2007年 12月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『雪月花』

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今日の副題 「アンタあの娘に惚れてるね?」


ジャンル:学園恋愛アドベンチャー
プレイ時間:一ルート一時間半くらい。
その他:選択肢が割と多め
システム:吉里吉里/KAG


道玄斎です、こんばんは。
知り合いがゾクゾク結婚していく中で独身として残ってしまい、非常に悲しいようなわびしいような妙な気持ちですw
当然12/24、12/25は何の予定も御座いません。
ゲームこそ、憂さを払う玉箒を合い言葉に頑張っていきます……。

さて今回は「もみじの丘」さんの『雪月花』です。
或る意味でありきたりな学園恋愛モノなのですが、丁寧な恋愛描写が好印象の作品でした。
良かった点

・「付き合っておしまい」ではなく、付き合うまでの過程やその後までをしっかりと描く。

・魅力的な脇役達。

・バックログでの方言の標準語解説の機能は面白い。


気になった点

・マウスホイールでバックログが見れないのは辛い。バックログに付随する面白い試みがあるだけに残念。

・どうしても「ありきたり感」が。

・月のシナリオのラストが少しあっさりしすぎかも。

ストーリーは、作者様のページへリンクを張っておきます。こちらからどうぞ。

オーソドックスな学園恋愛アドベンチャーです。
攻略キャラは三人。どうやらタイトルの『雪月花』と、三人の女の子の属性が対応しているようです。園村陽菜は雪、品川凜は花、増田月(るな)はそのまんま月、という具合です。

言ってしまえばよくあるタイプの、よくあるゲームです。
けれども、恋愛描写が瑞々しく、且つ丁寧に描かれている作品だと感じました。
それぞれの女の子との恋愛描写は、読みながら妙に照れてしまいました。一番そういう恋愛的な要素が全開なのは、陽菜のシナリオでしょうかね。
ちょっとぽやーんとした黒髪優等生。こういう女の子好きです。
こう、なんていうか恋愛絡みのエピソードは甘酸っぱいじれったさを感じさせながらじわじわとエンディングに向けて収束していき、好印象。

多くの学園恋愛アドベンチャーが、「付き合っておしまい」という形式を取っているわけですが、本作の場合、その付き合うまでの描写や、或いは付き合ってから生じる葛藤なんかが盛り込まれるものもあり、一味違います。

一応、メインヒロインという事になるのかな?凜のシナリオは良くも悪くも「美少女ゲーム」のヒロイン的なシナリオでした。主人公と朝ぶつかってお互い印象最悪。そしてその子が主人公の転校生としてやってきて、とか、過度な暴力癖とかねw
この凜に関連して面白い試みがなされているので紹介しておきます。
というのも凜は九州弁を喋るんですよね。んで、バックログを使い過去のテキストを見てみると、凜の九州弁の台詞はクリッカブルになっている。クリックをすると標準語でなんて言うのかが分かるようになっています。
ま、実際問題、そこまでひどい方言じゃないので、普通に読んでいても理解は出来るんですけれども、面白いシステムですよね。

蛇足なんですが、私は基本的に東京育ちですので、標準語(この言い方もどうかと思うんだけども)を話します。
けれども、時たま「長野弁」というか「信州弁」が出ることがあるようです。
「もうらしい」とか「ずくなし」とか、そういう言葉ご存じの方はいらっしゃいますか?w

こういう方言なんていうのは、作品に良いアクセントやアイデアを与えてくれる存在ですよね。
そういえば『ハーバーランドでつかまえて』も主人公が関西弁(関西)嫌いという設定でした。
まだまだ上手く利用すれば、作品を面白く出来る要素の一つが方言なのではないでしょうか。


あと、脇役が良かったですね。
必ずこの手のゲームに登場する、主人公の友人中村正俊は、まぁ「お馬鹿キャラ」としてその地位を盤石なものにしているわけですがw こいつが成績優秀なんですよね。
大抵、こういう立ち位置のキャラって成績が絶望的なのに、こいつは成績優秀。そんでもって敢えて(?)馬鹿をやっているという。ありきたりの設定にちょっと変化を持たせるだけで、随分キャラに厚みみたいのが生まれていたと思います。

