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2008年 06月 08日

フリーサウンドノベルレビュー 『蜃気楼の教室』

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今日の副題 「あの海と同じ蒼」

※吟醸
ジャンル:ミステリー+α(?)
プレイ時間:1時間くらい。
その他:選択肢なし、一本道。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2006/11/1(今回プレイしたヴァージョンは11/30にリリースされたもの)
容量(圧縮時):5.50MB



道玄斎です、こんばんは。
二日くらい前に、「お勧め作品があれば紹介して下さい」的な事を書いたら、ご親切にも紹介して下さる方が二人もいらっしゃいました。本当に有り難いです。
フリーのノベルゲーム/サウンドノベルをプレイしだしてもう8年くらいですか、そのくらい経つわけですけれども、無意識的に情報サイトからの情報を「選別」してしまっているように思えます。
一渡り見るっちゃ見るんだけども、或る程度の「好み」やら「プレイスタイル」みたいなものが確立されてしまったが故の弊害ってヤツです。
ですので、誰かから作品を紹介して頂くと「こんなのを見逃していたのか!」と自分でも吃驚する事が屡々です。
というわけで、今回は「電脳 不在証明」さんの『蜃気楼の教室』です。
良かった点

・かなり凝った設定になっていて、最後の最後までミステリーだという事を感じさせない。

・どこか、心に痛みを伴って入ってくるような、センシティブな文章。

・或る意味で“文章に特化”した作品。こういう作品がもっとあってもいいと思う。


気になった点

・お馴染みの背景画像、お馴染みのBGMなので、少し“外見”の部分でも差異化が図られていたら良かった。

ストーリーはサイトの方から引用しておきましょう。
佐野は、蜃気楼のようにつかみ所のない、
限りなく透明に近い少女の存在に憧れていた。
ああやって、そこに間違いなく存在しながらも、
誰の意識にも上らない、そんな生き方が佐野の望みだった。

こんなストーリーになっています。
って、これはストーリーじゃないよねぇ?w まぁ、それはともかく、こういうイントロを読んで「周りと距離を取るタイプの男主人公」を想定して、プレイしないのは早計に過ぎるというものです。
本作は、著名な出版社のミステリー部門の新人賞で最終選考まで残ったという、「確かな」作品なのですから。

尤も、著名な作品であっても、私は厭なものは厭だって言っちゃうんですがw ちょい脱線すると、私はどうしても村上春樹ってのが嫌いでねぇ。何で嫌いかっていうと、それこそ「何となく」なんですよw だって、実は恥を忍んで言えば彼の書いたモノを私は「一文」たりとも読んでいないからです。嫌いだからw 偏屈で狭量でどうしようもないっていうのは自覚しているものの、好きなものは好きだし、嫌いなものは嫌いなのです。

話を戻しましょう。
本作の場合、やっぱり上記で書いたような「無愛想系」の男の子の主人公が出てくるわけで、まぁ、一種のステレオタイプな主人公なんですよね。そこらへんで引っかかりを感じなくもなかったんです。

だけれども、本作を読了するまでに私が掛けた時間は、実は約2時間30分です。
ざっとプレイすれば、1時間もあれば読了は可能でした。けれども、どうしてもそれが出来なかったんです。
というのは、独自の文章に拠る所が大きい。三人称で描かれる珍しい作品って事もあるんですが、本当に変な言い方なんですが、妙にまぶしくて、少し痛いんです。それは文章が拙いとかっていう事じゃなくて、肯定的な意味で、ですよ?

何となく、各設定を結びつけていくような描写に、ぎこちなさのようなものは感じなくもないのですが(本当に偉そうな物言いで申し訳ない)、却ってそれ故に、ダイレクトに“何か”が入ってくる感じ。これって本当に、表現のしようがないんだけども、技術を越えた何かなんですよねぇ。
ちょっとプレイして、物思いに耽ってみたりして、ちょこちょことプレイをしていきました。逆にそうしないと、私自身が本作を受け止めきれないって事だったわけですが。

どうしても本作をプレイしていると、自分の小学生の頃とか、中学生の頃とかを思い出してしまったわけで、じっくりじっくりと咀嚼しながら読み進めました。
妙に「懐かしい感触がある」っていうのが一番近いニュアンスかな? そんな感じな作風なんですが、内容は結構シリアス。

ミステリーですから、あんまり「解答」に結びついてしまうような事は書きませんが、意外な設定に唸らされました。この三人称の文章って、本当は……。
実は、派手さはない“外見”の部分が有効に利用されているなぁ、と。
「アニメ塗り」の絵なんかが付いていたら、本作はぶち壊しになってしまう。いや、「アニメ塗り」とか「アニメ絵」が嫌いって言うんじゃないですよ? ただ、猫も杓子も「アニメ絵」「アニメ塗り」にしてしまえ、というようなスタンスが嫌いなだけでw
だから、本作も立ち絵は付いていません。要所要所に一枚絵くらいは付いていても良かったのかもしれないのだけれども。

さて、気になった点ですが、これは今述べた派手さのない外見と表裏一体の問題です。
一つは音楽と背景。これも言ってしまえば作品の外見の部分ですよね。
お馴染みの背景にお馴染みの音楽が流れてくるわけで、新鮮みというのかな? そういうものはちょっと感じにくい。ここらへんで差異化を図ってみても良かったのかも。
あとは、先にも少し触れましたが、ちょこっと一枚絵なんかあると、もう言うこと無しだったのでは? あんまり絵を見せないで本当に重要な所で絵を見せる。そういう作品も少ないながら存在して、私のお気に入りの作品『本当の願い事』なんかもそのタイプでした。
やっぱり、外見的な所で少し平坦な印象があるので、文章を殺さないようにしながら、要所で、効果的な一枚絵を以てカバーしたりしても良かったのかな、なんて思ったり。


全体的に、凄く意欲的で良い作品だと思いました。
少し、青臭いような(ラノベってんじゃなくて、“ジュブナイル”って感じかしら?)そういう雰囲気もあるのですが、私はこういう作品とても好きです。
こういう作品がもっともっと出てきて欲しいな、と思いますね。

どちらかというと、ツウ好みの作品。
是非、じっくりと付き合って読んでみて下さい。
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by s-kuzumi | 2008-06-08 03:40 | サウンドノベル | Comments(0)


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