2007年 08月 25日

フリーサウンドノベルレビュー 『終わりに見えた白い明日』

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今日の副題 「ノベルゲームである、という事」

※吟醸
ジャンル:ボーイミーツガールノベル(らしい)
プレイ時間:三時間~四時間くらい



道玄斎です、おはようございます。
今日も今日とて良い作品を引き当てたな、という気がしています。
評価は四としたのですが、限りなく五に近い四だと思って下されば。かといって「~が足りないから四にした」っていう訳でもなくて、何となく自分の中の感覚です(五段階評価だとこういう時に不便)。
理詰めで「~があるから+1」とか「~があるから-1」とかで総合的な評価を決める、というのも一つの方法だとは思うのですが、それだと「評価ポイント」だけを確実に稼ぐ作品は、多くの場合、最高点になってしまう気がします。

ちょっと分かりにくいですかね。
例えば美術の授業とかで「イスを描きなさい」という課題が出たとしましょう。中には凄い頑張って、彫り物がしてあったり、形が凝ったイスを描く人がいると思います。けれども、そのイスは複雑な作りをしているので「完璧なイスの絵」にはならない可能性が高いです。一方でそれこそ学校のイスみたいな、簡素で描きやすいイスを描く人もいるでしょう。その場合、描く対象が簡素なものですから「完璧」でケチの付けようのない絵が描ける公算が高くなります。
最終的に、「どれだけ完璧にイスを描けたか」という基準で、この二つのイスの絵を評価するならば、後者の方が「完璧」になる公算がやはり高くなるでしょう。
まぁ、分かりにくいんだけども、そういう事ですね。

いや、決して今日扱う作品が「学校のイス」と言いたいわけではありません。
寧ろ、凝った細工のイスなんだろうなぁ、と。けれども、上記の理由から私は「自分の感覚」みたいなものを大事に評価点を(大変に烏滸がましい事ではありますが)付けようと思っていまして、一応、五段階評価という事で四にしたのです。気持ち的には4.8とか、そういうものだと思って下されば(と言いつつ、後でこっそり評価五に変えるかも……。実はまだ結構悩んでいるのです)。

さて、今日ご紹介するのは、「White Epilogue」で有名な「Reice -second-」さんの『終わりに見えた白い明日』です。

こういうレビューを書くようになってから、自分の基準で評価しつつ、作品を読む、という癖が付きました。なんだかんだで30本くらいレビューを書いていると、プレイ直後に「これは、このくらいかな?」と大体の目測を付けてしまうのですが、中には中盤・後半からもの凄い勢いで、引き込まれていく作品や、徐々にクオリティが上がっていくような作品があり、毎回驚かされると同時に、自分の浅はかさを思い知らされます。
本作も、そんな初見の目測を見事に裏切ってくれた、そんな優れた作品でした。



良かった点

・「ノベルである事」を利用して、読者の予想を見事に裏切ってくれる。

・緊張とその緩和。このバランスが素晴らしい。

・丁寧に描かれており、読後の消化不良感が無い。脇役に至るまで丁寧にフォローが行われている。


気になった点

・最初のテキストが、やたらウケ狙いっぽく、或る意味で「くどい」文章な為、作品の真価を気付かず、プレイを中断してしまう人がいるのではないかと、心配になる。

・最後に追加されるシナリオは、独立させなくても、本編内に収めれば良かったのではないかと。



こんな所ですね。
微妙に「気になった点」で「良かった点」を挙げてしまっているような気がしないでもないですが。

ストーリーもさわりの部分だけ、記しておきます。なるべくネタバレを回避しつつ……。


ある日、妙にハイテンションな主人公は、路地裏で不良に絡まれている少女を見つける。
主人公は助けに入るものの、実は少女はとてつもなく強く、あっという間に不良をのしてしまう。これが、主人公と須藤紅との出会いだった……。



このくらいに止めておきましょう。
少しだけフォローしておくと、本作は、こういうベタベタな設定を逆手に取るのが上手い作品だという事です。

さて、ずっとつらつら書いてきましたように、本作はかなりの傑作なのではないかと思っています。「White Epilogue」は大体のストーリーは覚えているのですが、あまり印象に残らなかった為か、本作を侮っていました。readme.txtを見ると、

