2008年 06月 18日

フリーサウンドノベルレビュー 『ノルカソルカ』

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今日の副題 「一つの“幸せ”への解答」

※吟醸
ジャンル:微伝奇風味の人生ドラマ(?)
プレイ時間:2時間~3時間くらい
その他:選択肢あり、バッドエンドも。
システム:吉里吉里/KAG

制作年:2008/1/7
容量(圧縮時):67.5MB




道玄斎ですこんばんは。
足の痛みも大分引いてきました。まだ階段を上り下りしたりはキツイのですが、何とか歩けるようになりました。で、調子に乗って、片足で木刀素振りをやったら左手を痛めてしまって(←バカ)……。何か、このところ、災難続きな気がしますねぇ。

今回は、私よりも不幸体質の女の子が出てくるお話。
演出や細やかな描写がキラリと光る良作でした。というわけで「郷愁花屋」さんの『ノルカソルカ』です。
良かった点

・クオリティの高いムービーや、雰囲気にあったお洒落なインターフェイスがいい感じ。

・割と長目の作品ではあるが、テンポ良くプレイ可能。

・複雑な人物関係など設定が入り組みつつも、綺麗に纏まる。


気になった点

・クライマックスで、もう少し盛り上がりがあっても良かった。

・雑多なところでちらりほらりと気になる部分が(後述)。

ストーリーは、サイトから引用しておきましょう。
“鬼を探してほしいんだ”

迷い込んだ神社で天狗が言う。

12月22日。
冬至。
最も影の長い日。

動き出す影の住人。
夜の鬼ごっこ。

“鬼を探し出してくれたら、願い事をひとつ叶えてやろう”

幸せになりたい主人公、幸は長い夜を駆け抜けていく―――。

こんなストーリーです。


リリース直後から気になっていたのですが、何だかんだでこの時期にプレイする事に。また、本作を紹介して下さった方も居て、それに後押しされた形で一気にプレイしてみました。

正直、とてもハイクオリティの作品です。
先ず、開始直後のムービーで度肝を抜かれます。普通にクオリティが高い。
それに使用している背景写真なんかも、とても綺麗で加工の仕方なんかもクリーンで良かったですね。細やかなデザインみたいなものに、物凄いこだわりを感じさせてくれます。

そういえば、ちょっと変わってるな、と思ったのが、文字の表示位置。文字ウインドウとでも呼ぶべきモノですね。多くの場合、画面下部に専用のウインドウが仕切られており、そこに文字が表示されたり、或いは画面そのものが文字ウインドウにもなっていて、上から下まで文章がずらっと表示されるタイプ、大体この二種類に大別されます。後者をヴィジュアルノベル形式とか言うんですけれども、まぁ、名称はどうでもいいでしょう。
本作では、「画面上部」に文字ウインドウ称すべきものが存在していて、他の作品にはちょっと無い感じですよね。実際、仕切り線とかがあるわけじゃなくて、画面上部のデザイン的な部分にとけ込んでいるという感じ。
そんなに違和感は無かったですし、こういう表現もアリですね。


肝心の中身なんですが、結構妖怪が出てきます。
しかも、みんなもきっと知っている著名な妖怪(?)がぞろぞろと。唐傘お化けとか、雪女、目目連、九尾の狐やら有名どころがチョイスされていました。
また、脱線しちゃうと、唐傘お化けの出自ってちょっと謎ですよね。先ず、足が一本、そして一つ目、更に九十九神的な性質も持ってそう。足が一本っていうのは、「山の妖怪(≒神様)」は一本足が多いので、それっぽい属性を持っていると思しい。んで、一つ目という属性は古代の神官(≒シャーマン)がアッチの世界と交流する為に片眼をわざと潰した事に由来する(という説がある)わけで、更に唐傘という道具である事から九十九神的な性質も何となく見て取れる。
実は、割と新式で、ハイブリッドな妖怪なんじゃないかなぁ? と私は思っているのですが、如何でしょうか? あっ、いや唐傘お化けは本編では、ちょい役ですw

