久住女中本舗

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2008年 02月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『八目鰻』

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今日の副題 「ヘンリー一世の受難」

ジャンル:落語風サウンドノベル(?)
プレイ時間:二十分くらい。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter



道玄斎です、こんばんは。
なんだか、午後七時くらいから急激に眠気が襲ってきて先ほどまで寝ていました。
まだ血涙が出たりしてますが、頑張って書きましょう。
時間も時間ですから、さっくりと遊べる作品を、という事でやってみました。
というわけで、今回は「花を吐く抄女」さんの『八目鰻』です。今作も独自のセンスが光る作品だったと思います。
良かった点

・さっくり遊べてオチもついて、一本の落語を聞いているような感触。

・声優さんのチョイスが相変わらず良い。


気になった点

・微妙に言葉がへんてこなところが。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
某所にある社、大鳥稲荷神社の主、稲荷神狐様は、今日も暇を持てあまして自堕落に送っている。
たまに供えられるお供え物に手を付けながら、文句言えどそれなりに満足と。
しかし、猫の咥えている目刺しを見つけ、自らも食したいと言いだし、猫は大層困る。
無碍に出来ず、場凌ぎの提案をするが、これが更に困った事態に……。

こんな感じ。


どこかレトロで「日本的」なものを感じさせてくれるのが、「花を吐く抄女」さんの作品の一つの方向性ですね。
本作の場合、そうした要素が全開で、私は凄く楽しくプレイ出来ました。

簡単に言ってしまうと、稲荷神社のお稲荷様が主役の「落語」っていうのかな、「小咄」っていうのかしら、そういう感じ。プレイ時間は20分くらいなので、本当にちょっとした小咄を聞いているような感触でプレイ出来ます。

又、文章が凝っていまして、本当に昔の落語風の語り口なんですよ。
微妙に古語混じりの言葉、みたいな感じかな。江戸時代風のね。
いつも言っているのですが、私は江戸時代(=近世)の文章を読解するのが苦手です。なんか凄い難しいのよ。
私は大体平安~室町時代くらいの文章ばっかり読んでいたわけで(一番好きなのは鎌倉時代~南北朝の文章です)、いきなり近世の文章を読めって言われると意外に読めない。
一つには『好色一代男』のような当時に生きていたような人間じゃないと、理解出来ない文章のせいで、苦手意識がついてしまっている、という。

まぁ、私の話はどうでもよくって……。
で、本作の場合はどうかというと、あくまで「味付け」のような古語風味なので、雰囲気を保ちながら読みやすさも確保されている、といった印象。日本的なものが好きな人にはたまらないんじゃないでしょうかね。
このサークルさんの作品にとって、この特徴ある文体は欠くことの出来ないものです。

「雰囲気のある作品」というのがあります。
雰囲気っていっても、例えば背景やイラスト、音楽なんて要素が密接に絡んでいるのですが、このサークルさんの作品の場合「文章・文体」がその雰囲気作りに物凄い貢献している印象です。
先日紹介した『時計塔へ -ciel et neige』という作品は、世界観と人物描写で独自の雰囲気を出していました。
イラストも抜群、音楽もばっちり、ストーリーも面白い。だけどもどっかで見たことのあるような作品、よりは私は個性を感じる「雰囲気のある作品」が好きです。

ただ、一点気になった点があります。
それは、この特徴ある文体の一部なのですが、例えば「~いらば」というような文章が出てきました。これは恐らく「~を(お)らば」でしょうね。「あり・をり・はべり・いまそがり」なんて昔やりましたよね?あの「居らば」は多分「を(お)らば」でしょう。恐らく現代語の「居る(いる)」と古語の「居り(をり)」が混ざってしまったのでしょう。
気になってきたので、手元にある小学館の『古語大辞典』を引いてみる事にします。

…………。
んー、やっぱり「をり」かなぁ?ラ変です。ラ変は「ら・り・り・る・れ・れ」と活用します。
で、もうちょっと考えてみると、私の推測では「をらば」となるハズですから、意味から考えると「居たならば」とかそのあたりでしょう。という事は今は「居ない」わけです。だから「未然」形に活用して「をら」になると。だから「いらば」という形は恐らく無いんだろうなと愚案する次第。

似たようなものでは、「曰く」とすべきと思しい場所が「曰き」となっていました。これは単純なタイプミスかな?
これまたどうでもいい事ですが、漢文では基本的なルールとして「曰く~と」という形になります。
どういう事かというと、私たちが普段使っているカギ括弧に相当するものなんですよ。

道玄斎曰くぼちぼち眠くなってきたぞ、と。

とこんな感じ。これをカギ括弧を付けて現代風にすると、

道玄斎は言った。「そろそろ眠くなってきたぞ」

つまり「曰く」はカギ括弧の始まり(つまり発話)を予感させ、「と」はカギ括弧の終了を示すという事です。
今日は(いつも、だって?w)蛇足が多い!


実際、ここまで凝った文体ですから、結構言葉の選び方は難しいんじゃないかな、と思います。
私もこんな事をつらつら書いてますが、「じゃあ、お前さん実際に書いてみろよ」って言われたらやっぱり同じようなミスをしちゃいそう。
けど、ここまで書いておいてアレだけども、プレイする分には何にも支障はないですよ?w

声優さんも好演です。
これまたいつも良い声優さんを起用しているなぁ、とおもいます。ちょっとアンニュイでありながら知的な感じがいいですね。声優さんと友達になりたい!

ま、それはさておき、ラストのオチが良かったです。
伝統芸をしっかり踏襲しつつ、それをノベルゲームに活かす、というのはいいですねぇ。
こういう作品の作り、大好きです。
作者様は定期的に作品をリリースして下さっているので(それが何と大変な事か!)、今後も楽しみです。

さっくりと小咄を聞くように楽しんでみてください。
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by s-kuzumi | 2008-02-26 03:48 | サウンドノベル


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