久住女中本舗

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2007年 09月 27日

なんてことない日々之雑記vol.8

道玄斎です、こんにちは。
昨夜は、ちょっぴり恐い作品を紹介したので、少し恐い話でも書いてみようかしら?と。

私が今まで読んできた古典文学の中で最も恐い、と思われるものを現代語に訳して(補足したり、削ったりして)記してみます。ご存知『伊勢物語』の九十六段です。


昔、男がいました。
その男は、ある女に言い寄っており、そうしたアプローチは長い間続きました。
女の方は女の方で、岩や木のように心のないものではないから、男が可哀想と思ったのでしょうか。段々男に気持ちを寄せるようになってきました。

六月十五日の頃だったので、女の体にはできものが一つ、二つと出てきました。
女は男にこう言って寄越しました。

「今は、もう貴方のお気持ちに答えるつもりです。しかし、体にできものが一つ二つ出来てしまいました。暑い時期ですし、少し秋風が吹くような時になったら必ずお会いしましょう」

さて、秋を待っている頃に、あの男のもとへ女が行ってしまうだろう、なんて噂が立ち、もめ事になってしまいました。
そんな噂を受けて、女の兄は、女を急に迎えに来てしまったのです。そこで、女は楓の紅葉葉を拾わせて、歌を詠みそれに書き付けました。

「秋になったら、と言いながら結局は逢わず仕舞いになってしまい、浅い縁でございましたね」

と、このように書いて「あちらからお尋ねがあれば、これを渡しなさい」と言い残して、女は兄に連れられて行ってしまった。
さて、それから結局、今日に至るまで女がどうなったのかは分かりません。幸せになっているののでしょうか、それとも不幸になっているのでしょうか。行き先も分からないままです。
一方、男の方は天の逆手を打ち、呪いを掛けているとの事です。薄気味の悪い事ですね。
人が掛ける呪いは効果があるのでしょうか、それともないのでしょうか。男は「今に見ていろ」と言っているそうです。



こんな感じ。和歌の部分はもっと複雑なんだけども、読みやすいように極力単純に。
いや、恐いよねぇ……。別に妖怪が出てきたりって事じゃないんだけれども呪いを掛けるっていう行為そのものが、もう恐すぎ。そして最後のセリフ「いまはこそみめ」。これが恐い。恐い恐い恐い……。

非常に有名な『伊勢物語』なわけですが、私にはこの物語でどうしても不可解な部分があります。それが、「男は結局誰に呪いを掛けたのか?」です。
尤もシンプルに考えるならば、女に。もうちっと穿った見方をすれば、女を連れ去ってしまった女の兄貴に。
こういう「分からなさ」みたいのが、余計に恐い想像力を掻き立てているような気がしますねぇ。

因みに天の逆手とは、呪いの所作だそうです。
詳細は分からないのですが、柏手のバリエーションみたい。上下逆さにして柏手を打つとか、色んな説があるようですね。
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by s-kuzumi | 2007-09-27 16:57 | 日々之雑記


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