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2007年 08月 18日

フリーサウンドノベルレビュー 『Bye』

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今日の副題 「しあわせのありか」


お勧め指数(五段階評価):五
ジャンル:幸せを求めて(?)
プレイ時間:20時間前後



道玄斎です、おはようございます。
やっと、プレイが終了しました。本当なら昨日のうちにレビューを書きたかったのですが、予想外の長さで、結局こんな時間になってしまいました。
もし、待っていて下さった方がいらっしゃるなら、お待たせしてごめんなさい。

何しろ、フリーにして解凍時に280Mもあったもので……。
ということで、今回は「トラウムブルグ7番地」さんの『Bye』です。

兎に角、凄まじいまでのボリュームです。
レビューを書くのはこれだけ長いと難しいです。というのは、今まで割と短めの作品ばかり扱ってきたという事、そして短編と長編では自ずから評価基準が変わってくるという事があるからです。
もう少し分かりやすく喩えて言えば、商業ゲームと同人ゲームを同じ土俵で論じる事って難しいですよね。それに近い感じです。

加えて、本作はそのボリュームやシナリオなど全体のクオリティが、商業のそれとどこで区別したらいいのか、分からないようなそんな力作だったのです。
とはいえ、頑張ってレビューを書いてみます。



良かった点

・兎に角凄まじいまでのボリューム。フリーサウンドノベル業界で恐らく最も長編な作品。

・好みはあれど、高いレベルのイラスト。背景画像も凄まじい出来。

・伝えたい事が明確で、物語がそのテーマに向かい進行している。



気になった点

・誤字・脱字が多い。

・序盤の文章が妙にウケ狙い的なコテコテ感が。全体的にテキストが装飾過多な傾向が。

・各シナリオで共通する部分(勿論視点は違うけれども)が多く、読んでいてダレてしまう事がある。

・割と不幸の連鎖があるので、一気に読むと辛い。




こんな感じです。
ストーリーも適当な字数で纏められれば良いのですが、ちょっと困難なので、リンクを張ってお茶を濁す事にします……。

ストーリー・作品概要はこちら

なんていいますか、とにかく大ボリュームでした。
ボリュームのある作品はそれなりにプレイしてきていますし、商業作品もたまに買ってきてプレイします。それでも本作のボリュームは凄まじいな、と。いや、ヘタな商業ゲームよりも全然長いのですよ。
フリーのサウンドノベルで長い作品は、近年だと『時流』なんてかなりのボリュームがありましたし、古典的(?)名作では『ひとかた』なんてのもかなり長めだった記憶があります。
ボリュームそれ自体が作品価値の基準にはならない事は承知していますが、ボリュームがある、という事は作者がそれだけ「伝えたい事」「伝えるべき事」があったという事でもあるわけで、割と良作が多い傾向はあるように思います。

プレイしていて、先ず驚いたのは背景画像です。
イラストに関しては高レベルではあるものの、まぁ割とよくある感じでもあります。しかし、背景の力の入りようは半端では無かったです。商業作品でも通用するような高レベルの背景画像を、制作し作品に使っているのです。
音楽に関しては、この手のゲームが好きな人なら一度は耳にした事のあるような音楽も多く使われています。が、やはり場面とのマッチングが素晴らしいので、既聴感のようなものを気にする事はありませんでした。

気になった点でも書いたのですが、誤字・脱字が多い点、かなり気になりました。
一例を挙げると、「麗しい」が「潤おしい」になっていたり、「言葉の綾」が「言葉の彩」になっていたりと、結構気になります。
又、漢字変換率が高め(いや、このレビューもそうなんだけども)で、スムーズに文章が読みずらい印象もあります。これも例を挙げると「やけに五月蠅い」というような文章が「自棄に五月蠅い」となっていたりして。この「やけに」って漢字を当てると「自棄に」でいいんだっけ?という問題もさることながら、漢字変換可能なものは殆ど漢字を当ててしまっているので、ちょっと煩わしさを感じます。

文章も前半部は、よくありがちな文章です。
最初の一時間くらいは、ちょっと辛かったですw しかし第一シナリオの中盤くらいからはテキストの質が向上します。多少装飾が多いような、そういう印象はあるものの遥かに前半部より読みやすいですし、好感が持てる文章となっています。
ただ、敢えて言わせて貰えれば、もう少しあっさりとしたテキストの方が作品にはマッチしていたのかな?と思いました。さじ加減が難しい所だと思いますが、語り過ぎず、語らな過ぎずというバランスは重要です。


