久住女中本舗

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2008年 01月 04日

フリーサウンドノベルレビュー 『homeless, the vagabond』

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今日の副題 「バンド、やろうぜ!」

※大吟醸
ジャンル:放浪音楽アドベンチャー(?)
プレイ時間:三時間くらい
その他:選択肢あり。基本的には一本道。flash playerをあらかじめ導入しておくこと(殆どの人が大丈夫だとおもふ)。今回は正式版にてプレイ。
システム:吉里吉里/KAGEX



道玄斎です、こんばんは。
新年一発目のレビューいってみよっか!

というわけで、今回は「ヲサカナソフト」さんの『homeless, the vagabond』です。
カラフルでポップな楽しい作品で、新年一発目に相応しいものだったと思います。

じゃあ、いつものように、
良かった点

・カラフルでポップ。放浪を楽しくリズミカルに描いている。

・放浪と音楽、記憶喪失と美味しいネタを大量に仕込んであり、話に厚みが。

・単なるサクセスストーリーに終わらず、それぞれの人物の葛藤が描かれているのも好印象。


気になった点

・実は割とどのエンドでもラストが、前半と少しテーマがズレるような

ストーリーの方は、私が軽く纏めておきましょう。
津田啓は、齢20にして日本全国のバーなどを回る流しのミュージシャン。
そんな彼がいつもの放浪の途中で、一人の少女に出会う。
トランペッターである彼女を連れて更なる放浪の旅に出る。そこでピアニストの少女も旅に加わる事となり三人は「バンド」になっていく。
そんな時に、津田は記憶喪失に。さぁ、これから一体この放浪の音楽の旅はどうなるんだ?

と、こんな感じ。

正式版がぼちぼちリリースされるみたいですよ、とコメント欄にてお教えして頂いた作品ですね。
長いことβ版だったと記憶しているわけですが、今回は目出度く正式版がリリースされたということでプレイする事に。

……そして、色々あって、改めてVer.1.01にてプレイし直しました(2009/11/23)。何で、プレイし直したのかと申しますと、実は前回プレイした時、そしてこのレビューの初稿の段階では、エンドが分岐しなかったんですよね。それはバグだったのか、或いは私の選択肢選びが良くなかったのか、どうも判然としないのですが、今回改めてプレイしてみたらさっくりと三種類のエンド全てを見ることが出来たので、書き直しです。
何か、私、選択肢絡みでトラブルが起きる事がままあって、本作の場合も選択肢の数は少ないので(三箇所かな?)さっくり全てを回収! と思いきや、何故か前回プレイ時にはタイトルを冠した「homeless the vagabond」エンドしか見られなかったんですよね。
改めて選択肢を見てみても、狙ったエンドに到達しやすい選択肢ですし、普通でしたら間違える事はない、と思うんですが、何故か何故か。
ともあれ、ちゃんと全てのエンドを見ることが出来て良かったです。


いや、面白いわ。
一言で言うと「楽しさ」が詰まった作品だと思います。
軸になっているのは、「放浪」「音楽」、そして「記憶喪失」。
放浪と音楽というテーマだけでも十分本作は成り立つわけですが、そこに記憶喪失という面白い設定が入り込んで、更に深く物語のテーマに踏み込んでいく事に成功している印象です。

実際問題として、女の子二人連れで放浪(まぁ、ホームレスですな)が出来るのか? という問題はさておき、適度なリアリティを保ちながら、そういう暗い面ではなく、明るさや楽しさをフィーチャーしているので楽しんでプレイが出来ます。

作中の会話が面白いですよね。
それは音楽に関するものに限らないのですが、主人公の津田君が高校を卒業してからずっと放浪しているのにも関わらず、かなり学があるんですよね。
音楽理論(私は全然分かりませんよ?)やら例の「ロールシャッハテスト」とか、挙げ句の果てに「ニーチェ」だったり、本当に知識豊富なキャラクターで、読んでいて飽きる事がありません。
主人公の男って、割とこういうサウンドノベルとかノベルゲームと言われるものでは、「お馬鹿さん」的な設定が多いわけですが、津田君は適度に馬鹿で、けれどもその馬鹿のバックグラウンドとして知識を沢山持っているというのがあるわけです。凄く好感の持てるキャラでした。
テキストそのものは、割と「エロゲ」に近い、ギャグテイストでノリがいい感じ。ただ、それも全く意味不明で、謎の笑いゾーンに引き込む、というよりも用語解説あり意外とすんなりテンポ良く読めちゃいます。

