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久住女中本舗

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2008年 03月 16日

フリーサウンドノベルレビュー 『L』

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今日の副題 「作者様の説明にだまされちゃだめ!w」

ジャンル:ちょっと暗めのファンタジー(?)
プレイ時間:全部のルートを見て二時間~
その他:選択肢アリ。バッドエンド3つ、グッドエンド、ベストエンドの計5つのエンドがある。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2005あたり?詳細不明。
容量:圧縮時、33.9MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は興奮して眠れないので、ご紹介頂いたゲームをプレイしてみました。
割と最近、『ムに。』という作品をプレイしたのですが、同じ「TRANSPARENCY」さんのゲームです。
良かった点

・ちょっと暗めのファンタジーが堪らない。

・オマケシナリオなどが充実。


気になった点

・文字表示に妙なウェイトが掛かる。クリック待ちまで一気に表示されたほうがプレイしやすい。

ストーリーはサイトから引用しておきましょう。
誰もいない森の奥。
何も無いはずなのに城がある。

荘厳にして優美。
壮大にして華麗。

その美しい城には、一人の魔女が住んでいる。

魔女は孤独を愛し、人間との関わりを避け、ただひっそりと城で暮らしている。
無害にして無益。
だが、一目彼女の姿を見たものは、二度と帰って来ないという。

故に、人々は魔女の森に入ること禁忌とし、代々こう語り継いできた。

『白城には近づいてはならぬ』、と……

と、まぁこんな感じ。

この作者様は、半ば自爆的に自身の作品に凄まじいジャンル名を付けてしまいますw
本作の場合ですと「人外ロリ萌えきゅんAVG(女性向けノーマル)」なんてジャンル名が、サイトの方ではブチ挙げられていて、これを見るとちょっと引いてしまう人がいるかも?なんて余計なお世話ですが、思わず考えてしまいますw

実際、「女性向けノーマル」というのが本作の真のジャンルだと思しいのですが、あんまりそういう所謂「乙女系」という手触りは感じませんでした。
本当に、普通の一般向け作品、といった感じですね。
好みの作品を探したりという時には、ジャンルという識別可能なタグのようなものが付いていると、 確かに便利なのですが、純粋に作品そのものに向かう場合には、実は「ジャンル分け」ってあんまり意味のない事なのかな?なんて最近考えます。

作品自体は、少し暗めで、尚かつもの悲しいようなそういう雰囲気があって私の好みの作風でした。

舞台は魔女の住むお城。長年の眠りから覚めた魔女が、いつの間にかその城に住み込んでいた青年と交流していく、みたいな感じです。
そうですね、一つのポイントとしては、「魔女」という存在が完全に「人間」とは別個のモノとしてある、という辺りでしょうか。例えば良くあるようなタイプだと「元人間、今は魔女」みたいな、そういうのってありますよね?本作の場合、完全に「種族」が別扱いです。勿論、姿形では全然見分けは付かないのですけどもね。

魔女のユージェニアスは、イブキ青年と出会い生活していく中で、忘れてしまった過去を少しづつ取り戻していくのですが、それがまたちょっと暗い過去でして、ネタバレになっちゃうから最後まではいいませんが、過去にもこの城に人間が訪れた事があって……。

テーマって言ってしまうとちょっと陳腐な感じもしますが、敢えて言うならば、本作のテーマ(の一つ)は「愛」なんだと思います。
魔女が人を愛するという事、人が魔女を愛するという事、或いは「愛とはなんだ?」というような物凄いでっかい問題への問い掛けや、その答えのようなものが提示されていたのではないでしょうか。こうした問い掛けの中には「愛するが故の苦悩」や「絶望」なんてものも含まれてきます。
私自身、単純に「俺はお前を愛してる。それが俺にとっての愛の全てだ!」的ではなくて、その愛の持つ「負の部分」みたいなものを魅せてくれて、とても良かったのではないかな?と思っています。
物事には、大抵の場合、「良い面」と「悪い面」があるわけでして、どっちか一方だけ見せられて「こういうもんなんだよ」って言われると、私は妙に胡散臭さを感じてしまうんですよ。
そういう意味でも、選択肢の選び方によって「負の部分」を見せてくれるシナリオはしっかりとした作りだったと思っています。

