2007年 09月 06日

フリーサウンドノベルレビュー 『卑怯な温もり』

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今日の副題 「それは若さ故の過ちか……」


お勧め指数(五段階評価):二
ジャンル:独白懺悔録(?)
プレイ時間:一時間半くらい



道玄斎です、こんばんは。
結局、日にちを跨いでの更新ですね。
今回は、タイトルが妙に気になっていた久遠寺蒼さんの『卑怯な温もり』です。
本作は、「薔薇薔薇のピースにさよならをシリーズ」の第一作目だそうで、実在する音楽をイメージして作るノベルゲームらしいです。シリーズとはいえ、それぞれに連続性が無さそうなのでレビューとして取り上げる事にしました。
良かった点

・懺悔録のスタイルなので、「のぞき趣味」みたいなものを刺激してくれる。

・何て言うか、本当に大学生くらいにありそうなリアリティ。お酒の名前や、地名や店名などが伏せ字ではなく実在する商品名を挙げているので、余計にリアリティを感じる。


気になった点

・ちょっとくどい文章。

・結局、主人公ワッカが太宰治的なナルシズムに満ちていて、合わない人はとことん合わない、人を選ぶ作品かも。

ストーリーはですね、ワッカなる大学生が、ユリ・リエという二人の女性との関係の懺悔をする、というものです。いや、別に18禁とかじゃないんですよ?
けれども、何て言うか妙に自虐的で、しかもその自虐に酔ってしまうような、そんな割とありそうな大学生像を見せてくれます。『人間失格』っぽいって言えばいいのかしら?

以前の「箸休め」で書いた、「なんでこういうノベルゲームって主人公が高校生なんだろう?」という私の疑問に或る意味答えてくれた作品だったりしますw 大学生を主人公にして尚かつ、リアリティを出そうとすると、こういう風になっちゃうのね、っていうw

さて、皆様はこうしたノベルタイプのゲームをプレイする時、どのようにプレイするでしょうか?
飽くまで「読む」ゲームですから、読書とは違うけれども、自分の想像力を或程度使うような気がしています。
私は、読みながら、場面場面で例えば高校生活の描写が出ていたら、自分の高校生活を微妙に思い出したり、或いは重なる部分は重ねてみたり、とそんな事を無意識のうちに行っています。
「こんな施設、俺の高校には無かったよ……」
とか、
「あー、こういう事ってよくあるよね」
とか、無意識的に考えて、或いは実体験と重ねてプレイしてしまうのです。

本作も無意識的に、そういう事をやりながらプレイしていたんですが、大学の描写(背景)や大学近辺の公園の描写などを読みながら、「何かヤバイくらいに分かるんだが……」と思っていました。
先程、サイトの方にて作者さんのプロフィールを見たら、どうやら後輩のようで。
私は戸山女子大学ってところを卒業しているのですが、どうみても本作に出てくる公園ってあの公園だよねぇ?ジョナサンっていうのはあそこのジョナサンがモデルなのかなぁ?いや、違うのかもしれないけれども……。


本作は読んでいて、「痛さ」を感じる作品です。
それは、私も大学生なる時期を通過しているからだと思うのですが、何て言うか本当に身の回りで起こったり、或いは自分自身の身の上に起こった事と重なるような、そんなリアリティを感じるからなのです。

ユリなる登場人物は、本当にあのくらいの時期の女の子で居そうな「リアリティ」を最も体現しているキャラかもしれません。男から見ると何考えてるか分からない。それに男は馬鹿なことに振り回される……。まるで『三四郎』みたいですな。

一方、リエの方はリアリティという面から見ると、ユリほど「居そうな」感じはしません。
寧ろ、男が抱えている(抱える/抱えるかもしれない)女性に対してのちょっとした希望と罪悪感を体現したキャラみたいな。

良かった点でも書いたのですが、固有名詞をぼかしたりせず表記している為、「今自分が居る世界」と「作中世界」が同じ世界だと意識させられます。
ここまでリアリティのある作品は、実は珍しいのではないでしょうか。
ただ、リアリティがある分、ゲームに対して「夢」や「希望」を託す事が出来ないのは、大きな欠点でした。せめてゲームの中だけはユートピアであって欲しいとか、そういうのが期待出来ないのです。
つまり、長所と短所が表裏一体に存在しているような手触りです。

リアリティに苛まれるというか。
ですので、あまり読後感は良くありません。見ている(読んでいる)のが辛くなるくらいに、大学生特有の「若さ」を感じてしまうのです。精神的な未熟さだったり、対人関係のスキルの無さや自虐的な行動や発言。多くの人がその時期持っていたであろう「傷」みたいなものをえぐり出してしまう作品です。

その点、プロローグや、後書きなどで示唆されているのですが、やっぱりちょっと辛い所がありますねw
今、正に大学生!っていう方がいらっしゃったら、一読する事をお勧めします。共感する/共感出来る部分も多いのではないでしょうか?又、太宰治ファンにも……。
本作が気に入った方は、他の作品も見てみると良いでしょう。
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by s-kuzumi | 2007-09-06 02:24 | サウンドノベル


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