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2007年 11月 03日

フリーサウンドノベルレビュー 『自称幽霊』

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今日の副題 「何となく鎌倉」


ジャンル:過去と向き合う(?)
プレイ時間:約一時間
その他:選択肢なし、一本道。



道玄斎です、こんばんは。
自分の見通しの甘さで、今非常に忙しいです。いや、ちょっと換算方法を間違えていて、これから二月くらいの間、死ぬ気で作業しないと春を迎えられそうにありません……。
けれども、こうやってちょこちょこと更新が出来たらいいなぁ、と思いながら今日もレビューを書いてみます。
というわけで、今回は「プロジェクトついんてーる」さんの『自称幽霊』です。
良かった点

・テーマがはっきりしており、盛り上がるべき所がきっちりとある。

・意外と考えさせられるテーマを持っているように思える。

・或る意味で、非常に「日本文学的」な話だと個人的に思う。


気になった点

・タイトル画面は備えていて欲しい……。又、セーブする時、どのポイントでも「スタート」という名でセーブされてしまう。

・特に前半部分の、文章が過剰で、読みにくい所がある。

・もう一歩、ひねりがあった方が良かったかも。

ストーリーの方は、サイトから引用しておきましょう。
高校三年の冬休み。
とある高等学校の寮に住んでいる少年――有馬康生は、
大学への進学が決まり、親との話し合いのため里帰りをすることになる。
賑やかな実家に、自然とはしゃぐ康生。
そこから抜け出し、康生はある場所へと向かう。

そこは霊園だった。
長く見ぬ少女の姿を求めた先。つまりは死者を埋葬する土地だ。
そんな地に少女がいた。
墓石に刻まれた名前を、康生がよく知る名前を――名乗る少女がいた。

こんな感じです。

割とありきたりな話です。
けれども、意外と読めてしまうし、テーマが明確だったせいか、一つの作品として纏まりも良かったと思います。

ストーリーをみると、「また『ぼたんゆき』か……?」と警戒してしまうのですが、その期待を裏切って、さらに裏返すみたいな、ちょっとした仕掛けがしてありますので、オーソドックスでありながら一ひねりある作品になっていたかと思います。

背景や、要所要所に表示される一枚絵なんかは、なかなか良いものがありますね。
キャラクターの性格付けも、最初は「これはどうかなぁ?」と思ったりもしたのですが、ラストのあたりで意外と「これでいいのかも?」と思えてしまいましたw

というのは、主人公康生の母です。
もう大学生になろうっていう男の子の母親なのに、高校生くらいにしか見えない小柄で可愛い容姿。オマケに主人公にベタ惚れ(?)。
弾丸のように抱きついてきたり、ほっぺたを寄せてきたりと、結構きわどいお母さんですw
「これはマズイよなぁ?」なんて思いながらプレイしていたのですが、後半、非常に母親らしい所を見せてくれます。寧ろ、前半の或る意味で突飛な設定があるからこそ、後半に見せるシリアスな「母親」としての表情が際だってくるように思えます。ちょっとやり過ぎな気がしないでもないんですが。
プレイを終えた時点で、一番のお気に入りキャラはこのお母さんとなってしまいましたw

これは非常に個人的な感想なんですが、何となくですよ?何となく鎌倉時代の物語文学に似てる気がする……。どこが?と問われれば明確に言えないのですが、例えば、康生が今は亡き父親と同じ境遇にして、同じ選択をする、という辺りですかね。
そういう一世代上の人物の行動をなぞるようなカタチで、第二世代の話が進み、尚かつ第一世代が果たし得なかった境地にまでたどり着く、みたいな所が、鎌倉時代の物語っぽさがあるかな、と思います。
勿論、鎌倉時代の物語って言ったって一枚岩じゃないし(それでも多くの作品が、それぞれ極めて似ている)、一律に語る事は出来ないのですが、上記に挙げた理由から私は本作が「日本文学的」だなぁ、と感じてしまい、非常に興味深く読むことが出来ました。

要は「愛する人の形代を求める」という事なんですが、例えば鎌倉時代あたりの物語だと「形代を求めたけれども、実際は別の変な相手しかゲット出来なかった」とか、或いは「求めている人とその代わりとなる人が別人である事への葛藤が無く、やすやすとそれを達成してしまう」とか、そういうパターンになると思うのですよ。
本作は、寧ろそういう「葛藤」みたいな所に力が置かれていて、そういう所は近代文学的な感じがしてしまうのでした。
まぁ、この辺りは素人の取るに足らない戯れ言ですので、聞き流して下されば幸いです。


さて、気になった点ですが、一点、致命的な点があります。
それは「タイトル画面」が無い、という事です。いろんな作品を今までプレイしてきていますが、タイトル画面が無い作品は初めてかもしれませんw
ゲームを起動すると、いきなり文章が始まってしまいます。いや、最初はてっきり序章みたいな部分を最初に描いて、タイトル画面が表示されたりするのかな?なんて考えていたらいつのまにかストーリーが進行して。。
タイトル画面がないものですから、最後までプレイしてもタイトル画面に戻らない。画面には「このまま閉じてください」みたいなメッセージが。

うーん、やっぱりタイトル画面は必要ですよねぇ。
イラストなどは先にも挙げた通りに、良いものを持っているんですよ。女の子(お母さんも!)は可愛らしいし、かといって没個性的な絵じゃないくて味わいがある。
だからこそ、なんか、イラストが付いたりとかそういうタイトル画面があって欲しかったなぁ、と思いました。

あとストーリーそのものというわけじゃなくて、全体を整える「デコレーション」みたいなものが、もうちょっと必要かな、と思いました。
例えばですよ?冬休みの間の出来事、という設定を念頭において、日にちの経過みたいなものを意識させると良かったのかも。何となく「あれ?もう寮に帰っちゃうんですか……」みたいな感じがしたので。
全体的な整合性みたいな部分でももうちょっとデコレーションが利いていると、かなり良い感じになったんじゃないかな、と思います。
キモの部分である優菜の設定も、ちょっとズルい感じだったんですよねw そういう意味でもう一歩全体を整えるような描写や設定の見直しが必要かなと感じました。
「気になった点」で挙げたもう一ひねりとはそんな感じの意味です。

とはいえ、意外と面白く読めてしまうのも又事実。
一時間くらいの作品では、密度は高かったと思いますし、色々と考えさせるテーマみたいのも内包していたように思えます。ラストの雰囲気もなかなかでしたよ?

次回作の情報を見てみると、シナリオ・イラスト共に本作とは違う方が担当されるようです。
そちらの方もいまから楽しみですね。
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by s-kuzumi | 2007-11-03 04:32 | サウンドノベル | Comments(0)


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