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2008年 05月 26日

フリーサウンドノベルレビュー 『雨と猿』

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今日の副題 「主役が脇役で、脇役が主役で」

※吟醸
ジャンル:ミステリー&人間ドラマ(?)
プレイ時間:1時間半~2時間くらい
その他:選択肢なし、一本道。
システム:NScripter

制作年:?
容量(圧縮時):32.5MB



道玄斎です、こんばんは。
今日は、コメントにてお教えいただいたゲームをプレイしてみました。
少し暗い陰鬱な雰囲気を持つものの、やはり滋味溢れるツウ好みの作品だったように思えます。
というわけで、今回は「大山椒魚」さんの『雨と猿』です。作者様サイトが見つからなかった為、ふりーむ!のリンクを張っておきます。
良かった点

・主人公の立ち位置が非常にユニーク。

・影絵の使い方が独特で、面白い。

・ラストはからりとした気持ちの良い終わり方で好印象。


気になった点

・少し、全体的に暗い雰囲気があって、多少じめじめとした、閉塞感を感じなくもない。

ストーリーは、ふりーむ!の紹介文から引用しておきましょう。
道に迷い、雨に祟られ、崖から落ちた“私”が
猿に似た男に導かれた先は……。

選択肢無しのノベルです。

こんな感じのストーリーになっています。

いや、見逃していましたね。「ふりーむ!」は一応一渡り毎回新作のリリースを確認したりしているわけですが、こんな作品が眠っていたなんて……。
なんて言うか、凄く抽象的な言い方になってしまうのですが、「どっしり」とした感触がしました。それは別に容量が大きいとか、そういう事ではなくて描きたいと思っている「作品の根っこ」をちゃんと作者様自身がコントロールしている、くらいの意味です。

派手さ、みたいなものはありませんが、滋味溢れる作品だったと思います。
イラストも綺麗な塗りが施されたもの、というわけではなくて所謂影絵ですね。破天荒な某教師モノ(w の影絵とは一味違うのですが、この影絵、そしてその使い方が非常に巧みで効果的に物語を演出していました。

最初は、ホラーかな?と思ったくらいなんですが、段々とサスペンスの様相を示してきてけれども、最後は気持ちの良いドラマでしめられる、という物語の中に何段階かフェーズが存在する、という感じです。

さて、ストーリーに少しフォローを入れておきましょう。
主人公は、友人に勧められて、ど田舎の旅館に行く事になっています。どうやらその旅館には「鬼が書いた掛け軸」がある、というわけで、それを目当てに道無き道を進み、山の上にある旅館に行こうとするも、途中で遭難してしまった。

と、こういう所から物語が始まっていきます。
そして、崖から落ちた主人公が、ぼろ小屋を見つけて中に入ってみると、猿丸と自称する謎の小男が住んでいて、旅館まで案内してくれるという……。

こんな感じのイントロになっています。
雨の夜、という舞台設定ですので、どうにもじめじめとした空気感が漂う作品ではあるのですが、その旅館の隠微な感じや、数々の謎と相俟って、独特の雰囲気を出していましたね。

特筆すべきは、主人公の立ち位置です。
主人公は、一応「視点人物」ではあるものの、「事件」には一切立ち入る事の無い或る意味で完全な「傍観者」です。
実は、主役は猿丸であり、又旅館の親父なのです。
それを「聞き上手」の主人公が、猿丸と交流をしつつ、隠された物語を「語らせていく」というような体裁となりましょうか。
だから、言ってしまえば、主人公は全く何もしていないw いや、「上手な聞き手」であり物語の「進行役」となっているのです。

こういう主人公の立ち位置が物凄く新鮮でしたね。
普通、こういう作品だと主人公が、謎に挑んでいき自主的に隠された物語を白日の下にさらすわけですが、そういう感じではない。
あくまで、「聞き手」であり「誘導役」だという所がポイントです。

先に、色んなフェーズが一つの物語の中に入っている、と申しましたが、要所要所で、各フェーズに相応しい演出がなされており、こうした所も高ポイントです。
ホラーっぽい場面では、本当に恐い演出がなされたり、ミステリーっぽいシーンでは、読者をじらしながらも、少しづつ謎が明らかになっていったり……。
画面は、灰色、黒、白とモノの見事にモノトーンなわけですが、所々に赤字が表示されたりするんですよ。それが結構恐い……。


まぁ、こんな調子で全体的にかなり暗めである事は確か。
ですけれども、だからこそラストにその暗さが綺麗に払拭されるようになっているわけで、良い演出になっていました。


兎に角、なんだか「どっしり」とした印象を受ける作品でした。
多分、物凄いセンスがある作者様ですよね。
割と、昔のサウンドノベルが好きな人の方がウケは良さそうな感じですが、どなたにもお勧め出来る良い作品です。
五月雨のこの時期、本作をプレイするのはうってつけです。是非、雨の日にプレイしてみて下さい。
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by s-kuzumi | 2008-05-26 23:30 | サウンドノベル


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