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2007年 08月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『雷雨』

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今日の副題 「夢か現か幻か」


ジャンル:サイコホラー(?)
プレイ時間:15分~20分
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

製作年:2007/?/?
容量(圧縮時):23.3MB


道玄斎です、こんばんは。
今日は、ちょっと変わり種の短編作品を取り上げようと思います。
空中喫茶」さんの『雷雨』です。



良かった点

・サウンドが恐い恐い恐い!息を潜める音とか、雨の中を走る音とか効果音がリアル。

・ホラー系にありがちなオーソドックスな怖がらせ方をしつつも、やっぱりびくっとなってしまう巧みな怖さの演出。

・画像も凝っていて、気味の悪さや恐怖感を上手に演出。



気になった点

・ラストまでプレイしても、なんだか良く分からないw



今日は、ちょっと変わり種の短編ホラーです。
どこが変わり種かと申しますと、どうやら作者さんはゲームや同人誌を作ったりするサークルの方ではなくて、音楽を作られている方らしいのです。
サイトの方も、自作の音楽を紹介する、というのが主題らしいです。が、一曲も公開されていないというw

私はホラー系のゲームが好きです。けれども、恐いのは苦手です。
昔「口裂け女」が流行った時期には、外に出る事が出来ずに半分引きこもりになったくらい、恐いのは苦手なのです。
と、いいつつ妖怪の本とかをせっせと購入したり、都市伝説の類を調べてみたり、或いは『山海経』を読んでみたりと、一見矛盾した行動をとってしまうという……。
恐いのが苦手、と恐いのが好きというのは実は表裏一体で、逆に言えば怖がる心がなければ、ホラーは楽しめないんですよね。

さて、本作は一応、サイコホラーとしましたが、作品自体がジャンル分けを否定するような、そうした作りになっています。
ちょっと泉鏡花の『草迷宮』に似てるかな?
ああいう、不思議で幻想的で、ホラー的要素が満載の作品です。

先ず、プレイして驚かされたのは、効果音です。
人間の息づかいだったり、包丁で野菜か何かを刻む音、床が軋む音。とにかくリアルで、恐怖感を盛り上げます。

ストーリーは、


一人で留守番をしているユウは、昨夜見た夢を手紙にして書いている。そこに、母親の姿をした(顔は近所のスーパーの紙袋を被っている)謎の人物が包丁を持って現れて……。


というもの。
しかし、単純にその謎の人物Xと丁々発止にやり合うとか、そいつから逃げるとか、そういうのがメインではありません。
寧ろ、その怪人Xが何喰わぬ顔をして佇む世界に、いつのまにか入り込んでしまった、そういう怖さを描く作品です(なのかな?)。

夢と現実の境界が曖昧になっていき、夢のような世界が「表」になってしまう怖さは、人間の特徴の一つである「夢を見る」というものに恐らく関係する、原初的な恐怖を煽るものです。

ちなみに脱線しますが、多くの人がそれぞれの「お得意の夢のパターン」みたいのを持ってるそうです。私の場合ですと、ここ半年くらいずっと「階段」が出てきます。
必ず、夢の中で私は階上か階下にいて、上、又は下に移動しなければいけないシチュエーションに置かれています。そこで「階段」を利用するわけですが、その上と下の境界である踊り場が、極端に狭くなっていたりして、移動が困難、もしくは不可能という状況に追い込まれるのがいつものパターン。

話を戻しましょう。
そんな夢的な世界で、ユウは怪人Xを刺し、何故か道ばたに現れたモンスター化したパンダと対峙し、人気の無い病院を彷徨います。
途中途中で、グロテスクなキャラが出てきてユウを導いたり、或いは襲いかかってきたりします。
こうした部分は、ホラー作品ではオーソドックスなものだと思いますが、あくまで「あっちの世界」が「表」になってしまっている、という舞台設定のせいで、妙に新鮮な怖さを感じます。

多くのホラー系の作品では、舞台はあくまで「こっちの世界」。その日常に「あっちの世界」からの住人が現れる事で恐怖を演出します。
本作では、「こっちの世界」がもう既に「あっちの世界」になってしまっているんですよね。分かりにくいですけれども。

もっと言えば、「あっち」と「こっち」の境界が非常に曖昧になっている。曖昧さそのものの世界。それが本作の舞台です。物語のラストで、その境界の不確かさみたいなものが示されていると思うのですが……。

境界といえば、ホラー系の王道でもあります。
そうですね、例えば、古くは『今昔物語』などにも見られるテーマです。
妖怪から逃げる為に「屋根裏」に隠れる、或いは「橋の下」に隠れる。これは、「上」でも「下」でもない一種の境界空間だそうで、だからこそ妖怪を避けることが出来るらしいのです。

その本当なら怪異を避ける事の出来る筈の境界空間そのものが、怪異に満ちている。そして「こっち」と「あっち」が曖昧で、どこにも怪異を避ける場所がないとしたら?

本作は、そんな「こっち」と「あっち」の曖昧さの恐怖そのものを描いている印象でした。
んー、なんか捉えづらい作品なので、脱線しまくりで、こんな解説しか出来ませんが、ちょっとでも興味を覚えた方は、是非プレイしてみて下さい。

作者さんが、フリーの効果音・サウンドなどを公開してくれるとちょっと嬉しいですね。
恐怖系のノベルゲームのサウンドの質を変えてしまうような、そんな素晴らしいサウンドでした。
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by s-kuzumi | 2007-08-20 00:45 | サウンドノベル | Comments(0)


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