さて、肝心の内容ですが、それぞれ登場する女の子のエピソードを通じて、物語世界を描いています。
具体的に言うと、一つのシナリオをクリアすると、次のシナリオがプレイ出来るようになり、それをクリアすると又次のシナリオを、というような形式を採っています。
そういう意味では、明確な主人公が不在な作品でもあります。最初は総人がメイン視点となるのかな?と思いきやそうではなくて、傷を抱えた女の子達全員が主人公、という趣です。
しかも、シナリオに連続性は無く、所謂「共通ルート」的なものはあるのですが、それぞれのシナリオで内容が分岐します。

一本目のシナリオをプレイした時には、やったらめったら伏線というか謎が多くて、CLAMPの漫画みたいなイライラ感w があったのですが(それでも俺は『TOKYO BABYLON』とか好きなんだよなぁ……)、他のシナリオをプレイする事で、伏線や謎はちゃんと消化されていきます。
ただ、やはり前半部に読者に「??」を突きつけすぎている感じはあるんですよね。

ちなみにちょっとKEYっぽい感じもあります。
I'm ~心の向こう側に~」もKEYっぽさがある事で有名な作品ですが、「I'm」は『ONE』寄り(厳密にはKEYじゃないけれども)、本作は『Kanon』寄りな印象です。

特にそれが顕著に出ているのは、みんなのお母さん役「真由美」さんです。
普通に見れば、もの凄い味のある名脇役のキャラなんですが、私には『Kanon』の秋子さんに見えてしまう……。すっごい若作りで、何でもそつなくこなすくせに料理関係で難が(秋子さんは謎のジャム。真由美さんは朝から中華料理を作ったり)あったり、又おっとり口調もやっぱり秋子さんに似てるかな。
そういえば、舞台が雪国って所も共通していますね。


古館家に住む人間は、みな「半人前の幸せ」、或いはそれ以下の幸せしか持っていません。
半人前の幸せしかないけれども、誰かが居れば一人前以上の幸せになる。
それが本作品を貫く大きなテーマです。

総人やその友人の関口君、そして女の子達。
全員が全員、暗い過去を、消えない傷を、やり場のない苦しみを抱えています。
しかし、苦しみながらそれでもお互いがお互いの傷を知り、過去と向き合い今を生きるようになります。特にラストのシナリオはその集大成のような形でして、ちゃんと前向きなエンドを迎えます。救いようの無いエンドだったらどうしよう……って思っていたので、救われた感じです。

臓器移植に関する描写もありました。
そこで私の常日頃からの疑問、

「テレビで臓器移植の為の、資金集めなどのキャンペーンをやって貰える人とやって貰えない人が居る」

という悲しくも厳しい現実に対して、キャラクターをして語らしめていたのは良かったです。
ちゃんと、「助けて貰える人」と「助けて貰えない人」の差をどう捉えるか、という問題に真っ向から向き合っていて真摯な作品だと思いました。

ただ、全員が全員辛い過去があるわけで、不幸の連鎖をプレイヤーは味わう事になります。ちょっとプレイしていて辛い所がありましたね。シナリオの中には明るく前向きに終わるものがあるものの、全体的なトーンは暗めです。
視点や語られる内容は違えども、毎回どのシナリオでも瑠璃の死が扱われます。結末は同じで、更に重たい内容なだけにダレてしまいますし、ちょっとプレイしていて辛いです。そういう意味でこのボリュームがアダになっているような印象もあります。


色々と書いてきましたが、本作は力作です。
伝えたい事が明確であり、シナリオがそこに向けて描かれているので、多少の粗も気にならなくなるくらいの「基礎体力」的なものは十分に備わっています。
これがフリーっていうのが信じられないくらいで。これならお金を出して買ってもいいかな、という感じです。
シナリオのボリュームや丁寧な画像、なによりその創作意欲を評価して、お勧め指数は最後まで迷いましたが、五にしたいと思います。

プレイ時間は恐らく20時間前後か、それ以上になります。
感動系を求める人以外にも、お勧めします。KEYが好きってな人もプレイしてみると良いでしょう。

一気にプレイすると辛いので、少しづつ、ゆっくりと内容をかみしめつつプレイしてみて下さい。


※8/18日午前11時50分に少し加筆。いや、何しろ今朝これを書いた時には、もう半分眠っていたので、大事な事を書き忘れていたのです。
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by s-kuzumi | 2007-08-18 07:24 | サウンドノベル | Comments(0)


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