2008年 01月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『天雨月都』

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今日の副題 「これが伝奇」

※吟醸
ジャンル:伝奇(?)
プレイ時間:一ルートにつき二時間半~三時間
その他:今回は、お試しVer.4.1でプレイ。選択肢有り。バッドエンドも。
システム:吉里吉里/KAG


道玄斎です、こんばんは。
フリーサウンドノベルの伝奇作品の草分け作品ですね。
まだ完全版ではない、という位置づけなのですが、かなり以前からこつこつと作られてきた、伝奇作品の走りというイメージを持っています。
というわけで、今回は「Project天月」さんの『天雨月都』です。
良かった点

・こつこつと作られてきた伝奇作品のマイルストーン的作品

・イラストや演出を含めて、作者の熱意がダイレクトに伝わってくる


気になった点

・やはりまだお試し版ということなので、消化不良な点が多い。

ストーリーは、サイトのURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。

ということで、「完全版が出たら」と思っていたのですが、プレイしてしまいました。
基本的に、完成した作品をここでは扱っているつもりなのですが、ここ暫く本作の更新が為されておらず、それでも高い人気と完成への期待が集まっている作品ですので、ちょっと原則を曲げてプレイしてみました。

これって、最初にリリースされたのはいつでしたっけ?
私の記憶では、結構前から話題になっていた作品だったような……。
正確な初版リリース時期が分からないのですが、今ある所謂「伝奇」と言われる作品の草分け的な存在だと私は個人的に思っています。
今回プレイしたヴァージョンでもリリース時は2004年ですから、この業界の移り変わりの速度を考えると、もうかなり昔の作品というとらえ方も出来るのではないかと。

実際、プレイしてみると、今私たちが情報サイトなどからダウンロード出来る伝奇、はたまた商業モノの伝奇の「核」となる部分は、もう既に本作で示されていたりします。
色々な伝奇ものをプレイした上で、本作をプレイすると、もしかすると「またこのパターン?」と思う人もいるかもしれませんね。

何しろ、異能の血族を巡る物語で、一見無能な主人公が最強のパワーを密かに秘めていて、血族の頂点に近い位置に存在する女の子と交流して、恋が生まれる、なんてストーリーの運びは確かに2008年の今から見ると、陳腐かもしれません。

だけれども、敢えて言わせて貰えれば、本作はやっぱり良い作品だなぁ、と思うのです。
イラストも自前でお描きになっていると思われますが、そこまで洗練されていない。けれど、なかなか描けないんですぜ。
これも良く言っている事なんですが、必ずしも絵の洗練具合が作品の善し悪しを決めるわけじゃなくて、寧ろ作品そのものの良さが、イラストといった付随するパーツを引き立てているのです。
何より、そういう今から見るとちょっと垢抜けなく思う部分も含めて、コツコツと丁寧に創っている、というのがプレイするとすぐに分かるようになっています。
そりゃあ、どの作品だって作者様は血涙を絞ってお作りになっている事、想像に難くないのですが、その頑張ってる感っていえばいいのかしら、そういうのがダイレクトにプレイヤーに届くような、そういう一種の暖かみのある作品でもあるのです。

一切の予備知識を捨てて(なかなか難しいし、好むと好まざるとに関わらずどうしたって偏向は入るもんだけども)、真っ正面から作品に向き合うことで本作の良さは見えてきます。
何より、作者様のブログ(奇しくもここと同じエキサイトブログでした)には、更新を待ち望むプレイヤーがいまだに書き込みを続けているのです。
支持する人の多寡がそのまま作品の評価になるわけではないけれども、やっぱりそれだけ、本作の完成を待っている人がいる、というのは凄い事です。


今回プレイしたヴァージョンでは二つのルート、乃ち椎子ルートと、都紀子ルートをプレイする事が出来ます。
この二つのルートはバッドエンドも含めて、しっかりと作り込まれています(バッドエンドに到達するとお助けナビが出てくる親切設計w)。どちらかのルートが「本命」といった偏りのない設計も隠れたポイントですね。

ただ、やはりまだお試し版ですので、物語は決定的な謎を残しています。
主人公、薫の異能の正体です。どうやら薫の母方の家、そして睦月というマッドサイエンティスト系(?)のキャラの存在が、その異能に大きく関わっているみたいなのですが……。

恐らく、完全版が出た暁には、今回プレイ出来る二つのルートも補強され、更なる完成度を持ってリリースされると思います。
私自身、あまり好きな言葉ではないのですが、「起承転結」という点からみると現在のままでも十分に作品の魅力が描かれていると思います。しかし、先に述べた通り、決定的な謎がいくつか未解決のままなので、その点はやはり少し惜しいですね。


2000年代の「伝奇」を読み解く上で、本作は必読でしょう。
勿論、強制はしませんよ?だけれども、本作を一つの起点として伝奇と捉えられる作品群を眺めてみると色々な発見がありそうで、個人的にはとても楽しいのです。

あとは、作者様が頑張って完全版をリリースして下されば、ですね。
完全版がリリースされた時には、新たにレビューを書くか、これを差し替えようかと思っています。
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by s-kuzumi | 2008-01-08 00:03 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by oftrom at 2008-01-31 04:51 x
どうも、はじめまして、こんにちは。
私も天月の続きの公開を待ち望んでいる一人です。

とはいえ、HPの更新停止からしばらくしましたし、制作日記をみると制作のかなりの苦悩も垣間見えますし、付属readmeには習作だということを強調されていますし、その上、作者浮かぶ人さんの本家サイト「自然に浮かぶHP」には連載中小説を2本抱えているようですし、完全版には色々と不安があります。

制作日記には、2003年の話ですが「時雨編」「小夜子編」「最終章」の制作が予定されているようです。それらを気長に待つ間に、浮かぶ人さんの長編伝奇小説「魔京伝」(完結)はいかがでしょうか。天雨月都とは多少毛色が違いますが、こちらもなかなかおもしろいですよ。
Commented by s-kuzumi at 2008-01-31 07:02
>>oftromさん

はじめまして。

天月は、HPの更新が止まって、随分と経ってしまったみたいですね。
小説もお書きになっているようで、確かに完全版が果たして本当にリリースされる日は来るのか?と不安になってしまいます。

ユーザーとしては、草の根的に応援しつつ、じっくりと作品を待つ、という事になるのでしょうか。せめて近況くらいは分かればいいなぁ、と個人的には思うのですが……。

小説のご紹介有り難う御座いました。
長編というのが良いですね。是非読ませて頂きます。本当に有り難う御座いました。


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