2008年 03月 10日

フリーサウンドノベルレビュー 『そして彼女は語りだす』

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今日の副題 「語る事と騙る事」

※吟醸
ジャンル:語り物語(?)
プレイ時間:30~40分くらい
その他:十二歳以上推奨。選択肢あり、五種類(?)のエンドがある。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2007/12/30
容量:29.3MB


道玄斎です、こんばんは。
今日も今日とて疲れているんですが、凄く私好みの作品を発見したのでご紹介いたします。
物語を「語る」(或いは騙る)という事を「物語」にしてしまったような、或る意味でアクロバティックな試みの作品です。というわけで「路地裏の茶屋」さんの『そして彼女は語りだす』です。
最近、なんだか面白い作品に良く当たるなぁ……。
今日はちょっとノリノリのレビューになってますw この文章はレビューを書き終わった後に追記しているのですが(普段は違うよ)、久々に良いレビューが書けたんじゃないかな?なんて自画自賛してみたりw 時にはそういう厚顔無恥さも必要さね。

では、いつものように……。
良かった点

・語る/騙る事をテーマにした物語。こういう仕掛けは物凄い好み。

・雰囲気のある演出。背景画像や、自作イラスト、音楽が巧みに合わさっている。


気になった点

・エンドによっては少し難解なものも(特にエンド5)。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
彼女が語るのは、若き日の出来事と「あの子」のこと。
真実を知る者は彼女一人。けれど、彼女が真実を語るとは限らない。
それでも、何も知らなければ語られた過去こそが真実です。

こういう感じ。

なんと言っても仕掛けが秀逸だったと思います。
そもそも、私は「語る」物語が大好きなんです。古典文学って「語り手」がそれを読む俺たちに(或いは作中の誰かに?)「語って」くれる、という体裁を取っているわけで、こういう「語る」という体裁を取る作品は、私には空気のように自然に入ってくるのです。

「語る」(かたる)というのは、結局は一人の(作中の)人間の主観や、立場といった制約によって容易に「騙り」(かたり)へと変化していく可能性を持っています。
読者は、飽くまで「語られた事実」しか知ることは出来ないのです。
本作は、それを選択肢で、上手に処理をして「聞き手」である私たち=プレイヤーが誘導する形で以て、「語り」(騙り)の本質的なものを見せてくれたように思えます。

シンプルに見えるかもしれないけれども、「語り」という体裁を取った事で、実は恐ろしく複雑で文学にとって重要な問題を本作は見せているように思えるのですが、如何でしょうか?

正直、語る事と、騙る事という関係は、自分の中でも全然結論の出ていない問題です。
だけれども、私の乏しい知識で上記のような戯言を書いてしまいました。けれども、今日は少し「レビューらしい」感じがしない?あっ、そう……しませんか……。

ま、それはさておき、内容に関して補足しておく事にしましょう。
要は、ある媼(おうなです。翁の対語。つまり老女)の元に、「あの子」の事を聞きに誰かがやってくる。そして媼は請われるままに「あの子」の事を、そして「あの子と自分」の事を語り出す、というそういうストーリーになっています。

そして、先にもお話しましたように、媼の語りを、私たちが選択肢という形で「誘導」していき、様々な「真実」を見ていく、という感じなのですが、ちょっとだけこう、なんていうか隠微な雰囲気があるんですよ。
一応、作者様は12歳以上推奨としていらっしゃるわけで、それっぽい描写がないわけじゃない。けど、或る意味でちょっと「ほの暗くて」「じめっとした」雰囲気、私は好きなんですよ。

作品の演出も、こうした雰囲気作りに貢献していたと思います。
画面の左三分の一だけに背景画像が出てくるのですが(右三分の二のエリアは、文字表示のエリアです)、その画像のチョイスもいいですよね。
いかにも、ワケアリの老女が住んでいそうな、上品で、それでいてちょっと妖しい感じの和風の家などが表現されています。自作のイラストも上手です。こういう絵が描けるってやっぱり大したもんだなぁ、と思いますね。ちょっとラフっぽい感じがまた作風にマッチしているんですよ。

ここまで書くと「べた褒めしすぎ」と言われそうなんですが、意外と難解なエンドがあったのも事実。要するにある選択肢では、選んだ結果によって老女の発言が全く別のものになってしまうわけで、最終的に読者はどの情報を信用したらいいのか?というちょっとすっきりしない感じを味わってしまう。
多分、エンド4とエンド5を分ける選択肢だったと思います。
これこそが、語り(騙り)の本質なんですけれども、やっぱり最終的に「すっきり」したいと思うのは読者=プレイヤーの性。

最初、読んだ時には私は「ありゃ?結局どういうことなんだ?」と思ったのですが、これを書いているうちに頭が回り始めました。
というのは、冒頭部に実は繋がっているんじゃないか?という素朴な推論が働いたのです。
結局、最大の疑問は、実は「老女とあの子の間に何があったのか?」という事ではなくて、「聞き手」である老女を訪れた人物は何者なんだ?という所にあるように思えるのです。
そう考えた時に、冒頭部に「聞き手」の名前が出てきている事に気がつくのです。そう、咲夜という名前でした。
「夜に咲く」。これはあの花を暗示しているのでは……?とするならば、この「聞き手は」この老女とあの子の……。
こう考えていくと結局「大事な事は語られる事はなく、読者が推理するしかないのか?」……。

と、このままだと暴走しそうな私のくだらない推理は、このくらいにして、おきましょうw
けれども、結構いいセンいってるんじゃないかな?


本作は、文学マニアに評価されていい作品だと個人的に思います。
特に古典マニアとかに、ね。 シンプルな作りで、それでいて奥の深い作品の仕掛けを味わってみて下さい。あなたは「語られ」ますか?それとも「騙られ」ますか?


追記:そうそう、作者様はフリーサウンドノベルのレビュワーでもあるんですよ。是非そちらの方もチェックしてみて下さいね。
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by s-kuzumi | 2008-03-10 22:45 | サウンドノベル | Comments(0)


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