2008年 07月 02日

フリーサウンドノベルレビュー 『be alive』

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今日の副題 「王道とオリジナリティのバランス」

※吟醸
ジャンル:一見王道恋愛アドベンチャーなんだけども……(?)
プレイ時間:1ルート2時間くらい。
その他:選択肢アリ、大まかに分けて3ルートに分岐分岐。18禁作品。
システム:NScripter

制作年:2006/8/?/
容量(解凍時):142MB




道玄斎です、こんばんは。
二日くらい前から募集を掛けている一周年記念創作物なんですが、なんだか色んな方から色んなものを頂いてしまって、恐縮しております。まだまだ募集を受け付けておりますので、本当にお気軽にメッセージでも何でも送って下さい。
やはり、何か頂いたりすると、嬉しいですね。凄い力作が多いので、紹介するのが楽しみです。
明日、取り敢えず第一弾をご紹介致しますので、楽しみにしていて下さい。


さて、今回も前々からご紹介しようと思っていた作品。
一見すると王道恋愛アドベンチャーみたいな感じなのですが、その実、凄い深みを持った作品です。というわけで「妹れっぐぅおーまー」さんの『be alive』です。
良かった点

・どのルートにも等しく力の入った力作。

・王道的な設定でありながら、「ありきたり感」を感じさせない丁寧な描写。

・感動と衝撃のラスト。


気になった点

・やっぱり、陵辱シーンに耐えられない人がいるかも……。

ストーリーは、今回は軽く私が纏めておきましょう。
主人公伸一は、兄にべったりの妹千佳と両親が海外に行っている為、二人暮らし。
二人は、幼なじみの恵理、明と慌ただしくも楽しい学園生活を楽しんでいる。
最近ではこの四人の中に奏という伸一達のクラスメートも仲間に入り、楽しい時間はいつまでも続くかと思われたが……。

このくらいで止めておきましょう。


さて、本作は18禁作品という事になります。
18禁作品の場合、大手の登録サイトに登録が出来なかったりするのでしょうか? 今、ふと気になってあれこれ調べてみたのですが、発見出来ませんでした。
ですけれども、そういう18禁の部分だけで、名作が埋もれてしまうのは本当に勿体ない。
私もリリース直後にプレイしたのですが、いつかプレイし直そうと思っており、今回、レビューを書くのを楽しみにしていました。

上記の私の書いた(下手ですみません)ストーリーを見ると、「またこのパターンの学園ものかよ」と否定的に捉えてしまう方もいるかもしれません。
けれども、やはり本作はそれでも尚名作だと思うのです。

というのは、基本的に、千佳、恵理、奏の三つのルートが大まかにあるのですが、どのルートもみんな丁寧に作られているのです。
商業のゲームなんかではたまに、メインルートだけが異常に突出しており、他のルートは付け合わせ程度、なんて事があったりします。
本作の場合、どのルートに行っても、一般的なフリーの恋愛ノベルゲームでメインを張れるようなそんなシナリオに仕上がっています。

例えば、千佳のルートだと最後で選択肢が出てきて、二つの未来を選ぶ事が出来ます。
どちらが正解、というわけでもなく、それぞれの物語を楽しむ事が出来ます。
ちなみに千佳のルートではドロドロとした、近親相姦的なものにならず、とってもハートフルなストーリーに仕上がっており、そうした点も好印象でした。

ルートに入るのも簡単。選択肢で入りたいルートの女の子を選び続ければOKです。
ただ、ルートに入った後にも微妙に選択肢があるので、選択肢前ではセーブを推奨。

私が、一番素直に「いいなぁ」と思ったのは、奏のルートです。
もう、皆さんお気づきの通り、委員長タイプの奏は直球で私の好みの女性像なのです。
何と申しましょうか、奏と主人公伸一の恋愛譚は、まるで私の昔の……。
そんな訳で思い入れも一入というわけですね。私の体験談では、私は伸一よりもヘタレだし、奏に相当する女の子はもうちょっとキツくて融通の利かないタイプだったわけですが……。

というか、或る意味で王道な恋愛を楽しめるルートは奏だけですね。
ちょっとづつ不器用に、だけれども確実に二人の距離が縮まっていく様子、プレイしていて頬がゆるみっぱなしでした。特に、良いなぁ、と思ったのは、奏の「日記」ですね。
或る程度、ストーリーが進んだ時点で、過去を奏自身が記した言葉で、彼女の側からストーリーを捉え直していく。こういう仕掛け好きなんですよ。
丁寧に二人の関係を追っていきながら、感動的なラストを演出するという王道に忠実でありながら、とても良い恋愛ストーリーになっていたと思います。

奏のルートでまたしてもちょっと脱線を。
成績優秀の奏が、主人公に勉強を教えるシーンがあります。古典です。
扱っている作品は『土佐日記』の冒頭部。
例の「おとこもすなる日記といふ~」というヤツです。
きっと、高校生くらいの時に「この『なる』は伝聞だから『おとこもしていると聞いている日記というものを』と訳さないと駄目」とか言われた記憶が皆さんにもあるのではないでしょうか?

