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2008年 05月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 『ゆきのひ』

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今日の副題 「雪の冷たさ、そして暖かさ」

※吟醸
ジャンル:地域振興型恋愛アドベンチャー(?)
プレイ時間:1ルート、1時間程度。
その他:選択肢有り。全部で5つのエンドあり。少し女性向け風味?
システム:NScripter

制作年:2008/4/23
容量(圧縮時):18.4MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は地域振興型の作品のご紹介。今までの地域振興型とは一味違う感じで、楽しくプレイ出来ました。というわけで今回は「みずたまパレット」さんの『ゆきのひ』です。
良かった点

・雪国での「生活」そのものが描かれており、興味深い。

・絵が大変美麗(特に伯母さんが美人過ぎる……w)。

・ミニゲームや恋愛要素もありで、ギュッと密度の高い作品に。


気になった点

・意外と、エンドをコンプリートするのに難易度が高い。

・もうひとさじ、フックが欲しかった。

ストーリーは、今回は私が簡単に纏めておきましょう。
東京育ちの桜(名前変更可能)は、ひょんな事から母の田舎である秋田県は湯沢に行く事に。
「不便な田舎なんて嫌い。雪なんて大嫌い」そう思っていた桜だったが、従兄弟達と過ごす秋田の日々は桜を少しづつ変えていって……。

と、ざっくり説明するとこんな感じのストーリーです。


地域振興型、というわけで、先ず思い浮かぶのは名作『ハーバーランドでつかまえて』。そして『星の降る丘』なんかがそうしたジャンルになるのではないかと。
いづれも良い作品でしたね。
本作も、その例に漏れず良い作品だったと思います。そういえば「吟醸」は久々ですね。

本作が『ハーバーランドでつかまえて』、或いは『星の降る丘』と決定的に異なっているのは、「生活実感」のようなものを強く感じさせる所にあります。
地元に住んでいる人にとってはなんてこと無い日常かもしれない。それでも東京からやってきた女の子の目には、その生活そのものがとても異質でしかも素敵なものに見えてくる。そうした生活そのものに注力した描写がなされている点が、新鮮で良かったと思います。
意外と、田舎を描く作品はあれど、生活実感のようなものを感じさせる作品は少ないので、貴重ですね。そうですねぇ、パッと思い浮かぶのは『ほしのの。』くらいかなぁ?

物語の始発点「イマイチ好きになれない土地に行く」というテーマは『ハーバーランドでつかまえて』とも共通しているのですが、その後のアプローチが異なっており、新鮮で良かったな、と。

地域振興型とはいえ、どちらかというと、「地元密着型」みたいな感じで、こういう雰囲気結構好きですよ。
文章もよどみなく流れていきますし、ゲームとしての完成度も中々。
それに、イラストが美麗なんですよ。私は一般的な上手い/下手という基準よりもどちらかと言えば「味がある」ものを好む方なんですが、掛け値なしに本作のイラストは上手いです。
結構リアリティのある絵柄なんだけれども、それが生臭くなる手前でほどよくデフォルメされている為に良さが際だっていたように思えます。
特に「叔母さん」は必見ですね。すっごい美人だ!私の好み直球ですな。ここらへんは「秋田美人」を意識しているんでしょうか??

さてさて、前述したストーリーを見れば、大体の流れは分かって貰えるかと思うのですが、一時間くらいというプレイ時間の中に、ギュッと色々な要素が詰め込まれていて密度も高かったのではないでしょうか?
ミニゲームなんかもあって(方言クイズ、つらら落とし)ちょっとした息抜きにもなっています。ただ、方言クイズ難しすぎです……。幸い選択肢が表示された状態でもセーブ・ロードが可能ですから、色々試しながら全問正解を目指してみて下さい。
つらら落としはですねぇ。慣れれば意外といけるんですが、従兄弟=雪斗の動きが時たま、あり得ないような動きをしてプレイヤーを阻みますw

もう一つ、本作の良さを付け加えると、シンプルな恋愛の良さみたいなものが詰め込まれている点でしょうか。
主人公が女性キャラクターですから、必然的に女性向きっぽくなってしまうのですが、従兄弟との恋愛模様が淡いタッチで描かれており、好感が持てます。
さらっとしたものではありますが、桜、雪斗の過去の恋愛みたいなものも描写されており、恋愛絡みの行動原理の一つになっていた点なども、評価ポイントです。
しかし、私が一番心打たれたのは、シンプルな告白シーンです。
この恋愛過剰な世にあって(?)、「大好きよ」という極めてシンプルにして、奥の深い言葉。
この桜のセリフにじーんと来てしまいました。こういうのに飢えていたんだ……。その告白シーンが無ければ「吟醸」にはしなかったくらいのインパクトが、少なくとも私にはありました。


さて、一方で気になった点ですが、先ず難易度の高さが上げられますかね。
三つ目くらいまでは、何とか見れたのですが、その後の二つのエンドを見るのに結構難儀しました。まぁ、もっと難易度の高いゲームもありますけどもねw
で、もう一点は、淀みなくストーリーが流れすぎていっているような気がします。
普通、澱みのないストーリー展開というのは、褒め言葉として使われると思うのですが、何となく予定調和に過ぎてしまうというか、もう少し拙い文章や展開であっても何か引っかかりというかフックがあったら、より深みが増したように思えます。

ちょっとした事件みたいなものは起きるんですけれども、もう少し全体を一気に盛り上げていくような事件があり、それがエンドでぐぐっと収斂していく、そういう仕掛けが欲しかったな、と。
そういう意味で、少し起伏に欠ける所があるように思えました。


とはいえ、全体的にレベルの高い作品だと思います。
東京在住の私としては、中々覗く機会の無い、雪国での生活をかいま見れてとても興味深かったです。
暦の上ではもう夏ですが、まだほんの少し寒さの残っている間に是非、プレイして貰いたい作品です。

それでは、また。
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by s-kuzumi | 2008-05-02 22:08 | サウンドノベル | Comments(0)


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