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久住女中本舗

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2008年 05月 20日

フリーサウンドノベルレビュー 『愛娘☆ ~昨日の従姉妹は明日のフィアンセ~』

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今日の副題 「一見、王道。なんだけども……」

※大吟醸
ジャンル:恋愛(含従姉妹)アドベンチャー
プレイ時間:1ルート3時間くらい
その他:選択肢あり。合計3ルート。バッドエンドも。尚、18禁だと思われる。
システム:YU-RIS

制作年:2007~2008(?)
容量(圧縮時):139MB



道玄斎です、こんばんは。
久々の大作をプレイしました。大吟醸は数ヶ月ぶりですねぇ。
とても王道的な恋愛アドベンチャー、なんですが、王道的な作品にありがちな「日常のダラダラ感」がなく、気持ちよくプレイ出来るという事、シナリオ自体も良いものがあり、且つ全体的なクオリティが高かった為大吟醸を久々に出してみました。
というわけで、今回は「VIPPER SOFT」さんの『愛娘☆ ~昨日の従姉妹は明日のフィアンセ~』です。
良かった点

・日常のダラダラ感が無いのは好印象。テンポ良くプレイが出来る。

・グラフィック周り、音楽、システム等の水準が高い。

・メインヒロインのシナリオはその特殊な設定と相俟って、とても力が入っている。


気になった点

・多少、元ネタを知らないとついていけない所が

・18禁でなければ(多分18禁だよね……?)、もっと多くの人に勧められるのだがw

ストーリーは、サイトの方のURLを張っておきましょう。こちらからどうぞ。


いきなりですが、「愛娘」は「まなむすめ」ではありません。「いとこ」と読むようです。愛しい娘で、いとこ。
メインヒロインである、雅は、主人公秋貴の従姉妹です。そこらへんをかけたネーミングになっているという事でしょうね。

本作も、何度か過去に取り上げた2ch発のゲーム、というカテゴリーに入れることが出来ます。もう、VipperSoftなるサークル名(?)がそれを如実に示しているのですがw

先ずは、作品の外側の方から。
グラフィックも厭味がないもので、好感が持てました。キャラの絵もまた然り。されど少しヒロインの一人である雛の絵は少しだけ浮いていたかも??
それはさておき、本作、システムが少し変わっていて、私も最近注目しているYU-RISを使用しています。私自身は、YU-RISで作られた他のゲームもプレイした事があるのですが、良いエンジンなんじゃないかと思います。

普段はNScripter若しくは、吉里吉里/KAGなんてのがノベルゲームでは多いですよね。そういえば最近LiveMakerの躍進も見られますね。
そこにきて、新しいエンジンYU-RIS。
やっぱりちょっと新鮮な感じがしました。普通、ゲームをプレイしていれば「これは、NScripterだな」とか「吉里吉里/KAGだな」というのが自ずと分かるのですが(右クリックした際の設定画面とか、はたまたメニューバーなどで)、今回、特にどんなエンジンを使っているのか気にせずにプレイしたら「ありゃ?こりゃなんだ?」と。
けれども、使いにくい、なんて事は全然なくて、動作はスムーズですし、バックログの表示の具合なんてかなり私好みです。

勿論、セーブとロード、既読スキップ、コンフィグなどノベルゲームに求められる機能は全部付いています。スクリプト周りを担当なさった方の力量もあると思うのですが、割と細かい点までコンフィグで設定可能だという点も評価したいですね。
如何せん、まだ新しいエンジンという事で、お目に掛かる機会はそんなに多くないのですが、今後、ノベルゲームエンジンの一角を担うに足るハイクオリティのエンジンなのではないでしょうか?まだ参考書なんてなさそうなのですが、取り敢えずミーハーな私はYU-RIS、応援しますよ?
ゲーム制作を考えていらっしゃる方、或いは既にゲームを作り始めている方、取り敢えずYU-RISもチェックしてみては如何でしょうか?どうやら商業ゲームにつきものの「回想」も出来るみたいですし、色々と可能性がありそうなエンジンですよ。


ちょっと長くなってしまいましたね。
ここからは中身について、例によってつらつらと。

メインヒロインの雅ルートが抜群に良かったですね。
ヒロインが従姉妹ってあまりないよなぁ?なんて考えていたら、あの「Kanon」なんて前例もありました……。名雪、大好きです……。