さて、ストーリーを軽く追っていきながら解説めいた事をやっていきましょう。
六人の登場人物のオムニバス的な性質もあるのですが、全体を貫く主人公としては、幸(しあわ)ちゃんでしょう。冒頭で述べた、超不幸体質の女の子です。
うんと、端折って全体を説明すると、この幸ちゃんが、天狗と出会い「鬼」の探索に従事していく中で、様々な事件に出会い、最終的に「幸せの意味」を見つけていく、みたいなそういうドラマになりますね。落としどころとしては割と素直にすとんと落ちてきますが、中々良い〆だったのではないかと思います。

本作のもう一つの特筆事項として「読み応え」がある、という事。
これは別にテキストのKB数が多いとか、そういう事じゃなくて「ああ、読んだぞ!」という満足度のようなものですね。一般に読み応えがある、っていうと長編作品を指している事が多いように思えるのですが、私の場合の読み応えとは、「読んだ実感が多分にある」というとらえ方なので、尺の長短はあまり関係がなかったりします。
「どうなるんだ……」とドキドキさせられたり「うわぁ、こんな風に繋がってたんだ……」と吃驚したり、或いはラストで一気に物凄い感動が襲ってきたり……。そういう心の動きが多いと「読み応えがある」という事です。

しかも、本作の場合ちゃんと「読み進めていく」というプロセスを経る事で、様々な気づきが出てくるんですよ。一見接点のなさそうな六人の登場人物達なんですが、割と複雑な設定でみんな繋がっています。複雑だけども、理解しにくい、という事ではないですよ? お馬鹿な私でもすんなり理解出来るわけで、こういうところも隠れた高ポイントですよね。

設定の細かさ、みたいなものはちゃんとさりげない描写にも現れていて、そういうところもマニア心をくすぐります。これは意識しているのかどうか分からないのですが、本作は割と「夕方」のシーンが多かったように思えます。今こうやって書きながら頭の中でプレイバックしてみると、あかね色の画面が目の裏で踊る……w
で、この夕方シーンの多さは「逢魔が時」と関係しているのかしら? と思ったりして。
もう少し確信を持って、語れるのは、そうね……九尾の狐が出てくるんですが、最初全然正体が分からないんですよ(人型の妖怪だしね)。なんだけども、「晴れてるのに雨が降っていたあの時に逢った人だ」と聖君が思い出して、読者も「ああ、狐の嫁入り(=狐の妖怪)かぁ」、と分かる。あんまり本筋とは関係がなさそうな描写がしっかりとなされており、グーです。いや、関係無くはないか。実はこういう部分が作品を底から支えているんですよ。さりげない描写が世界観を支えているというか。

人間と妖怪はペアで出てきます。
例えば、幸ちゃんだったら天狗、霞ちゃんなら目目連、聖君なら九尾の狐とこんな具合です。人間はそれぞれ「不幸」を抱えています。そして妖怪にもそれぞれバックグラウンドが存在する。妖怪のバックグラウンドが描かれているのもグーでした。
更に良いなぁ、と思ったのは妖怪が憎めないヤツなんですよ。結構悪い事をしたりするのですが、それでも何か妙に暖かい存在なんです。単純な善VS悪みたいな構図になっていないので、こういう処置はとてもいい。

もう一点、述べておくと本作は「ループ型」です。
と、言っても1ループしかしませんからご安心を。更に言えば、割と面倒ないちいち最初っから、みたいなループじゃなくて、要所要所だけ切り取った形でのループですので、煩雑さもゼロに近い。
ちなみに私はプレイ開始5分でループ型だと気付いてしまいました。というのは、日付みたいなものが結構目立つ形で出てくるんですよね。で、それなりにノベルゲーム/サウンドノベルの経験値があると、「これはループか?」と穿ってしまうというw 選択肢は、ループ後に出てきます。
先ずは一渡り、それぞれの物語を追っていく、という事に。選択肢とはいえ、ちゃんと誘導がなされているので、それに素直に従ってやればちゃんとトゥルーエンドが見れる仕組みになっています。


