久住女中本舗

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2007年 12月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『春になると』

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今日の副題 「過去に揺れる花弁」


ジャンル:過去の因縁と今生きていく事(?)
プレイ時間:三時間半~四時間くらい
その他:選択肢無し、一本道。



道玄斎です、こんばんは。
結局日付をまたいで更新ですね……。
今回は「空と雪」さんの『春になると』です。
かなりのボリュームがあって、充実した中身を持つ作品だったと思います。
良かった点

・主人公の生活にノスタルジックな田舎の雰囲気が出ており、好感触。

・音楽も、作品の雰囲気に合ったものをチョイスしている印象。

・廃墟空間の設定や描写に引き込まれる。


気になった点

・イラストはお世辞にも上手とは言い難いw

・かなりのボリュームがあるものの、中盤くらいにやや冗長な所が。

・中学生男子の葛藤が一つの話の軸になっているので、或る程度歳を取っているとちょっときついものが。

ストーリーも紹介しておきましょう。
ベクターの紹介文を引いておきます。
主人公の和也が、友達の隆の話にのせられてある山の中を探検していると・・・な話です

こんな感じ。
ちょっとあっさりしすぎたストーリー紹介かもしれませんね。
もうちょっとだけ補足しておくと、山の中の探検によって発見するのは「廃墟」と思しき村落の跡です。主人公和也の住む街は、戦前~戦中に掛けて炭坑で発展しており、その炭坑の街の跡という事になるようです。
こうした、廃墟探検というワクワクするような設定で、読者を巧みに引き込んでいく印象です。

その廃墟にて、「妙に懐かしい気持ち」を覚える和也と隆。そして、妙に心引かれる櫻の花。
確かに櫻の花っていうのは、妙に心引かれるものがありますよね。
美しく、そしてどこかもの悲しい花。それが櫻です。良く見かける染井吉野でもいいのですが、しだれ桜なんていうのもかなり綺麗です。

で、主人公の友人たる隆は、この廃墟、そして櫻に魅入られておかしくなってしまいます。
直接的には、櫻に取り込められている謎の少女によってなんですが、廃墟探検→超常的な世界という物語の進み方は、スムーズでしかも印象的で良かったと思います。

作品全体に流れる、ノスタルジックな雰囲気もたまりませんね。
別段、舞台が田舎であるとかそういう描写がされることはないのですが、読んでいると昔懐かしの田舎の生活のようなものを幻視してしまいます。
このノスタルジックな雰囲気が、その後の作品展開に邪魔することなく自然にとけ込んでいる点も評価したいところです。
音楽も、作風にあったものをチョイスしており好印象。ただ、最近割と良く聞く音楽が多かったかなぁ、とも思いました。よくよく考えてみると『送電塔のミメイ』で使われている曲や効果音だったり……。
それはさておき、ストーリー全体で見ると、良くまとまった良作だと思いました。伏線みたいなものもちゃんと消化されていますし、良くできた作品だと思います。
過去の出来事と現在の出来事が交差し、絡み合うので、物語の厚みみたいなものもしっかりと。


ただ、中盤くらいからでしょうか、和也の日常シーンが割と多く描写されるのですが、何となくダレてしまう。結構冗長な印象を受けました。
もう少しタイトな作りにしても良かったんじゃないかな、と。少し惜しい所ですね。
又、この和也の日常シーンは、中学生男子の抱える葛藤みたいなものが多く描かれていく(進路とか、良い学校に入って良い会社に就職してみたいな、オトナによる一種の押しつけへの反発など)のですが、流石に或る程度歳を取ってしまうと、こういう所に感情移入が難しいなぁ、と。
こうした、和也の葛藤はラストとも繋がっており、必然性自体はあるのですが、やっぱりやや冗長だと感じます。

あとイラストですか。
かなり人を選ぶんじゃないかなぁ、と。またいつものように最後までプレイすると結構愛着が沸いてしまうのですが。。
作者様のHPを見てみると、トップに表示されている絵なんて、なかなか魅力的なんですよね。お世辞にも美麗とは言い難いけれども、味わいがあって、私は好きです。恐らく、本作制作時より作者様の描画力はアップしているんじゃないかと。
実際、本作のイラストがあまり上手じゃないとは言え、なかなか画けませんよ?ちょこちょこ絵の練習をしているとそういうイラストの見方みたいなものも変わってきて、面白いですね。

あー、そうそう。
序盤に「祇園精舎の鐘の声」が出てくるんですが、典拠となっているのは、恐らくご存じ『平家物語』でしょう。
ただ、この祇園精舎の鐘の声の効果音が「ゴーン」といかにもな音になっていた点は、異議を申し立てたいとw

祇園精舎っていうのは、お釈迦様のお話に出てくるものですから、当然インドにあるわけです。んで、その祇園精舎には、無常堂というお堂がありまして、そこにある鐘が「祇園精舎の鐘」なわけです。
さて、この祇園精舎の鐘の材質は実はガラスや金属だったハズです。鐘っていうと所謂「銅鐸」みたいな形を想像してしまうのですが、私たちの考える鐘と、無常堂にある鐘は形態も異なっています。
上手に説明出来ないのが歯がゆいのですが、祇園精舎の鐘は、「ゴーン」という音じゃなくて、寧ろ「ジャラジャラ」という感じの音なんですよね。
細かい所に突っ込み過ぎですか?w これが「祇園精舎の鐘」じゃなくて、やはり古典でたまに使われる「入相の鐘」とかなら、「ゴーン」でいいんじゃないかしら、とw

まぁ、そういう所は大した問題じゃないですね。

先にも書きましたが、ストーリーの流れはとても良かったです。
巧みな導入から始まって、割と深いテーマまで食い込んでいくストーリーは十分評価に値します。
しかし、やはり中盤にかなりダレてしまうのと、中学生男子の精神的葛藤みたいなものに、あまり共感出来なかったので、今回は無印です。
中高生がプレイするのなら、吟醸かな、と。

もし、中高生の方がこれを見ていらしたら、是非プレイして欲しいと思います。
多分、共感出来る所などもあり、ハマれるんじゃないでしょうか?
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by s-kuzumi | 2007-12-08 01:09 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by 空と雪(仮 at 2007-12-26 10:40 x
このゲーム?(読み物)の作者ですが・・
道玄斎さん、レビューありがとうございます(*^¬^)ノ

何と書いたらいいか分かりませんが・・・
長い話(無駄に)で最後まで読んで頂けただけで感謝であります。
鐘の声・・・、あれっ・・知識が乏しいものですいません

これからも道玄斎さんのブログをサウンドノベル探しに
使わせて頂きますので、よろしくお願いします
創作も頑張って下さいね!
Commented by s-kuzumi at 2007-12-26 20:51
>>空と雪さん

はじめまして、こちらこそコメント有り難う御座いました。

作品、楽しくプレイさせて貰いました。
ノスタルジックで幻想的な世界が凄く魅力的な良い作品だったと思います。
祇園精舎の鐘の声に関しては、ちょっとした特殊知識なので、さらっと流して下されば幸いですw

空と雪さんも、是非これからも素敵な作品をリリースして下さい。
そして、本ブログもご贔屓にして下されば幸いです。


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