ま、それはともかく、旧家の跡継ぎの問題と従姉妹である雅との結婚が結びついており、物語が深くなっている感じ。
実際問題、田舎ではこれに近いようなことって結構ありますよね。血族共同体みたいのがあって、そういう中での柵とかそういう風習はまだ結構残っています。

そういえば、さっき名雪を例に出しましたが、『源氏物語』でも従姉妹と結婚ってケースがありますよね。光源氏の息子、夕霧と従姉妹の雲居雁の結婚がそうです。当時から既に「あまり外聞の良い事じゃない」と言われている従姉妹との結婚なわけですが、法律上は問題ないので、そこらへんはあんまり考えない事にしますw
ただ、実際に自分が従姉妹と結婚だ、って事を想像したら、それだけで妙にもやもやとした気持ちになります……w 私には無理かも……。

で、結局本作では、雅との結婚=次期当主への正式な相続、という図式が出来てしまって居る為に、単純な恋愛に留まらない「家の問題」そのものがフィーチャーされてきたりします。
ご多分に漏れず、従姉妹の雅は主人公に幼い頃から首っ丈なわけですが、肝心の主人公は、「相手が従姉妹であるということ」「当主相続と彼女との結婚がイコールになっていること」などが引っかかって、自分の正直な気持ちに気付くことが出来ない。
これも、ご多分に漏れず、周囲のアドバイスやきっかけとなるような事件によって、自分の想いを自覚し、雅ちゃんに正式に結婚を申し込む……、みたいな流れになっていきます。

うん、ここまでだったら、まぁそんなに新味はないでしょ?
勿論、テンポが良かったり、クオリティ面ではフリーの作品としてはかなりの高レベルなわけですが。
問題は、その後。
正直、私自身も「これでお終いかなぁ?」なんて思っていたのですが、ストーリーはまだまだ続きます。
実家に一時帰省して、当主就任式&親族お披露目会が行われるのですが、主人公の弟が実は雅のことが好きで……と兄弟間の修羅場に突入してしまうのです。
この辺りの主人公の心理描写が凄くリアリティがあって、思わず頷きながら読み進めてしまいました。
結末、は是非実際にプレイして確かめてみて下さいね。


他のルートにも触れておきましょう。
主人公がバイトをしているファミレスの社員の唯さんのルート。
このルートも結構気合いが入っていました。「友情」みたいなテーマも出てきますし、ちょっとだけ重めのお話なんですが、良く纏まっていたと思います。
後半の鉄火場での主人公のじいちゃんのセリフは恐らく漫画「ブラックラグーン」から採ったものでしょうw 結構色んなネタがミックスされています。

このルートは何故か選択肢が多くて(他のルートは所謂共通ルートでの選択肢以外は殆ど選択肢が出てこない)、間違った選択をするとバッドエンドになってしまいます。
選択肢は意外と引っかけが多いような気がしますね。
とはいえ、トゥルーエンドはしっかりと明るいものですし、全体的なクオリティも高いんじゃないでしょうか。


最後に、雛ちゃんのルート。
彼女はバイト仲間の女の子ですね。正直、三つのルートの中で一番比重が軽いかもしれません。というか、他の二つのルートが相当気合いが入っていた、という事でもあるのですが。
言ってしまえば、王道の恋愛ストーリーという感じです。テイストも割と明るい感じですし、こういう明るい恋愛が好きな人にはもってこいですね。


そうそう、共通ルートなんですが、物語前半にありがちな、ダラダラとした日常が続く、という感じがなく、好感が持てました。
一つには、来年の正月まで、と作品の時間的な区切りが設けられている、という点が挙げられます。加えて、実家の当主になるのか/ならないのか、というようなストーリーの方向性が最初に示されているので、安心してプレイ出来る印象です。


一見、王道の恋愛アドベンチャーゲームに見えて、細部に相当こだわったゲームです。
容量も相当ありますしね。
突如、許嫁になった従姉妹との生活から始まる、恋愛ストーリー。危なげなく楽しめる良作です。泣きつ笑いつ楽しんで下さい。

by s-kuzumi | 2008-05-20 20:46 | サウンドノベル | Comments(0)
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