後書きを読むと、「どのエンドをベストとするかは読者に任せる」みたいな文言があるわけですが、やっぱり私自身は「グッドエンド」がベストかな?と思います。
例え自分が「人間」という範囲から越えてしまっても、ずっと一緒に自分の好きな人が居てくれるのならば、私はそれが一番だと思います。
けれども、ネガティブ思考(指向か?w)の私は「ずっと一緒に居てくれるなんて事は本当にあるのかよ……」とちょっと鬱になってしまうわけですがw

で、ご多分に漏れず、魔女であるユージェニアスはイブキを「下僕」として扱うわけですが、私はそういうキャラの立ち位置が大好きです。
これは完全に私の趣味の話なのですが、私の自分自身の理想は「お姫様にお仕えする付き人」みたいな。だからドラゴンクエスト4の「クリフト」って私大好きなんですよw パブリックな所では「貴人」と「従者」といった上下関係はあるけれども、プライベートな場面では実はどっちが支配しているのか分からないみたいな、そういう感じですかね。

また余談になっちゃうんですが、安達祐実の出世作『家なき子』ってドラマが十数年前にありまして、覚えている人いるかしら?あれにさ、エリカお嬢様ってキャラが出てきたんですよね。そう、あの榎本加奈子が演じていたキャラです。
で、あのエリカお嬢様にそっくりな女の子が身の回りにいまして、当時私はもう結構いい歳だったわけですが「今日から俺のお嬢様になってくれ」と何を血迷ったのか言ってしまいましたw
いやいや、別にその子に恋愛感情があったわけじゃないんですよ?けれども、お嬢様と付き人という立ち位置に異常なまでに憧れていた私は、ついそんな事を言ってしまったのでした……。
で、向こうもノリノリでお嬢様と下僕ごっこっぽい事をして(良く付き合ってくれたもんだと思いますw)、なんだか妙な快感を得た記憶があります……。いや、ほんっとどうでもいい事でした……。

けど、やっぱり今、この歳になってもそういう立ち位置のキャラは気になるというか、私の中には凄く自然に入ってきますね。
もしかすると、古典文学の多くがまだ見ぬ「深窓の令嬢」に恋する男を描く、という、一つのパターンのせいなのかもしれませんね。尤も、古典の場合男も相当に身分が高いわけで、大抵どの物語でも恋する男は、普通に大臣クラスまで上り詰めちゃうんですが。そうね、『狭衣物語』なんかに至っては、狭衣の大将(彼の親父が親王です)と呼ばれる人間は「天皇」になってしまうわけでw

どこかで、自分のそうした好みがリンクしているような気がします。
そういう発見が出来たのも、本作をプレイした収穫でしたね。なんかね、単純に「こいつら萌えるぜ」っていうのではなくて、もっと内側から極々自然に溢れてくる「なんかいいなぁ」という感情、そうしたものに最近、もっと目を向けなくちゃな、と思っています。

大体、一ルートプレイするだけなら一時間くらいでしょうか?
但し、結構選択肢がシビアです。最初どれだけ頑張っても「バッドエンド2」ばかりに到達してしまって、困っていたら作者様のサイトに攻略案内が載っていたので、それを利用して……。
いや、本当にこれは最後の手段ですよ?一応、どのルートでもクリアすればオマケ画面からヒントを見ることが出来ます。ただ、やっぱり少し複雑かも?
そうは言っても、バッドエンドはバッドエンドで味があるんですよね。三種類もあるし。

あと、各エンドをクリアする度に、オマケシナリオが追加されていきます。
本編を補完してくれるような、真面目なシナリオがある一方で、滅茶苦茶壊れたシナリオがさらりと混じっていたりw 本編のイメージが壊れちゃうかも。ま、こういうお遊び的なオマケが好きな人も当然いらっしゃいますから、どちらがいいって事は言えないのですが、取り敢えず全部楽しんでみて下さい。


滅茶苦茶盛り上がるとか、泣けるとかそういうのとはちょっと違うのですが、少しもの悲しくて暗めのファンタジーを是非楽しんで下さい。
あなたは、どのエンドがベストエンドだと思いますか?

by s-kuzumi | 2008-03-16 04:21 | サウンドノベル | Comments(0)
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