さて、脱線はまだまだ続きます。
ちなみに今、自宅の書庫から一冊の本を取ってきました。『土佐日記抄』なる書物です。本居宣長が『土佐日記』に注釈を付けたものですね。この本文では、「おとこもすなる日記~」が、なんと「おとこもすといふ日記~」となっています。
古典って、こういうヴァリアントが多いのですよね。だからどれが正解ってんじゃなくて、そのヴァリエーションの豊かさそのものを楽しめるようになると良いですなぁ。「おとこもすといふ」でも意味はちゃんと通じるしね。


それにしても、奏のルートはほんっと私の若い頃のお話に似てるんだよなぁ。
奏みたいな娘、ファンタジーの世界にしかいないと思っちゃいけません。実際いるんですよ?w 勿論、ファンタジーの中よりも扱いにくいのですが……。
興味のある方がいらしたら、今度そういう話もしてみましょうか?w

さて、敢えて本作で、メインのルートをあげるとすれば、理恵のルートという事になりましょうか。
元気系の幼なじみの女の子、というこれも超王道的なヒロインなんですが、不思議と厭味がなくて、すんなりと読めて尚かつ好感が持てるキャラクターでした。

ヒロインの布陣が、元気系幼なじみ、ブラコンの妹、委員長と凄いベタベタなんですが、「ありきたり感」がないんですよね。普通これだけベタな設定だったら「またこのタイプかよ……」とか思ってしまうのですが、そういうのは一切無し。
やはり、これは、先にも述べましたように、感情の動きなんかを丁寧な描写していく事で出てくるものなのでしょう。

そうそう、理恵のルートでしたね。
より正確に言えば、理恵のルートは理恵のルートであって理恵のルートではない、みたいな。
最終的に行き着く先は、理恵との恋愛成就ではなく、愛情を越えた友情といったところに落ち着いていきます。勿論、そこにいくまでに物凄いシビアな運命を乗り越えなくてはいけないのですが。
途中で起きる事件は、流石にちょっと耐えきれない部分はあるのですが、それらを全て解放して爽やかなエンドに持っていく作者様の手腕はやはり凄いなぁ、と感じます。
沢山の辛い事を積み上げて、最後のラストでぶわっと盛り上げる。やっぱりラストの処理って物凄い重要ですね。
もっと言えば、各ルートそれぞれ「ラストの盛り上がり」や「感動の演出」が巧みなんですよ。そういう意味で、どのルートにも等しく力が入っている、と書いてみました。

どんな事件が起きるのか? みんなはその時どんな行動を取るのか? それは本作の或る意味でキモの部分ですので、是非ともプレイして確かめてみて下さい。


さて、恒例の気になった点なのですが、18禁作品だけあって、まぁそういうシーンが入っているわけですよ。で、あるルートである選択肢を選んで話を進めていくと、ちょっと後味の悪いシーンが入っていまして、そこがちょっとどうなのかなぁ? と思わないでもない。
尤も、現行のヴァージョンでは、そのシーンがスキップ出来る機能が付いたみたいなので、そういう部分を見たくない人はスキップ機能を利用してみて下さい。


とてもレベルの高い作品です。
書き忘れたのですが、イラストも可愛らしいちょっと幼い感じで、良い味が出ていましたよ。
18禁というだけで、毛嫌いせず是非ともプレイして貰いたい作品です。問題のシーンがなければ文句なしの大吟醸だったのですが。。。

一見、王道恋愛アドベンチャー風。だけれども実際は様々な顔を見せる、良質の作品です。
丁寧な恋愛描写や、感動のラストを楽しんでみて下さい。

/* 最後の最後に余談。主人公伸一の目覚ましの音が「朝~朝だよ~。朝ご飯食べて学校行くよ~」なので、不覚にも笑ってしまいました。分かる人は分かる、よね?w 結構Keyの作品に影響を受けている部分も多いのですが、それでも名作でしたよ? */
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by s-kuzumi | 2008-07-02 22:15 | サウンドノベル | Comments(0)


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