「White Epilogue(評価版)」のおまけとして付属されていたノベルゲームです。

なんて事が書いてあるわけですが、おまけだなんてとんでもない。
個人的には、本作の方が一個の作品として、優れているのではないかと思います。
サイトの方には、ジャンルとして「ボーイミーツガールノベル」と書いてあるのですが、これを鵜呑みにしてはいけませんw


良かった点で挙げましたように、本作は、読者の予想を(勿論、良い意味で)裏切る優れた作品だと感じました。
最初は、ジャンルなんて見もしないでプレイしたのですが、開始五分で「ああ、伝奇なのか」と思ってしましました。その後プレイしていく中で他にも当初の予想を覆されましてw 
けれども、本当に感心してしまうような裏切り方をするんですよね。変な「ギミック」ではなくて、「仕掛け」として機能する。そんな印象です。

又、「仕掛け」に関わる部分でもあるのですが、緊張の緩和を演出していたのは良かったですね。『ガラスの仮面』で月影先生が「緊張と緩和。それを生み出す役者は注目を集める」とか言っていたのですが、こうした形式のゲームでは、ストーリーの起伏の有無が大きく作品の印象を左右する事があります。
全体的に見ると面白い。だけれども何だかのっぺりしてたな、とか感じる事が私は良くあります。ストーリーラインもキャラクターも音楽も背景も良いのに、何故かあまり印象に残らない。そういう時には、大抵「盛り上がり」に欠けていたり、つまり起伏に乏しい作品である事が殆どです。

私が今指している「緊張と緩和」とは、テキストです。
テキストって言ってしまうと誤解があるかな。会話文であり地の文、と言った方がより正確でしょう。すっごい軽いノリの良いんだか悪いんだか、それすらも分からない日常の描写や会話の間に、とてもシリアスでストーリーが絡んできます。
当然シリアスモードの際には登場人物は一切おちゃらけませんし、それを描写する文章も洗練されていて見事に「落差」を演出してくれます。そしてその「落差」自体が物語の中で大きな意味を持っているという。
おちゃらけモードは結構くどいし、読んでいて辛い所もあるのですがw それを抜かせば本当に圧巻です。ありそうで無かった「仕掛け」でした。

今つらつらと述べてきた事と密接に関係するのですが、後半に明かになる「ノベル」ゲームである事を活かした仕掛けも非常に良かったと思います。是非、プレイして「仕掛け」が何なのか確かめて欲しいと思います。


気になった点は、おちゃらけモード(のくどさ)以外ではラストシナリオですね。

そこで語られる内容は、実は物語それ自体とやはり密接に絡み合うもので、独立させずとも、本編の中でうまく消化した方が良かったのかな、と思いました。
ラストシナリオは、脇役の透と鏡子の本編で語られなかった部分の描写なのですが、そこで物語が幕を下ろしてしまうのは、ちょっとアレかな、と。
脇役キャラから見た、本編ラストの捉え直し、というのであれば十分許容出来るのですが、最後の最後で脇役メインのシナリオになってしまったので、そこが物語のラストなだけに残念でした。


まぁ、何て言うか傑作でしたよ。
ここまで、面白い「仕掛け」が沢山仕込まれているゲームはあまりお目に掛かった事がありません。
そうそう、言い忘れていましたが、本作も舞台は「終末」系ですね。人口減少に喘ぐ時代。それが本作の舞台です。

随分、今日はいつにも増して、長々と書いた感はあるのですが、敢えて触れなかった部分もあります。そこは物語の中でもかなり重要な部分ですので、是非プレイして確かめてみて下さい。

初心者の方から、古参ゲーマーまで幅広い層にお勧め出来る秀作です。
前半部のテキストでウインドウを閉じずに、ちょっと頑張ってみて下さい。きっと物語に張り巡らされた「仕掛け」に驚くこと請け合いです。


/* 久々に徹夜プレイをしましたな……。これから眠ります……。いい加減、煙草を止めるか本数を徐々に減らしていくかをしなければならない、と思う今日この頃 */
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by s-kuzumi | 2007-08-25 07:36 | サウンドノベル


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