久住女中本舗

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2008年 03月 05日

フリーサウンドノベルレビュー 『古本屋「こほにゃ」』

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今日の副題 「特別な場所、特別な本」

※大吟醸
ジャンル:古本屋ファンタジー。
プレイ時間:一時間。
その他:選択肢なし、一本道。本レビューはWEB配布版にてプレイ。
システム:NScripter


道玄斎です、こんばんは。
久々の大吟醸が出ました。大体二ヶ月ぶりですね。「古本屋」なんてキーワードが出てきた時点で、「こりゃ良さそうだ」と思っていましたが、案の定私の好みの作風で、非常に楽しませて貰いました。
というわけで、今回は「VALLEL」さんの『古本屋「こほにゃ」』です。
良かった点

・ちょっと不思議な古本屋を巡っての話が展開され、本好きには堪らない。

・美麗な一枚絵も多く、声優さんも好演。音楽も自社生産(?)で作品の雰囲気にあったものに。

・一つ一つのストーリーが丁寧に描かれており、好印象。

・技アリの「文章のレイアウト」。


気になった点

・結局「店長」とは何者なんだ?という消化不良感がないわけでもない(製品版を買うと色々判明する?)。

ストーリーはサイトのURLを張っておきます。こちらからどうぞ。


良かったです。面白かった。
劇的に盛り上がるシーンがあるとか、どばーっと感動出来るとか、そういうタイプではなくてじんわりとくるタイプ。一つ一つのお話が丁寧に描かれていた為に、こうした「じんわり」タイプであっても、素晴らしい作品が出来たものと思われます。

舞台の設定が良かったですよね。
「古本屋」で、しかも一昔前の町の古本屋さん。引き戸で開け閉めする入り口があったりする、ね。それでもって、店内がどこか薄暗くって、少しだけかび臭くて古い紙の匂いがするような。
そんな空気感を持った店内の背景イラストも絶妙でしたね。
私はなんとなく総武線、下総中山駅の駅前にある古本屋を幻視してしまいました。この古本屋にまつわる私の思い出は、いつか機会があったらお話しましょう。
一言で言ってしまえば、本作は、不思議な古本屋を巡ってのちょっと心温まるお話です。

けれども、本当に一昔前は、町に(そして大体駅の側に)こうしたタイプの古本屋ってありましたよね。やっぱり独特な雰囲気があって、ちょっとだけ入りづらいものを感じるのですが、一度入ってしまうとその店の魅力の虜になってしまうような……。
店主はいつもカウンターで本を読んでいて、本が無造作に積んである。けれども確実に本の入れ替わりはあって、一週間に一度くらいのペースで通ってみると色んな発見がありました。

例えば、神保町や早稲田の古本屋街なんかは有名だし、何より店舗数が多い。
けれども、ローカルな古本屋の味わいっていうのはやっぱり独自のものがありますね。
阿佐ヶ谷とかの中央線沿線のローカル古本屋とかね。

本作は、そんな魅力のある舞台設定に加えて、ファンタジーの要素も入っています。
XXXHOLIC』の侑子さんのお店みたいな、「必要な人の前にだけ現れるお店」が「こほにゃ」なのです。

「こほにゃ」の店長代理こと真琴は、本の声を聞き、この店に訪れる人の心を聞き、「必要な本」を贈呈しちゃいます。こういう利益度外視の経営は、実際は危険極まりないんでしょうが、こういうファンタジックな作品の場合、却って好感が持ててしまうから不思議。
真琴のCVも良かったですね。演技が凄い上手い。奇をてらった所もなく、かといって旨味はたっぷりとあって、自然に読者に「こほにゃ」という空間、或いは真琴というキャラクターを受け入れさせるのに一役も二役も買っていたように思えます。

そうそう。
実は、本作は一話、二話と短編が寄せ集まって構成されています。
古本屋「こほにゃ」(と店長代理の真琴)を軸としたオムニバス作品といった趣。
しかもまた、凝っていて、各話には「序」と「本編」が付いています。「序」とはいえ、ちゃんと英語のサブタイトルが付いていて力入ってます。

もう一点、プレイしていて「これはいいな」と思ったのが、「文章のレイアウト」です。
所謂、会話ウインドウの中に文章が収まるのではなく、ヴィジュアルノベルタイプ(でいいんだっけ?)の画面全体に上から下に文章が表示されていくタイプ。
先づ、すぐに気付くのですが、文字が大きくて太くて読みやすい。読みやすさってやっぱり大事ですよね。

で、凄く特徴的なのは、「文章をレイアウト」しているんですよ。
なんて言うのかな、普通こういうノベルゲーム、サウンドノベルの文章って、やっぱり基本は小説なりの文章の書き方があって、不必要な空白とかないのが普通です。
ですが、本作はなんと「散らし書き風」に文章が書かれていたりするんですよね。それも不思議と五月蠅くなく、却って読みやすくて、発話者や主体人物の心情みたいなものが伝わりやすいのです。
って、言っても分かりづらいか?

  まぁ、一例を挙げるならば
        こんな風に文章が
               記されていたりするのです。

如何でしょうか?w 読みやすさと効果的な表現が両立している文字のレイアウトだと思いました。意外と賛否両論あるのかもしれませんが、私はこういう事を思いつく発想がもう凄いな、と。こういう作品をプレイすると、まだまだノベルタイプのゲームの文章表現には研究の余地があるのだと思い知らされますね。


さてさて、気になった点は、やはり「店長」って一体なのものなんだ?という点でしょう。
主人公真琴は「店長代理」ですよ。
後半のお話では、この「こほにゃ」というお店と「こほにゃ」の「店長」を巡っての話が展開されていくのですが、ここの部分がやっぱり消化不良な感じがしないでもない。
「こほにゃ」というお店の成り立ちとか、存在とかは分かるんだけども、そのキーパーソンである「店長」の正体は結局全然分からないまま、作品は幕を下ろしてしまいます。

尤も、本作は「WEB配布版」ですので、シェアとして発表されているものとは多少異なる仕様のようです。どうやらシェア版はストーリーが分岐するみたいですし、多分、この「店長」を巡る話もその中に入っていると思しい。

大体気になったのはこの点だけですね。「帰路」を「岐路」にしていたなんて、誤字もあるのですが、そんなに大した問題じゃないよね。クライマックスとか「いいシーン」でこういう誤字が出ちゃうと腰砕けになってしまうのですが、そういうものではなかったので……。


本好き、古本屋フリークの人は是非プレイしてみて下さい。
たまにはブックオフじゃなくて、小さな古めかしい古本屋さんに行ってみたくなる事請け合いですよ?興味があれば、是非シェア版の方もチェックしてみて下さい。
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by s-kuzumi | 2008-03-05 19:56 | サウンドノベル


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