音楽理論の話など、なじみのない人には全く分からない所もあるかもしれませんねぇ。
私自身、全然ついて行けない所があったりしました。
ちなみに私の親戚にプロのピアニストがいてカーネギーホールとかで演奏しているらしいのですが、私自身はピアノも或る意味で中途半端に止めてしまいましたし、本当にそういう専門的な知識の事は分かりません。
ただ、最近こちょこちょとDTM関連の本を見ていた為か、何となく理解出来る所はあったりしました。コード絡みの話題のところですね。ただ、愚かしい哉、私はコードが和音である、ということは分かるものの、コード進行なるものがどういったものか、実は全然分かっていません。ⅠとかⅣとかそういう名前があって、~のコードのあとには~というコードは使わないとか、そういう原則は本に書いてあるから分かる。
けれども、コードを作るということが曲作りにどう影響しているのか、という辺り全然腑に落ちなかったりします。コードから曲を作るというのは、分からなくはないのだけれども、なんだかしっくり来ない感じがします。
ま、これは蛇足ですな。

↑なんて、昔は書いたんですが、今は流石にほんのちょっぴり分かる部分が出てきました。
継続は力なりって云うけれども、少しづつでもちょこちょことやってるとイイコト、ありますよね。

本作は、単なるサクセスストーリーに終わらなかった、というのも高ポイントですね。
記憶喪失がキーとなる主人公の葛藤やらが、過不足無く織り込まれており、ラストで有名ミュージシャンの仲間入りをしましためでたしめでたしとならず、まだ放浪を続けていくという締め方も良かったと思います。

そうそう、大体三十分くらいプレイしたあたりでしょうか?
オープニングムービーが入ってくるんですが、これは必見ですね。軽快でキャッチーな音楽とデジタルでパキッとした感じの映像が綺麗に纏まったムービーが見れます。ちなみに、音楽の最初に出てくる外国人のカウントダウンの声はFL STUDIOのSpeech Synthesizerでしょうね。私もFLユーザーになったのでピンと来ましたw サイトの方に置いてある音楽でもこのSpeech Synthesizerを使っていると思しき曲もありました。
こういう演出面では、色々な試みが行われていて、ちょっと分かりにくい単語はクリッカブルになっており、簡単な説明を読むことが出来たりします。
勿論、いちいちクリックしなくても全然OK。気になった所だけクリックしてみるのが良いかもしれませんね。
システム自体も作り込まれていて、かなり細かい部分まで設定で弄る事が出来るようになっていました。

これまた、自分はあまり経験のない事なんですが、セッションの雰囲気が良かったですね。
みんなで一つの曲を盛り上げていく、みたいなそういう所は読んでいて興奮してきます。
私のセッションの経歴ですか? 全くないとは言いませんが、私がお琴で、他のパートが三味線と尺八だったりしましたw やっぱりジャズとかのようにリズムで盛り上げていくようなタイプとはちょっと違いますよねぇ?w
ともあれ、なんか、読んでいると「バンドやってみっか?」と高校生男子みたいな事を思わず考えてしまうような、そんな魅力に溢れた描写だったと思いました。


さてさて、選択肢は数こそ多くはないものの、要所要所に出てきます。
今回は、ちゃんと三つのエンド全てを見ることが出来ました! 恐らくメインというか、次回作に繋がるようなエンドは「homeless, the vagabond」エンドでしょう。これは全体を貫く「音楽」だったり「放浪」だったりとリンクしていて、一番この作品らしいエンドだったように思えます。
一方で、二人の女の子、塔子、深菜に特化したエンドもあります。塔子のエンドはかなりグッとくるものがありました。塔子の作った曲とその歌詞が胸を打ちます。また、あの日記が読んでいて痛いんだ……。日記というかもう、魂の記録みたいな感じですから。。
一方、深菜の方は、割とラブラブエンドみたいな。個人的な好みで云えば、断然深菜なんですよw 可愛くてピアノも弾けてしっとりとした雰囲気で。エンドの出来みたいなものを敢えて云うのならば、塔子の方がいいんですよね。最後の最後にグッと盛り上がりがあって、どっぷり感情移入出来ます。

でも、塔子、若しくは深菜のエンドは、「homeless, the vagabond」エンドに比べると、作品の背骨たる「音楽」とか「放浪」とか、ちょっとそういう部分との連結が悪いかもしれません。ですので、私がイチオシするのはやっぱり「homeless, the vagabond」エンドです。


そういえば、背景画像の加工の仕方が素敵でしたね。
写真素材に手を加えていると思しいのですが、手書き風? になっていて、ちょっと暖かみのある背景が作風にマッチしていたと思います。
あれ、どうやってるんでしょうねぇ? ああいう雰囲気の背景好きなんですよねぇ。
もし、ああいう背景の作り方をご存じの方がいらしたら、是非ご教授下さい。


兎に角、楽しい作品です。
リズミカルで楽しい放浪を是非楽しんでみて下さい。
思わず、楽器を演奏したくなること請け合いですよ? 私もこれからちょっとシーケンサーでも立ち上げてみましょうかね。


それでは、また。
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by s-kuzumi | 2008-01-04 01:26 | サウンドノベル


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