久住女中本舗

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2008年 06月 09日

フリーサウンドノベルレビュー 『桜闇夜奇譚~黒羽根~』

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今日の副題 「和風のホラーの本質」

ジャンル:和風ホラー
プレイ時間:一ルート20~30分程度。
その他:全部で3ルートあり、13歳以上推奨。
システム:フラッシュ(ブラウザ上でのプレイとなります)。

制作年:2006/9/16
容量:- (ブラウザ上で楽しむゲームなので)



道玄斎です、こんばんは。
最近、妙に寝付きが悪くって、一度床に入ったものの、寝付けずに起き出してきてはゲームをやっています。本当は、こんな丑三つ時に恐いゲームなんてプレイするもんじゃないのだけども、ある種の開き直りで、こうしてプレイ。
これもご紹介頂いたものですね。フラッシュでプレイするので、変則的になってしまっていますが、ご容赦を。
というわけで、今回は「Arim Lab」さんの『桜闇夜奇譚~黒羽根~』です。
良かった点

・和風ホラーを追求しているだけあって、私も和風ホラーについて考えさせられた。

・計三つのエンドが、どれも独立していて良い感じ。無意味な即死などは無し。


気になった点

・なんと言っても、ブラウザ上でプレイする為、操作性に難が。

・結局、黒羽根とはなんぞや?という問題は本作では分からない。

ストーリーは、サイトの方から引用しておきましょう。
どことも知れぬ地に人間とあやかしが入り乱れて住む町があった。
陽炎町。
そこを人は地獄町と呼ぶ…

遊郭街、眼神原。
玉琴屋の花魁・清花(きよはな)の元を訪れた男は、何か話をしてくれとせがまれる。
困った末に男が話し出したのは、黒羽根というあやかしに出会った子供の話だった…

こんな感じのストーリーです。


面白いな、と思ったのが上記のストーリー紹介でも分かりますが、私の言うところの「サンドウィッチ構造」になっている、という点。
誰かが、物語を語り、その語られた内容が本編での主要な位置を占める、というようなタイプです。もうちょっと本格的な用語(?)にすると「入れ子構造」という事になりましょうか。
私も、入れ子構造ってだけでワクワクしちゃうので、本作も楽しめましたよ?? 

誰かが語る内容が、物語の中身、という本作のタイプは或る意味で「非常に単純」な入れ子構造の例ですが、入れ子構造って名作の商業ゲームにも多いですよね。
そうね……、有名どころだと『AIR』なんかがそうでしょ、あと『リトルバスターズ!』とかも。ちょっと複雑だけれども、これらも入れ子です。

入れ子にすると、もうお分かりの通り、「厚み」が増すんですよね。壮大になる、って言い換えてもいいかな? 段々、ここで使ってくる用語の増えてきましたね。今度「箸休め」にでも、纏めておきましょう。


さて、本作をプレイして色々と考えさせられました。
「和風ホラーとはなんぞや?」という問題です。
単純に、「洋館」だとか「悪魔」だとか、そういうのが出てきたら西洋風。一方で「幽霊」「山村」「廃屋」なんてのが出てきたら和風と、割とアバウトに私自身、ホラーを捉えていました。

今回、色々考えてみて、ひとまず思ったのは、
「洋風は、現象で怖がらせるけれども、和風が雰囲気で怖がらせる」
という、そういうのがあるんじゃないかな、と。

一番分かりやすい例を挙げると、ジェイソンです。
ストーリー的に色々あるわけですけれども、恐いのはあのホッケーマスクを付けて鉈だ斧だってのを持ち出して襲ってくる、というその「現象」そのものがインパクトがあるわけです(で、いいよね……?)。
一方で和風だと、先ず、閉鎖的な山村だとか、そこに根強く残っている因習といった舞台装置(=雰囲気)が大きな役割を果たすわけです。勿論、最終的な「現象」面では、西洋も和風も同じような事になってますが、その舞台の示す隠微な空気感、それこそが和風ホラーのキモなんじゃないかなぁ、なんて。