さて、恒例の気になった点コーナーです。

細かい演出にこだわって良い作品なんです。が、微妙に演出を潰しちゃっている演出があった事も確か。ま、今から述べる事は殆ど気にならないレベルですよ?
例えば、ラスト付近の一枚絵の時に同時に立ち絵も出ちゃうんですよ。しかもその一枚絵は明らかに発話者と同じなので、わざわざ立ち絵を出す必要がないんです。
折角の一枚絵なので、それ単独でどどーんと出しても良かったのでは?

もう一個は文章の問題。
文章は上手です。読みやすいし、テンポ良くプレイが可能。
なんですが、たまに

発話者「実際の発話」

というような形と、普通の発話者を明示しない形の

「    」

が同居してしまっています。別にわざわざ発話者を示さなくとも、ちゃんと通じるところなので、ちょい蛇足かな、と。文章のフォントの大きさとかかなり綺麗に見えるように設定されているので、そこらへんを解消すると大分違うのでは? 亦、今奇しくも私がやったみたいに「?」「!」の後にスペース無しで文章が進んでいきます。
まぁ、これはスタイルの問題ですよね。飽くまで私の感覚だと「?」「!」の後は半角なり、全角なりのスペースを入れた方が文章全体が綺麗に整って見えるかな? と思うわけです。これは気にならない人の方が多いかしら?

以上は、たいしたことない気になった点です。飽くまでデコレーション的な部分ですよね。
一番気になったのは、ラストに盛り上がりが欠けているような気がするんですよね。ループをしてたどり着いた真相。緊迫の瞬間です。
それが、意外にもあっさりと結論が出てしまうので、微妙に拍子抜けが。「起承転結」なんて良く言うんですが(ちなみに私自身は、あんまり好きな言葉じゃありません。漢詩由来の言葉なので、そのまま文章に100%適用出来ない、という理由ですね)、やっぱりメリハリは必要。特にクライマックスでは過剰なくらいにどーんとインパクトを持ってきた方が結果的に良いように思えますが如何でしょうか? あっ、勿論、盛り上がりが無い、という事が特徴になって淡々と進んでいくような作品もあります。そうした中に名作があるのも亦事実。けれども、それって作風というか、作品の「描きたい事」とそうした手法がマッチした際に有効な手段であって、しかも高度な技術が必要な気がします。
本作の場合ですと、やっぱり盛り上がりがあっても良かったかな、と思います。

最後に一点。
結局、色んな妖怪が出てきてそのバックグラウンドをかいま見せる事で、妖怪への思い入れが強くなっているのです。だけれども、例えば九尾の狐の場合とかだと「幸せになれたのか?」とちょいと疑問に。ラストは人間達に重きが置かれて、妖怪達の比重が軽くなってしまっている印象です。折角それまで、人間-妖怪とペアで提示していたのですから、是非妖怪達の最後も描ききって欲しかったな、と。これは一読者としての意見ですね。


丁寧に作られ、ハイクオリティでアイデアも光る良作でした。
もう少しラストでのメリハリがあったなら、大吟醸にしていたかもしれません。
一読の価値アリです。
是非、プレイしてみて下さいね。

それでは、また。

/* 本当はもうちょっと脱線したかったけど、今回はちょっと自重しましたw */
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by s-kuzumi | 2008-06-18 20:14 | サウンドノベル | Comments(2)
Commented by arusu at 2008-06-19 13:52 x
まさに僕がリクエストしようと思っていた作品がwwwww
Commented by s-kuzumi at 2008-06-19 21:17
>>arusuさん

こんばんは。
『ノルカソルカ』、良い作品でしたね。作品のレベルを底上げするようなレベルでの演出が多くなされており、楽しく、そして一気にプレイ出来ました。

最近、王道とも言える「直球恋愛モノ」が中々出てこなくて、少し寂しい今日この頃ですw


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