウンドノベルのキモです。
中には、凄い斬新なテーマで、多少の粗を隠してしまうような勢いを持った作品があったりもするのですが、それはやはりそういう才能のある方の特権なんですよね。
基本というか王道は、丁寧でしっかりとした因果関係を描写する事、これに尽きると思います。


本作は、多くの人のプレイして貰いたいと思います。
プレイする側の人だけじゃなくて、ゲームを作っている人にも是非一読してもらいたい作品です。
是非是非、プレイしてみて下さい。
[PR]

by s-kuzumi | 2007-07-24 16:43 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by NaGISA at 2007-07-26 23:26 x
こんばんは。作者のNaGISAです。

非常に丁寧なレビューをしていただきありがとうございました。私が意図した点なども的確に書かれており(特に「主人公達じゃなくて脇役こそが物語を支えている」「テーマに向かっていく因果関係をしっかりと描写出来るかどうか」など。どちらも、私が非常に重要視しているポイントです)、レビューとしての質も大変高いと思います。

私の書いたレビューに大変影響を受けたとの事。非常に光栄の至りです。ですが、書かれたレビューを一通り読みましたが、正直私のレビューよりはるかに質が高いですよ。私も隠居する日が近いかも知れません(笑)。

とか言いつつ、私もノベルゲームをプレイする事は好きなので、隠居などと言わず、これを刺激にして、1人でも多くの方にノベルゲームの魅力を伝えられるようなレビューを書いていこうと思います。

大きなやる気を頂きました。ありがとうございました。
Commented by s-kuzumi at 2007-07-27 22:20
>>NaGISAさん

こんな所に来て頂いたばかりか、コメントまで頂けるなんて光栄です。
本当に感動しています。
かなり以前から、NaGISAさんのレビューはプレイする際の参考に、又純粋に読み物として楽しませて貰っていましたので、感動も又一入です。

まだまだ未熟なレビューで、本当にお目汚しになってしまったのですが、今後も少しでもNaGISAさんに近づけるように、頑張ってレビューを書いていきたいです。

NaGISAさんも是非是非、今後も素晴らしいレビューを書いていって下さい。一ファンとして何より楽しみにしております。
又、気が向いたら、こちらの方にも遊びに来て下さいね。


<< フリーサウンドノベルレビュー ...      迷惑メールの対処法。 >>