本作も、滅茶苦茶恐いんだけども、何が恐いって、神社や花街が近くにある作中の舞台であったり、花嫁が神社にて婚姻前に行わなければならない儀式といった、そういう舞台装置が作品の怖さを後押ししているんですよね。

人の通らない狭い裏路地の影、祭りの後の神社の寂寥感、障子に写った影、ぽとりと落ちる牡丹の花……。
そんな我々になじみの深い、怖さを盛り上げる為の「雰囲気」みたいなものを結集している印象です。和風、を追求なさっているだけあって、物凄く考えさせられる作品になっていたのではないでしょうか?

私も和風という事ではそれなりに詳しいので、ちょっとアレコレ考えてみたのでした。
大体、日本の昔から伝わる恐い話ってのも、そういう雰囲気が恐いんだよね。
アレは『今昔物語』だったかな?? 確かこういう話があったんです。

深夜、御所の中を女房達が歩いていると、木の陰に君達(きんだち、ね)が居て、女房達を招いている。女房の一人がその君達の側に近寄っていったけれども、他の女房達は何となく薄気味が悪いので、そのまま通り過ぎた。
翌朝、その女房の惨殺死体が発見されて、あの君達は実は鬼だった、と。


まぁ、こんな感じの話です。
恐いのは「深夜の御所」という空間、そして木の陰という何とも隠微な場所から招く君達という雰囲気なんですよね。実際の所、そいつが鬼であったとか、女房が惨殺(というか喰われてたんだけども……)されたとかいう「現象」面は全然恐くない。他にも『今昔』には、深夜の管理する人もなく荒れ果ててしまったお堂とか、深夜の橋のたもととか、そういう恐い「雰囲気」が満載のお話が多く入っています。
大体、日本の古式ゆかしいホラーって、「現象よりも雰囲気」という感じがするのですが、如何でしょうか?


又しても脱線しまくってますね……。
話を戻して、本作では、エンドが三つあります。
面白いのは、エンドごとに内容が異なる、という点です。いや、当たり前の事なんですが。。
詳しく言うと、先にお話した入れ子と関係があります。中に入っている物語の選択如何で、外の入れ物自体も変質する、というタイプです。少しネタバレっぽくなってしまうので、ぼかしてますよ? 当たり前っちゃ当たり前なんだけども、中々良くできていたんじゃないかな、と。


で、恒例の気になった点ですが、やっぱりブラウザ上でプレイしますから、操作性が……。ちゃかちゃっとクリックで読み進める事が出来なかったり(それでも速度調整とかは可能。ゲーム画面の上部にカーソルを持っていくと、或る程度の設定は出来る)、セーブ/ロードが出来ない、という致命的なプレイのしにくさがあります。
選択肢で、三つのエンドに分岐するわけですから、セーブ/ロードが出来ないとちょっとプレイがしんどいですねぇ。
一応、こうしたプレイのしにくさを解消すべく、二回目移行は場面スキップ機能があるのですが、それでもちょっと、ね。

あとは、結局、本作の「現象」面の黒羽根とは何者なんだ? という所が消化不良になってしまっている、という点でしょう。尤も、それは続編の構想があって、本作では明らかにならない、という設定上の問題みたいです。
それに、「現象」よりも恐いのは「雰囲気」ですから、実はそこまで気にならないんですよ。
人のねたみ・そねみといった負の感情が、ちょっぴり示唆されていて、そういう空気感が物凄く恐い。


プレイのしにくさはあるものの、「和風ホラー」あるいは「ホラー」作品そのものを考える上での、ヒントが詰まった作品なんじゃないかと思いました。
興味のある方は、是非プレイしてみて下さいね。
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by s-kuzumi | 2008-06-09 04:41 | サウンドノベル


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