さて、脇役で特筆すべきは、主人公大輔の姉の智子です。
立ち絵では、どのヒロインよりも可愛いし、なんて言うかヒロイン然とした顔をしてるんです。
「両親が海外に行って一人暮らしを余儀なくされた高校生」というこれまたありきたりな設定の中に、近所に既に人妻となった姉が居て、しばしば主人公の面倒を見てくれるという、変則的な設定は好感が持てますし、智子自身のキャラも立っていて読んでいて心地よい。
そこまでメインのストーリーの中で重要なパートは担わないけれども、大輔の「保護者」としての存在感が非常に良かったと思います。

そういえばアルバイトの描写に力が入っていて、これもあまり見ないタイプだったので、新鮮で面白かったですね。
某ハンバーガーショップと思しき所で、大輔はバイトを始めるわけですが、ここでヒロインの一人月と出会います。
大輔には、智子という保護者が付いているわけですが、このバイトの経験で一回りオトナになっていきます。
バイトと言えば、この時期になると必ず思い出すバイトがあります。私が昔やっていたのですが「工事現場の警備員」です。あのライトセイバーみたいなのを持って車両を誘導したりするアレです。冬場は結構きついんですよねぇ。何がきついって、寒いんです。
体全体が寒い、っていうのも勿論あるのですが、何よりきついのが「足が寒い」。地面から寒さをダイレクトに受けつつも、何時間も立っていなければならないので、本当に足が凍傷を起こすんじゃないかってくらいに冷たくなります。


話を戻しましょう。
今までつらつらと書いてきたわけですが、既存の学園恋愛モノの設定に寄りかかりながらも上手くずらしていっているので、意外とこれが新鮮に見える。
本当にちょっと属性を変えたりするだけで、キャラクターが断然生き生きとしていたので、非常に勉強になりました。


さて、気になった点ですが、バックログがマウスホイールで見れないというのが痛いですね。
バックログに付随する方言→標準語解説機能という面白い仕掛けがついているだけに、残念でした。
普通に読み進める人にはあまり実は気にならない点なのかもしれないのですが、私は割とせっかちにカチカチとクリックをしていってしまう傾向があって、結構な頻度で読み返しをしたりします。そのほかのシステムは「前の選択肢にもどる」なんて高性能なものがあったりするので、余計この点が残念に思いました。

あとは、どうしても避けられない「ありきたり感」です。
随所随所で、ありきたり感を排除する為の試みが行われていると思しいのですが、それでもやっぱりどうもなぁ、と。
メインヒロインと思われる凜(タイトル画面が凜だ)以外のヒロインのシナリオの方が、オリジナリティみたいなものは強いんですよね。その点が少し気になりました。

最後に一点。
月のシナリオです。月は明朗快活な明るい元気系のキャラなわけですが、読み進めていくと意外と厭な女な気がw 
大輔とつきあい出してから、の描写は色々とあるのですが、付き合う前の月の心の動きみたいなものは殆ど描かれない為に、大輔と付き合うというそのイベント自体が妙に唐突な印象を受けました。こういうタイプの子って後々になって「やっぱり好きじゃなかったみたい……」とか言って別れを持ちかけてきそうで怖いですw
ラストも少しあっさりしすぎだったかな、と。読者の期待を高めて高めて最後にどかんと、見せ場が出てエンディングを迎えるのかと思いきや、高まった期待が宙ぶらりんになってしまったような。是非月のシナリオに関しては、最後に一分、「一年後」の描写を入れて欲しいなぁ、と一読者として思いました。


ちょっと厳しめになってしまいましたね。
けれども、何度も繰り返したように、或る意味でありきたりなフレームを持ちつつも、その中で頑張って差異可を計ろうとしている点、評価出来ます。
実際、それに成功しているなと感じる部分も多くありました。
ちょっと甘酸っぱい、嬉し恥ずかしな気分を味わいたい方は、プレイをお勧めします。
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by s-kuzumi | 2007-12-16 23:10 | サウンドノベル


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